“AKB48”にハマる地中海の青年、“エヴァ”を観るため氷点下でも並ぶロシア人

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 昨年の今頃だったか。当時、首相であった麻生太郎氏が「アニメの殿堂」という事業を打ち出し、アニメやマンガ、ゲーム、デジタルアートなどを日本の産業として本格発信としていこうという動きで盛り上がった。
 しかし、事業費117億円がかけられた「国立メディア芸術総合センター」(仮称)は、野党を中心に「無駄遣い」と批判され、鳩山政権下で建設が中止となった。

 麻生前総理が打ち出していた、アニメ産業を通した観光立国事業が本当に“無駄遣い”であったかどうかは疑問符が打たれる。というのもおそらく日本で住んでいる私たち以上に、世界が日本のポップカルチャーに興味津々なのだ。

 ロシア・モスクワでは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を観るために、開場5時間以上前から長い行列ができ(しかもなんと気温が氷点下になのに!)、フランス・パリでは日本のマンガやアニメを展示した「ジャパン・エキスポ」が16万4000人を動員。ブラジルでは『聖闘士星矢』やCLAMP(女性漫画家グループ。『カードキャプターさくら』などが代表作)が人気だ。
 さらに、今や日本でも大ブレイクしつつあるAKB48にハマるマヨルカ島(スペイン)の青年もいれば、GazettE(ガゼット)やGacktなどのヴィジュアル系アーティストを信奉する海外の女の子たちも。そういえば、ヴィジュアル系バンドのDir en greyがヨーロッパの各ロックフェスで熱狂的な支持を受けているというのは、ニュースでも報道されていた。

 こうした“日本のポップカルチャー”に影響を受け、憧れを持った上で日本に旅行しに来る若者は数多くいる。ところが、日本の観光行政はどうしても伝統文化の普及が文化外交やPR上重要であるという認識をしてしまう。
 日本のポップカルチャーについて調査・研究をしている櫻井孝昌氏が上梓した『日本はアニメで再興する』(アスキー・メディアワークス/刊)は、前述のように外国人たちが日本のポップカルチャーに熱狂する様子を描きながら、伝統文化を前面に押し出す方向性が、実は逆に伝統文化の普及を阻害してしまっていると指摘する。

 日本にポップカルチャーに興味を抱き、日本に憧れを抱く。その受け皿がない限り、日本に来る理由はなくなってしまう。日本が見せるべきは伝統文化ではなく、「伝統とモダンの融合」なのだ。
 自分たちの国の“誇れる文化”とは何たるか。考えさせられるところだ。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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