【六川亨の日本サッカー見聞録】豪州は恐れる相手ではないが日程に問題あり

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▽日本人は、というよりサッカーファンは、ペシミスト(悲観主義者)が多いような気がする。ロシアW杯アジア最終予選でイラクと引き分けたことで、本大会に行くためにはホームのオーストラリア戦かアウェーのサウジアラビアでの勝利が必要になった。

▽2チームとも楽な相手ではない。しかしながら現在のオーストラリアは、ボールポゼッションを高めたパスサッカーを展開してくる。「オレたちも以前のキック・アンド・ラッシュではなく、バルセロナのようなサッカーができるんだぜ」といった感じでボールを回して来る。そんな相手に昨年10月のアウェーでは、意図的にオーストラリアにパスを回させながら、ショートカウンターから先制した。

▽残念ながらPKから追いつかれたものの、日本にとってはフィジカルを前面に出したキック・アンド・ラッシュの方が怖い。日本の失点パターンのほとんどは、ロングボールやドリブル突破からのカウンターが多いだけに、オーストラリアがパスサッカーをやってくれれば勝機も広がるというもの。

▽そんなに恐れる相手ではないと思う。

▽ただし、気になるのは日程だ。オーストラリア戦は8月31日だが、UAE対サウジ戦は8月29日、そしてサウジ対日本戦は9月5日。サウジは中6日で、なおかつ移動距離も短く時差もない。それに対し日本は中4日で時差や長距離移動を強いられる。

▽JFA(日本サッカー協会)としては日程の変更も視野に入れているそうだが、FIFA(国際サッカー連盟)の設定した、選手を拘束できるインターナショナルウインドーは8月28日から9月5日まで。サウジと同じように8月29日にオーストラリア戦を迎えるとしたら、海外組は招集翌日に本番だし、国内組もJ1リーグが26日にあるため、中2日の強行軍となる。

▽理想的なのは、海外組の招集を早めてもらうよう各クラブと交渉し、J1リーグの日程は変更した上での29日開催だ。そのための交渉やネゴシエートを誰がするのかというと、西野技術委員長になるのだろうが、リオ五輪で久保や南野の招集に尽力した霜田元NTDの辞任は痛いと言わざるを得ない。

▽さらに9月5日のサウジ戦にも懸念材料はある。サウジは初戦のタイ戦を首都リアドのキング・ファハド国際スタジアムで開催したが、その後の3試合をジェッダのキング・アブドゥラ・スポーツシティで開催している。もしもジェッダで日本戦が行われるとなると、オシム・ジャパン時代の06年のアジアカップ予選以来(0-1)だが、問題は開催日時だ。

▽というのもイスラム教徒にとって最大の儀式である聖地メッカへの大巡礼である「ハッジ」が、今年は8月30日夕方から9月4日に掛けて開催される。昨年は世界から200万人が訪れたそうだが、ジェッダはメッカへの玄関口となっているため、かなりの混乱が予想される。

▽サウジ戦がロシアW杯への大一番となったら、多くのサポーターが観戦を希望するかもしれないが、試しに8月31日から9月5日までジェッダのホテルをチェックしたら、すでに多くのホテルが予約で埋まっていた。そして一番安いアパートメントホテルで6泊したら、約7百20万円という値段。1泊100万円以上の出費を覚悟しなければならない。これは、かなりハードルの高い試合と言わざるを得ない。開催都市がリアドになることを祈るしかないだろう。

【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。