【元川悦子の日本代表にこの選手を呼べ!】精神的支柱に成り得るこの男はロシアW杯に必要・本田圭佑

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▽本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)、香川真司(ドルトムント)の「ビッグ3」が選から漏れたことで、戦いぶりが一層注目された日本代表の11月欧州2連戦(10日=ブラジル、14日=ベルギー)。フタを開けてみると、ブラジル戦は1-3、ベルギー戦も0-1の苦杯。世界トップの牙城はやはり高かった。

▽ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はこの2連戦で中盤に守備力の高い長谷部誠(フランクフルト)、山口蛍(C大阪)、井手口陽介(G大阪)らを起用。吉田麻也(サウサンプトン)が「メンツ的にもポゼッションを捨ててブロックを作ってカウンターってところに全てを費やしているので、それ自体が崩れてしまうのは一番よくない」と話していたが、その守備が破られてしまったのだから、このままでいいはずがない。7カ月後に迫った本大会に向け、多少なりとも修正を加えなければいけないことは明白だ。やはり前線でタメを作れる人材を増やし、サッカースタイルを微調整していくことも考える時期に来ている。

▽そんな今こそ、再評価されるべきなのが本田ではないか。昨季ACミランで出番を失ったことで、代表でも久保裕也(ヘント)や浅野拓磨(シュツットガルト)の後塵を拝する形になったが、今夏に赴いた新天地・パチューカでは着実にパフォーマンスを上げている。移籍当初は負傷で出遅れたものの、9月半ば以降、一気に巻き返しに出ている。9月28日のクルス・アスル戦でのゴールを皮切りに、10月25日のメキシコカップ1回戦・サカテペク戦で2得点、30日のサントス・ラグーナ戦で1得点、11月8日のメキシコカップ準々決勝・ティファナ戦で1得点とゴールを固め取り。ティファナ戦での4人抜きループ弾は絶好調時のパフォーマンスを彷彿させるものがあった。
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▽9月5日の2018年ロシアワールドカップアジア最終予選ラストのサウジアラビア戦(ジェッダ)でミスを連発して前半45分で下げられた際、「(ボールを失ったところは)感覚的なもの。取り戻していかないといけない」とコンスタントにピッチに立ち続けることの重要性を改めて強調した本田。それを最後に代表から遠ざかる形になっているが、中東の地で残した言葉通り、パチューカでスタメン出場する回数を劇的に増やし、フィジカル的なキレやゴール前の鋭さも引き上げつつある。12月にはFIFAクラブワールドカップ(UAE)も控えていて、そこでブレイクすれば、ハリルホジッチ監督も考え直さなければならなくなるだろう。卓越した国際経験値を誇るこの男を放っておく手はない。

▽1-3で敗れたブラジル戦を見ても「本田がいればもっと前線にタメができるのに…」と感じさせられる場面が少なからずあった。同じ右サイドを担う久保や浅野は矢のような推進力を持つアタッカーとしては有能だが、相手を食いつかせるようなドリブルやボールキープはできない。山口蛍も「(ロシア行きを決めた8月31日の)オーストラリア戦みたいに前からプレスをかけ続けるのは1試合ならできるかもしれないけど、本大会みたいに中2日、3日で試合となれば絶対にできないと思う」と話しているだけに、やはりポゼッションを多少は織り込んで修正を加えていく必要はある。そうなれば、やはり本田というピースが不可欠なのだ。

ワールドカップのような凄まじい重圧のかかる舞台での強靭なメンタリティという部分でも、彼は際立ったものがある。それは2010年南アフリカワールドカップのカメルーン戦(ブルームフォンテーヌ)とデンマーク戦(ルステンブルク)での2得点、2014年ブラジルワールドカップ・コートジボワール戦(レシフェ)での1得点でも実証されている。98年フランス大会から始まった日本のワールドカップ史を紐解いても3ゴールを奪っているのは本田だけ。それだけ大舞台に強いということだ。

▽仮に本田がロシアに戻ってきた場合、過去2大会のように全試合スタメンは保証されないだろうが、彼ならばベンチからチーム全体を力強く鼓舞できる。それは過去1年間の最終予選終盤での立ち振る舞いを見てもよく分かるはずだ。

▽ハリルホジッチ監督にとっては、存在感が大きすぎるゆえに扱いづらい存在なのかもしれないが、そういう人間がいない代表は「小さくまとまった集団」になってしまう。そんなチームが2大会ぶりのベスト16進出を果たせるかどうかは疑問である。本田のような選手こそ真のプロフェッショナル。そこへのリスペクトを忘れることなく、指揮官は彼の再招集を真剣に考え直すべきではないか。そこには改めて注文をつけておきたい。【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。