テレビ局が横並びで免許の更新を受けたと、経済誌から批判が出ている。識者からは、日本のテレビ局の電波利用料は安すぎで、欧米のように、自由競争のオークション(入札制)で選ぶべきとの声もある。総務省では、「入札にはデメリットが多い」としているが、どんな放送のあり方が望ましいのか。

民放キー局が国に納める電波利用料は、全体の1%

「知らぬは一般国民ばかりなり 放送局に免許剥奪がない理由」

   こんなセンセーショナルな見出しをぶち上げたのは、週刊ダイヤモンドの2009年1月15日付サイト記事。そこでは、各テレビ局が総務省から「特別扱い」され、08年10月31日に何のお咎めもなく再免許を受けたと断じている。その免許更新も、ひっそりとニュースにならずに行われたというのだ。

   免許が剥奪されない「横並び」の証拠として、記事では、デジタル放送免許の取得が各局でばらばらだったにもかかわらず、期限が2013年10月末と尻揃えされたことを挙げる。また、地デジ切り替えがなかなか進まない弱みが総務省にあるため、過去に行われてきた各局へのヒアリングができなかったとも指摘している。

   そのうえで、「そろそろ国は、放送局を優遇し続けていること自体が、静かに国民の反感を買っているという現実を、もっともっと知るべき」と批判する。

   テレビ局免許を巡っては、経済学者の中からは、もう一歩踏み込んで、入札のオークションで選ぶべきとの意見表明も出ている。

   そのうちの一人、大阪学院大の鬼木甫教授(情報経済論)は、その理由についてこう語る。

「今は、携帯電話やインターネットの普及で、電波の価値が急速に上がってきています。ニーズが増えているだけに、今後は市場原理を導入していくべきです。経済学的には、土地と同じで、これまでお金を納めていなくても、その価値が高くなれば、しかるべき代価を払わなければならないからです」

   実際、民放キー局が国に納める電波利用料は、全体の1%ほどに留まっている。利用料の8割は、今や携帯電話分だ。

総務省はオークション導入などを否定

   放送のデジタル化で、周波数の近いチャンネル同士の混信が少なくなり、空きチャンネルが増えるとも言われる。そこで、こうしたチャンネルをオークションにかけたり、開放したりするべきとの指摘も出てきた。

   経済学者の池田信夫さんは、自らのブログで、テレビの空き周波数のホワイトスペースなどをオークションにかければ、消費税の1%ほどにもなる3兆円以上の収入が見込めると説く。携帯電話分がすっぽり入る9割以上の周波数が空いているといい、そのスペースから得られる利用料を「電波埋蔵金」と呼んでいる。財政再建のほか、経済活性化にもなり、定額給付金をはるかに上回る数十兆円の波及効果があるとしている。

   そして、欧米の先進国では、オークション導入が進んでおり、競争激化でコストが料金転嫁されたり、テレビ局の経営が破たんしたりするというのは誤っていると主張している。

   総務省地上放送課の課長補佐は、週刊ダイヤモンドの批判については、こう反論する。

「尻揃えと言いますが、新規参入は可能で公募もしており、期日がばらばらでは優劣が比較できないとして一緒の時期にしただけです。その方が、免許の審査を効率化することもできます。再免許のヒアリングは、申請書に不備があれば聞くもので、今回はあらかじめマニュアルを渡したこともあり不備がなかったということです。地デジの弱みがあるということもありません」

   さらに、経済学者らが唱えるオークションや開放については、明確に導入を否定する。

「電波は公共財なので、普通の商品とは違います。どんな事業者でもいいわけではありません。オークションには、デメリットがあり、コストが当然料金に転嫁されることになります。事業者が投資分を回収できず倒産すれば、その電波が無駄になってしまう恐れもあります」

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