主役はあくまでPレンジではなくサイドブレーキ

 AT車を駐車する場合、サイドブレーキ(パーキングブレーキ)をかけて、セレクトレバーをPレンジに入れておくのが大前提。Pレンジに入れておけば、トランスミッション内部の歯車に、爪状の部品(パーキングロックポール)が引っかかって、ギヤが固定されクルマが動かないようになるので、万が一サイドブレーキの利きが不十分だった場合でも、クルマが勝手に動き出すリスクを防げるからだ。

 ただし、あくまで主役はPレンジではなく、サイドブレーキ。道路交通法にも、「車両等を離れるときは、その原動機をとめ、完全にブレーキをかける等当該車両等が停止の状態を保つため必要な措置を講ずること」(第71条-5)と「運転者が車を離れるときの義務」が明記されている。

 したがって、MT・ATを問わず、駐車時にはサイドブレーキさえ“しっかり”利いていれば、ギヤはニュートラルだって問題ない。実際、MT車ユーザーは、普段、ニュートラル+サイドブレーキで駐車している人が大半だろう。

MT車は1速かバックに入れることでPレンジと同じ効果が得られる

 ただし、坂道に駐車する場合は、ちょっと注意が必要。クルマの取扱説明書にも、「坂道での駐車は、パーキングブレーキをかけ、マニュアル車はチェンジレバーを1速またはR(バック)に、オートマチック車はセレクトレバーをPに入れてください」と書かれているはず。つまり、あくまでメインはサイドブレーキだが、補助的にAT車ならPレンジに入れ、MT車なら1速かバックギアに入れておけば、AT車のPレンジとほぼ同じ効果が得られるというわけ。

 逆にいえば、MT車は1速かバックに入れておくことで、サイドブレーキのバックアップ機能を得ることができるが、AT車ではそれが望めないので、その代用としてわざわざPレンジを設けたともいえる。だからMT車にPレンジがないのは、当たり前といえば当たり前。

 ちなみに、BMWのMシリーズのように、2ペダル車でも、「Pレンジ」がないクルマはいくつかある。BMWのようにDCTは、ATではなくMTの一種と考えているクルマは、2ペダルでもPレンジを設けないのだろう。

 また、電動パーキングブレーキのクルマなら、手動のサイドブレーキのように利き具合が力加減に左右されることがないので、「利きが甘い」という心配がないので、Pレンジのバックアップも原則不要になる方向に?(反対に、Pレンジに入れると自動的に電動パーキングブレーキが働く機能もある)

 というわけで、MT車は、駐車中、1速かバックにギアを入れておけば、AT車のPレンジがわりになるので、Pレンジは必要なかったということだ。