NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」公式サイトより

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 柴咲コウ(35)主演のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の第11回が19日に放送され、平均視聴率は13.7%(以下・ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回の12.5%から0.7ポイント上昇という結果になりました。

 井伊直親(三浦春馬)は弱体化した今川家を見限り、松平元康(阿部サダヲ)と手を組むことを決意。面会を果たして意気揚々と帰るも、直親が面会したのは今川が用意した偽の元康。裏切りの証拠を突き付けられた小野政次(高橋一生)は事実を認めてしまい、今川家は直親を呼び出した……という展開。序盤では次郎法師と直親・政次の3人に昔のような穏やかな時が流れ、再び心から笑い合えるようになったのに、すべてはその後に待っている悲劇の序章でした。

 寿桂尼(浅丘ルリ子)に証拠の書状を突き付けられるも、「筆跡が違うような気がする」と一度はシラを切る政次。ところが、その場に控えている武士の手の傷を見て、直親が面会したのは松平元康ではなかったと悟ります。

 直親の裏切りを知ってて加担したのか、それとも知らなかったのかと迫る寿桂尼。答えに窮している政次にさらに迫ります。「答えを選ばれよ」。直親を裏切れば、直親のクビが飛ぶだけで井伊の家は存続できるはず。一方、目付の自分が知っていたと答えれば井伊家全体の謀反とみなされ、最終的には戦で決着をつけるしかなくなります。そして、その場合はほぼ確実に井伊家が滅びることになります。

 真実などどうでもよく、当主のクビを差し出して家を助けるか、当主をかばって滅びるかを選択せよというあまりにも過酷な問い。一貫して甘さを一切見せない寿桂尼の怖さが際立ちます。

 苦悩しつつも、自分は親の代からもずっと今川家に忠義を尽くしており、直親の企てなどは知らなかったと答える政次。友の死を自ら宣告したに等しい罪悪感と重圧が彼を襲います。誰よりもお家の存続を考えているがゆえにうとまれ、恨みを買う役目。「お前は必ず、わしと同じ道をたどるぞ」との父親の言葉が脳裏に浮かび、人知れず目に涙を貯めます。

 我々視聴者が政次の苦悩に胸が締め付けられるような思いがするのは、あの4回にもわたる幼少期を見てきたから。当時は「子役時代長すぎ」との批判も多くありましたが、それも成長してからの3人の因縁をより一層深く感じてもらうためだったのだと今ならわかります。あの楽しかった日々の思い出がグサグサと胸に刺さり、容赦なく視聴者の心をえぐっていく脚本、なかなかいいんじゃないでしょうか。

 抑えた演技ながらお家存続のために断腸の思いで友の命を差し出す政次を情念たっぷりに演じた高橋一生には「高橋一生は天才だな。あんな笑顔の後にあんな涙目見せられたら泣くしかない」「高橋一生の涙がキラキラきれいで悲しい」「臓腑をねじ切られるような政次の痛みを感じました」「政次が高橋一生ってキャスティング、最高」など、Twitterで多くの賛辞が寄せられました。火曜22時のTBS系「カルテット」でも不憫な役回りを演じていることから「日曜日も火曜日も不憫の権化みたいな高橋一生みせられてほんと辛い」「心の底からかわいそう」「高橋一生と書いて不憫と読みます」などの声も。

 史実によれば、小野政次は次回以降もどんどん悲劇に突き進んでいくはず。予告によれば次回はいよいよ次郎法師が井伊直虎になるようですが、そのためには登場人物がさらに退場する必要があります。どうやら2週続けて重いお話になりそうです。

文・中島千代