15日、イタリア半島最南端レッジョ・ディ・カラブリアとシチリア島の玄関口メッシーナを結ぶ高速船に大型貨物船が衝突する大事故が起きた。4名の尊い命が奪われた大惨事のなか、一人のセリエA審判員が多くの人命を救助していたことが判明した。

17時30分レッジョ港発メッシーナ港行きの350名収容可能の高速船“Segesta Jet”に17時53分、ドイツの大型貨物船“Susan Borchard”が突っ込んだ。会社員、大学生の足として市民生活に根付いている高速船の右側部に大型貨物船の舳先がめり込んだ。無線の故障により携帯電話でSOSを求める乗務員、乗客、そして海峡に自ら飛び込む者も続出するなか、セリエA・Bの線審フランチェスコ・ベネデット(40)が多くの人命を救助した。

突然の事故によりパニックに陥った船内でベネデット線審は冷静かつ的確な指示を出し、少なくとも30名の命を救ったとの事。メッシーナ出身のベネデット線審は「審判員としての経験がこの非常事態を救ってくれた。我々審判員は常に瞬時の判断に迫られており、的確な誘導につながった」と事故当時を振り返っている。

事故に遭った高速船は現在、無残な姿でメッシーナ港に停泊している。亡くなった4名はみなメッシーナ在住のベテラン乗組員。事件当日、メッシーナ市内は深夜遅くまで救急車とパトカーのサイレンが響き渡った。病院に搬送された約100名の乗客に死者が出なかったことだけが唯一の救いだが、メッシーナとレッジョを毎日往復するベネデット線審は「避けられた事故だった」と被害者を代表してやりきれない想いを口にした。

佐藤 貴洋