“瞳孔が開く”とはどういうこと?どうしてなるの?
執筆:井上 愛子(保健師、看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
ドラマなどで人が亡くなった時に、医師がペンライトで瞳孔を見ているシーンをよくみかけますね。
このとき、「なぜ瞳孔が開いたときに死と判定する」のか、疑問に思ったことはありませんか?
今回はそんな疑問にお答えしていきましょう。
そもそも瞳孔って何?黒目のこと?
私たちの目は、目の中心から瞳孔、虹彩(こうさい)、白目という位置関係にあります。
一般的にいう「黒目」は、瞳孔と虹彩を合わせた部分のことです。
そのうち瞳孔とは、黒目の真ん中にある、透き通った黒い部分のことです。
瞳孔は、光を感じる機能を持ちます。その周りにあるのが虹彩で、黒目の周りの茶色や焦げ茶色をした部分をいいます。虹彩は、緩んだり縮んだりすることで瞳孔の大きさを調整し、目の中に入る光の量を調節しています。虹彩には、カメラでいう「絞り」のような役割があります。
それでは、そもそも瞳孔は、どのようにして大きさを変えているのでしょうか。
それは、目と脳をつなぐ神経が担っています。次から詳しくみていきましょう。
瞳孔はどんな時に開くの?死んだ時だけ開くの?
目と脳は、「視神経」と「動眼神経」という2種類の神経でつながっています。目に入った光は、視神経をとおって脳に刺激として伝わります。
すると脳は、脳から出ている動眼神経をとおして、目から入る光の量を調節する指令を出します。その指令によって、虹彩が縮んだり、緩んだりさせることで、瞳孔の大きさは変わっています。
虹彩が縮む、つまり、黒目の周りの茶色い部分が狭くなると、瞳孔が開いている、大きい、ということになります。
虹彩が緩む、つまり、黒目の周りの茶色の部分が広くなるのは逆のことで、瞳孔が小さいということになります。
ここまで聞くと、ドラマのワンシーンで見るような、臨終の際にだけ瞳孔が開くわけではないということがお分かりでしょう。
私たちが普通に生活している中では、暗い場所では多くの光を集めようとして、瞳孔が開きます。逆に、目に入る光の量が多すぎると、目にダメージを与えてしまいます。
明るい場所では、瞳孔を小さくして目に入る光の量を抑えているのです。私たちの身体は、このようにして周りの変化に自然に対応しているのですね。
瞳孔が開くと「死」と判定するのはなぜ?
瞳孔が開いているだけで「死」と判定するわけではありません。
厳密には、呼吸と心臓、脳の機能が止まっていること、この3つの条件がそろった時、「死」と判定されます。
呼吸と心臓が止まっていることは、胸の動きや聴診器で胸の音を聞いたりすることで分かります。脳は、呼吸や心臓を動かすなど、生きていくことに欠かせない指令を全身に出しています。脳の機能が止まっていることは、目に光を当てても瞳孔が開きっぱなしであることから、判断しています。
ちなみに、目の神経(視神経や動眼神経)の一部、脳の一部にトラブルがあった時でも、瞳孔は開きっぱなしになります。開きっぱなしになるほか、左右の瞳孔の大きさが違う、ピンホールのように異常に瞳孔が小さいという場合も、目の神経や脳にトラブルが起きているサインである場合があります。
すぐに心臓や呼吸が止まるわけではありませんが、放っておくと命の危険に関わる場合もあります。
もし瞳孔の大きさが違うなど、気になる症状がある場合は、眼科や脳神経内科を受診しましょう。
いかがでしたか?「目は口ほどに物をいう」といいますが、瞳孔の大きさや左右の違いなどから、実は隠れた病気まで分かるのです。
ほかにも、身体の反応から健康状態を知る情報を持っておくと、健康状態の変化をサインに、早く気づいて対処できそうですね。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供