「プロかどうかは関係ない。ただ、歌うことが楽しい」――ネット発のボーカリスト天月-あまつき-が2ndシングル『DiVE!!』に込めた思い
動画共有サイトに自らが歌うカバー曲をアップしたことをきっかけに、メジャーデビューを果たした天月-あまつき-。“シンデレラストーリー”という言葉がふさわしいが、本人はいたって冷静である。「そもそも僕の中に、“メジャーとインディーズ”とか“プロのミュージシャンかそうじゃないか”といった区別がないんですよね」とあっけらかんと語る。あるのは歌うことへの欲求と音楽を続けられることへの喜び――。そんな彼の2ndシングル『DiVE!!』が12月14日(水)にリリースされる。

撮影/祭貴義道 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.



初代から見ていた『デジモン』OPを歌える喜び



――1stシングル『虹の向こうへ/星月夜』から1年2カ月ぶりとなるシングル『DiVE!!』がいよいよ発売ですね。

『DiVE!!』は『デジモン』最新シリーズとなるアニメ『デジモンユニバース アプリモンスターズ』(テレビ東京系)のオープニング曲です。デジタルなロックであると同時に、やはり、『アプモン』を見ている子どもたちがイントロから引き込まれ、ワクワクするような曲になればという思いで歌っています。

――『虹の向こうへ/星月夜』とはまた違ったタイプの楽曲となっていますね。

曲調も全然違うし、MVもロックな感じで初のバンドスタイルで撮っています。いままで、僕の曲を聴いてきてくださった方々も、これまでにない新たなタイプの曲として楽しんでいただけるんじゃないかと思います。



――天月さんご自身も、以前から『デジモン』がお好きだったそうですね?

子どもの頃から、それこそ初代からずっと見てました! これまでの主題歌を覚えていますし、歴代の主題歌の中に自分が歌う曲が入るかと思うと感慨がありました。緊張もありましたけど、やはりうれしかったです。

――カップリング曲も充実していますね。『明星の刃』は、舞台『剣豪将軍義輝〜戦国に輝く清爽の星〜』のテーマソングになっています。

1stシングルの『星月夜』を舞台『幻の城〜戦国の美しき狂気〜』のテーマソングに起用していただいたんです。それがすごく気に入ってもらえて、同じ『もっと歴史を深く知りたくなるシリーズ』の最新作である『剣豪将軍義輝〜戦国に輝く清爽の星〜』でも僕の歌を使っていただけることになりました。

――舞台は、室町幕府の十三代将軍・足利義輝の生涯を二部作で描く作品です。こちらの楽曲はどのような思いを込めて作られたんでしょうか?

『星月夜』とおなじ和ロック調の楽曲ではあるんですが、より疾走感を重視した曲になっています。特に舞台の前編は、義輝の少年時代、未熟ながらも運命に立ち向かっていくさまを描いており、駆け抜けていくようなイメージを大事にしました。

――作詞も共作で入られていますが、こちらも疾走感を重視したんでしょうか?

そうですね。特に少年時代――自分が何者なのかわからないまま、それでも前に進むしかない。己の運命を背負いながら、成長していった人物なんじゃないかと思い、それを歌詞でも表せたらと思いました。

――足利義輝は、一般的には決してメジャーな歴史上の人物ではないですが、天月さんは以前からご存じだったんですか?

アニメや漫画、ゲームが好きで、その中には歴史に関する内容のものもたくさんあって。水上悟志先生の漫画『戦国妖狐』(マッグガーデン)が好きで、そこに義輝も出てくるんです。史実に沿った物語も描かれていて、それがすごく面白くて「え? 本当にこんなことあったの?」と思うようなエピソードもあったりして、自分で興味を持って調べたこともあったんです。



嬉しいことも悲しいことも…音楽で“共感”したい



――そしてカップリングのもう1曲『プレゼント』は作詞だけでなく、作曲もご自身でされていますね。

以前のアルバムでも曲は作ってるんですけど、今回は特に優しい曲を歌いたいという思いがあって、イルミネーションをイメージして、大切な人を祝うときの気持ちを曲にしたらどうなるのかな? と考えながら作りました。

――大切な人の誕生日を思わせる歌詞ですね。

大切な人――それは恋人だけでなく、友達でも家族でもそうなんですが、そういう人たちが幸せで笑っていてくれたら自分もうれしい。そんな思いを歌っています。

――ちなみに曲を作る際はメロディが先ですか? それとも詞が先ですか?

メロディですね。基本、その場で思いついたメロディを口ずさんで、あとからコードを付けていきます。

――“イルミネーション”という言葉が先ほど出ましたが、天月さんの作詞された楽曲の多くで、光や星、ネオンといったキラキラ輝くものがモチーフになっているように感じます。何か特別な思いをお持ちなんでしょうか?

単純に僕が好きなんですよね。僕は、音楽って“共感”だと思っていて、うれしいこと、楽しいこと、悲しいこと、恋する気持ち――「あぁ、そうそう!」でも「いいな」でも「こういうことあるよね」でもいいし、「自分で経験したことはないけどわかる」でもいい。何か、考えさせられるところって音楽の気持ちいいところだと思ってるんです。

――なるほど。

星や月って、誰しも見て、何かを考えたことがあると思うんです。「今日は星が見える」でも「満月か」でもいいし、単純に空を見て「星がキレイだな」でもいい。昔の言葉でも、日本人は星や月をいろんな言葉で表現してて、手が届かないけど身近な存在なんですよね。すごくロマンチックだし、僕自身、音楽をやる上で取り込んでいけたらと思っています。

――そして今回、初回限定盤にはMONGOL800の大ヒット曲『小さな恋のうた』のカバーが収録されていますね。

『小さな恋のうた』は既に一度、カバーしたものをネットで発表していたんですが、公開して数カ月で再生数は1千万を超えて、すごくたくさんの方に楽しんでいただけたんです。これが、いまの子たちがオリジナルの曲を知るきっかけになったり。



――いまの若い子たちは、オリジナルの曲のほうを知らない人も多いんですね。

そうらしいです。発表されたのは2001年で、僕が10歳の頃ですから。いままでもいろんな楽曲のカバーをさせていただいてたんですが、その中でも特に反響も大きくて。今回、感謝の意味も込めて、CDにも入れさせていただきました。

――そもそも、この曲をカバーしたのは…。

単純に好きな曲だったからですね。僕自身、2001年の発表時は聴いていなかったんですが、その後も、ずっとみんなが歌っている曲なので、知っていました。

――原曲と比べ、曲調がやや変わっていますが、アレンジに関してはどのような意図で?

発表当時、バンドサウンドが流行ってて、その生歌の良さが魅力の曲で、今も多くの人に支持されている曲だと思うんですよね。その上で、僕らのような世代がネットから出てきて、いろんな上物を乗せたサウンドを作っている。そういう、いまの僕ららしいいろんな音を乗せて、あの曲のキラキラした青春っぽい感じをいまの形で出せたら面白いんじゃないかと思いました。