ヤフーの動画配信サービス「GyaO!」が年明けにも黒字化しそうだ。背景には、業界の常識を破った新たな番組購入方法がある。

 ヤフーは、2009年4月に、USENの動画配信サービス提供会社「GyaO」の株式を51%取得し、自社の「ヤフー動画」と統合。会社名とブランド名はGyaOを存続させて今に至っている。

 ヤフー出身で新生GyaOの社長となった川辺健太郎氏は動画配信にかかわったことのない、いわば素人。だからこそ、業界の常識に、違和感を持った。

 動画配信サービスには、無料配信と有料配信の2つがある。現在、日本での主流は無料配信のほうだ。無料配信は、作品の前後に流れる広告からの収入が配信会社の売り上げとなり、それが作品の購入費や、システム運営コストに充てられる。

 これまで動画配信サービス会社は、たとえばハリウッドの人気映画ならば、権利を持つ映画会社に事前に数百万〜数千万円も支払っていた。映画以外のコンテンツも同様に前払いだった。

 人気作品を購入するのは必要なことだろう。しかし、購入時点では、それに見合った広告収入が入るかはわからない。事前に巨額の費用をかけるこの構造が、買収した時点で、GyaOを赤字にしている大きな原因となっていた。

 そこで、ヤフーはこの商慣習にメスを入れた。事前に一括ではなく、動画が見られた回数によって、権利を持つ会社に、事後に利用料を支払う方法に変更したのだ。

 当初は猛反発を受けたが、川辺社長と営業部隊が数ヵ月にわたり映画会社などの説得を続け、現在、同意した会社は大手映画会社やテレビ局をはじめ70社を超えている。

 広告も大手企業中心に順調に売れているという。また、GyaO!とヤフー動画のシステム統合によるコスト削減効果も大きい。

 世界中の動画配信サービスが赤字に苦しむなか、GyaOが編み出した黒字化への新手法は、業界に少なからぬ影響を与えそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介)


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