「夢はIT企業のプログラマー」特別支援学校に通うヤングプログラマーが目指す未来


プログラミング教育活動である「Hour of Code」。それに協賛するAppleの取り組みは、別記事でもご紹介しました。今回はHour of Code期間に取材した、あるヤングプログラマーの活動を紹介します。

そのプログラマーの名前は竹内君。筑波大学附属桐が丘特別支援学校に通う、14歳の中学2年生です。竹内君は、パラリンピックにも採用されているボール競技「Boccia(ボッチャ)」を体育の授業で体験して以来、大会でも活躍している中学生です。

竹内君はボッチャをもっとみんなに知ってもらいたいという思いで、ボッチャ体験アプリの製作を目指しています。現在はiPadを使ってプログラミング言語の「Swift」を猛勉強中です。



今回は、筑波大学附属桐が丘特別支援学校にうかがい、竹内君が参加している放課後のクラブ活動を取材してきました。

クラブには中学1〜3年生の15人ほどが参加し、ICTを生活で活用する方法を考えたり、生徒たちの好きなことを追及したりといった活動を行っています。竹内君は自分のiPadを使い、「Swift Playgrounds」でプログラミングを学んでいます。



竹内君がプログラミングに目覚めたのは、映画の中でコンピュータを巧みに操る人を見たのがきっかけで、小学生時代に簡単なブロックプログラミングは体験していました。中学2年生になった今春、担任の白石利夫教諭が、iPadで学べる「Swift Playgrounds」を紹介したことによって、竹内君のプログラマーへの道が大きく開かれたのです。

白石教諭は、iPadやMacを教育現場で活用している教育者のみが認定される「Apple Distinguished Educator」の一人で、これまでにも筑波大学と共同でICTを教育に生かす研究を行ってきました。そして、竹内君のプログラミングへの興味にもいちはやく気付き、当時、日本語版が出たばかりの「Swift Playgrounds」を勧めたのです。

AppleのSwiftは、障がいのあるなしにかかわらず、誰でもコードを書くことができる「Everyone Can Code」の設計のもと開発されています。そして「Swift Playgrounds」はプログラミング初心者でも段階をふんでSwiftを学んでいける、優れたiPad専用のアプリです。



以後、クラブ活動などの時間を使い、白石教諭のサポートの元、竹内君はSwiftの学習をしてきました。

Swiftを使っての最初の目標は、ボッチャを広く知ってもらうためのアプリを開発すること。「ボッチャを気軽に体験できるゲームにしたい」ということで、白石教諭と相談しつつ、中学卒業までの完成を目指しています。
そのほかにも「定期テストの予定などをたてるのが大変なので、計画をたてられるようなアプリを作ってみたい」という構想も持っています。



現在はそのための第一歩として、Swift言語を勉強中ですが、将来の夢をきくと「IT企業のプログラマーになること」と即答してくれました。

Swiftの学習については「最初はやってみて難しい箇所もあったけれど、『Swift Playgrounds』はキーボードの頭文字を押すだけでコードの候補が出てくるので、比較的楽に学習できます」と竹内君。現在、すでにSwift Playgroundsは中盤まで進んでおり、かなり難しいステージに挑戦しています。取材中も課題に苦戦し、何度も頭をひねっていました。その際「とりあえず、全部試してみよう」と、根気よくコードを修正しながら挑戦する姿がとても印象的でした。



「ここ数年で、プログラミング学習の環境は大きく変化しました」と白石教諭は語ります。「昔はパソコンが必須でしたが、今はiPadさえあれば気軽に本格的なプログラミングを学ぶことができ、敷居が低くなりました」と話すとおり、近年、プログラミング学習のすそ野は大きく広がっています。

2020年から実施される次期学習指導要領で国が目指しているのは「プログラミング的思考力を養う」ことで、エンジニアやプログラマーを養成することは目的としていません。しかし、プログラミングを学び、その言語を習得することは、将来の可能性を広げることにもつながってきます。

タブレットやスマートフォンの普及でハードの環境が整い、さらに誰でも挑戦できる言語がある。これはすなわち、プログラミングスキルを身に着け、仕事にできるチャンスが多くの人にあたえられていることを意味します。


白石教諭は「iPadなどのICT機器は、授業に取り入れるメリットがたくさんある」と話します。「たとえば、筆圧が弱く、紙と鉛筆が使いづらい生徒でも、iPadなら楽に文字を書くことができます。また、文字を自由に拡大・縮小して、見やすいように工夫できるのも、iPadならではの利点です」

一方で、生徒たちにSwift Playgroundsを勧めた理由は、より実践的なツールであったことが大きいとしています。
「以前の学校では『Scratch』などのブロックプログラミングなども使っており、本当に入門だけであればそれで十分だと思います。でも、『Swift Playgrounds』は実際のプログラミング言語を使えることがとても大きいと思っています。Swift言語を学ぶことで、さらに一歩進んで、実際にプログラミングしてアプリを作ることがしやすくなるからです」

「こんなアプリがあったら......」
「便利なアプリを作ってみたい」
そんな気持ちは、スマホを使っている誰しもが一度は感じたことがあるでしょう。


竹内君はそこから一歩進み、その思いを形にするために、プログラミングの勉強を始めました。
そんな若きプログラマーの姿を見ていると、今後プログラミングによって、たくさんのチャンスが生まれ、世界が変わっていくという希望を感じました。

竹内君と白石教諭の二人三脚の挑戦は、これからも続いていきます。いずれ、竹内君が作ったボッチャアプリがApp Storeにならぶことを、今から楽しみにしていたいと思います。


▲筑波大学附属桐が丘特別支援学校の白石教諭と、竹内君