師匠も走る12月、お笑い界では恒例の大イベントに向けて芸人たちが走り回っている。この週末についに準決勝を迎える「M-1グランプリ2008」、今年は一体どのような展開が待ち受けているのであろうか。

 昨年のM-1はいわずと知れたサンドウィッチマン(フラットファイヴ)の劇的な優勝劇で業界中が騒然となった。テレビへの露出がほとんどなかった、無名事務所所属コンビの下克上。これまでもM-1チャンプの座を手にした芸人は翌年の活躍が約束されてきたが、これほどまでのフィーバーぶりは初めてだ。今年もまたサンドのようなニューヒーローが生まれるのだろうか。遅ればせながらサンドウィッチマン著作の「敗者復活」を手にとってみた。

 私は元来、いわゆる“タレント本”を好まない性質だ。幼少期の思い出や売れるまでの苦労話、スポットライト下での葛藤、夢を見る若者たちへのメッセージ、そういったものが上から目線で盛り込まれている嫌らしいもののような気がしていたからだ。しかし、この本は私の偏見を払拭してくれた。

 内容はやはり先述した通りのものなのだが、実に嫌味がない。幼い頃からM-1優勝後までの道程がまるでお笑い芸人のレシピのごとく伊達、富澤、両者の口から交互に語られている。高校時代以降のエピソードは同一のものが多いのだが、双方の目線からザッピングできる趣向はなかなかだ。

 圧巻はM-1について語られたくだり。生放送を見ていた人ならあの衝撃と感動が蘇ることうけあいだ。紙面からは2人のM-1に対する思いをまざまざと感じることができ、これからM-1を獲ろうという若手芸人たちの参考にも大いになりうるだろう。ちなみに、「オジンオズボーン」篠宮暁(松竹芸能)はこの本を読み、あまりのリアルさに『へこみました』とブログに記している。それほどまでに生々しい記述となっているのだ。この熱があの舞台裏にあったのかと思うと、全身が粟立つような思いがする。

 今年のお笑い界を振り返るにあたり、サンドの存在は欠かせない。拙コラムでもたびたび取り上げさせていただいたが、M-1フィーバーのにぎやかしの一端でも担えていたのなら光栄だ。一お笑い好きとして、そしてこの一年楽しく記事を書かせてくれた感謝の念をこめて、M-1チャンプ卒業後も引き続きサンドの活躍を祈る。

(編集部 三浦ヨーコ)


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