「モバゲー」のアバターは、初期設定では裸に近い

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   つい最近まで、国内SNS市場ではミクシィ(mixi)の存在感が圧倒的で、収益モデルは「広告」だとされてきた。これに異変が起きている。競合各社の売り上げの内容を見ると、ユーザーからの「有料課金」が、広告収入をしのぐほどの有力な収入源になっている。SNS上の自らの分身「アバター」の衣服などを着せ替える際の課金が収益に寄与しているものとみられるが、利用者は、言わば「着せ替えごっこ」に「カネを落としている」形で、専門家からは「正直、理解できない」との声ももれる。

グリーは課金収入が前年同期比でなんと188倍

   国内大手SNSの会員数を見ていくと、mixiが1568万人で、モバゲータウンが1164万人(いずれも2008年9月末時点)。グリー(GREE)の会員数は、08年10月時点で700万人を突破したことが明らかになっている。

   ビジネスモデルに目を向けると、それぞれのサイトで、大きく異なっているようなのだ。各社の08年7-9月期の業績をSNS事業だけを取り出して見ていくと、mixiの売り上げは26億9700万円で、そのうち広告収入が25億2400万円。それに対して、利用者からの収入は1億7200万円。収入の93.6%を広告に依存している。

   それに対して、他の2社は、大きく様相が変わってくる。

   若年層に人気の「モバゲータウン」では、同時期に46億700万円を売り上げているが、その内訳を見ると、広告が27.3%で、成果報酬型広告(アフィリエイト)が25.8%。確かに広告関連の収入が過半数だが、その一方で、44.9%を占めるのが「アバター収入」。つまり、利用者が支出する「着せ替え代」がSNSの運営を支えている形だ。

   この背景について、「モバゲー」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の広報グループでは、

「『着せ替え』という側面もあるが、アバターというのは、自らの感情を表現したり、他のアバターと会話をするためのコミュニケーションツール。デフォルト(初期設定)では半分裸に近いこともあって、(デフォルトのままだと)『人格に対して手を抜いている』と思われる文化が定着しているのでは」

と分析。

   一方、12月17日に東証マザーズ上場を控えた「グリー」は、さらに「アバター依存」が顕著な様子だ。同社の08年7-9月期の売り上げは19億8000万円だが、そのうち5億9600万円(30.1%)が広告収入で、残りの13億8400万円(69.9%)が課金収入だ。特に課金収入の伸び率はすさまじい。07年7月〜08年6月の1年間では16億6600万円を売り上げているのだが、前年同期比で見ると、188倍に膨れあがっているのだ。

アバターは、自分をネット上でキャラクター化すること

   課金収入の内訳は、キャラクターの衣装や食べ物、道具に対する課金や、「モバゲー」と同様のアバター課金などだが、同社では、その割合については明らかにしていない。グリーでは携帯電話事業者経由で課金可能なモバイル版でゲームを提供している。SNS運営会社にとっては課金しやすい仕組みだ。

   広報担当者は、

「SNS連動型のゲームで、モバイルとの親和性が高いのでは」

と話す。利用者にとっては、アバターにせよ、ゲームのキャラクターにせよ、自らの分身に対する感情移入のようなものが、SNSに「カネを落とす」きっかけになっている側面がありそうだ。

   こんな状況に対して、専門家からは、「正直、理解できない」との声も聞こえてくる。ITジャーナリストの井上トシユキさんは

「アバターは、ハンドルネームのように、『自分をネット上でキャラクター化する』ということなのでしょう。ただ、無料なら着せ替えをやってもいいとは思うのですが、それを利用者が何故有料でやるのかは分かりません。彼ら(SNS運営会社)からすれば、『こんなところに金脈があったのか!!』という感じですよね」

と、釈然としない様子だ。さらに、今後の見通しについては、

「SNSは、会員を増やして定着させるのが重要で、浮気されるのが困る。そのためには、今後、どのような新サービスが出てくるかが鍵で、注目していきたい」

と話す。

   実際、「モバゲー」の売り上げは08年1-3月期をピークに微減を続けており、事実上の「頭打ち」状態。各社は、今後も新たな「仕組み作り」を迫られていくことは間違いなさそうだ。

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