8月31日にオランダへ出発した今回の遠征メンバーは、ほぼ順当なものだろう。森本の初招集も稲本の復帰も、移動や時差の影響が少ない欧州でのゲームということを考えれば、十分に想定の範囲内だった。

 腰痛の大久保に代わって招集された前田も、チーム結成当初から岡田監督の構想に入っていたひとりだ。岡田監督をはじめとする代表スタッフは、8月の磐田のゲームを数試合視察している。パフォーマンスを確認したうえでの復帰と言っていい。

 前田自身は心中期するものがあるだろう。ケガで辞退を余儀なくされることが続き、次第に代表から遠ざかったここ1年ほどを振り返れば、しっかりとアピールしたいはずだ。

 岡田監督就任直後の昨年2月以来の代表入りとなった岩政も、所属する鹿島でのパフォーマンスから判断すれば驚きではない。中澤と闘莉王に次ぐ3人目のCBは、岡田監督が頭を悩ませてきたところだった。寺田、高木、井川、山口、槙野らが招集されてきたものの、非常事態では阿部が起用されることもあった。結果的に「3人目のセンターバック」は、流動的なままで現在へ至っている。

 闘莉王にケガの心配が付きまとうだけに、センターバックのバックアップは重要となる。一方で、中澤と闘莉王のタンデムは不動だ。3人目のセンターバックとして招集される選手には、先発出場の可能性が薄いことを前提とした準備が必要であり、そのうえでチームへのロイヤリティを示すことが求められる。控え選手が積極的に盛り上げていくことで、チームはまとまりを見せていくからだ。まずはオフ・ザ・ピッチやトレーニングで、岩政がどのような振る舞いをするのかを、代表スタッフはチェックするに違いない。

 立場が微妙なのは稲本だろうか。

 ユーティリティ性が尊重される岡田監督の選考では、ボランチのスペシャリストの稲本は不利な立場にある。控え選手としてベンチに置くのであれば、橋本、中村憲、阿部らのほうが選手起用は柔軟になる。ケガや出場停止などにも対応しやすい。

 そう考えると、稲本が代表で生き残るには、ボランチとしてのポテンシャルをいま一度明確に示す必要がありそうだ。個人的には、代表とクラブレベルでの実績と経験、それに明るいキャラクターなどから判断すれば、代表に定着させるべき選手だと考えるが。

 今回の遠征は、世界における現在地を知ることが主目的とされている。同時に、アジア予選突破を念頭に置いたチーム作りから、南アフリカW杯で戦うための編成へと変わっていくタイミングでもある。

 それぞれの選手は、どのような意図で招集されたのか。初選出や復帰組のテストは、どのような結果に終わったのか。そのあたりを注視しながら岡田監督の言葉を聞いていくと、チームの現状が見えてくる。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖