パキスタン戦で1トップ・2シャドーを形成した前田(左)、旗手(中央)、岩崎(右)。上手く連係し、ゴールを量産した。

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 アジア競技大会、パキスタンとの第2戦は、ネパールとの初戦から中1日というタフなスケジュールだった。そもそも初戦もJリーグから中2日(しかもインドネシアへの移動あり)という中での戦いである。森保一監督は先発8名を入れ替えてこの試合に臨んだ。
 
「森保システム」の肝と呼ぶべき1トップ・2シャドーは3人全員が入れ替えに。前田大然を1トップに、岩崎悠人と旗手怜央がシャドーで並ぶラインナップとなった。
 
 ストライカーとしてプレーすることを好む3人が前に揃える形は、これまで余り考えにくかったもの。出したい特長やプレーエリアがかぶってしまう可能性も考えられたが、3人の受け止め方は至ってポジティブだった。
 
「一戦目を見ていてあまり前からのアグレッシブさがなかったので、怜央と悠人ともドンドン仕掛けていくぞという話はしていた。今回前線の3人は全員スピードのある選手なので、もっとスピーディーなサッカーをしよう、と」(前田)
 
「(前田)大然、(岩崎)悠人と3人で話していて、前から自分たちは運動量もあるし、スピードもあるんだから、積極的に前から行こうと話していた」(旗手)
 
 試合の入り、「まず前に、裏へ行こうと思っていた」という岩崎の動き出しから早々に先制点が生まれると、そこから前田、旗手も決めてわずか10分間で3得点。
 
 前へ前へ前へ。「俺を使え。決めるから」とばかりに動き出しを重ねる点取り屋たちの意識が良い意味で噛み合い、3人の中で最もMF的な資質を持つ旗手がうまくクッションに入ったこともあり、予想以上に綺麗なハーモニーを奏で出すこととなった。
 
 もっとも、「4点取ったところで相手も引いちゃって、ぜんぜん奪いに来なくなったので、一戦目みたいな試合になってしまった」(前田)ことで、課題も見え隠れした。「引かれた相手にはこのままだとしんどいかな」という前田の率直な感想は、実態をよく表してもいた。
 
 もちろん、今回の突貫系3トップが、シャドーに技巧派を置き、縦パスを足下に呼び込み、フリックなどを挟んで綺麗に崩す従来の形と明らかに違う色を出せたのは確か。別に足下から崩しにかかるプレーが悪いというわけではなく、新たなオプションとしてストライカーマインドを持つ選手たちを並べても面白い効果を出せることが確認できたのは好材料だ。

 明確な「型」を持っているのが森保式の強みだが、その型に流し込む素材によって色合いも味わいも変わってくる。シェフである監督の腕前が問われるところだが、同時に調理される立場にある食材たちも「自分の味」を表現することがなによりのアピールになる。突貫3トップの躍動は、そうした示唆を与えてくれるものだった。
 
取材・文●川端暁彦(フリーライター)