2016年9月19日、次のような写真付きのツイートが投稿され、話題となっている。

写真は、岩手県花巻市で9月17日・18日に行われた「土沢まつり」の山車の装飾だ。風流と呼ばれる表側に対して、見返しと呼ばれる裏側が、なんとシン・ゴジラである。「地元のお祭りのシン・ゴジラの山車、見ることができました」というコメントが添えられている。

その迫力に満ちた造形には圧倒される。「なんだ、これは?」――Jタウンネット編集部は早速、現地の「土沢まつり実行委員会」に電話して話を聞いてみることにした。

小さい頃からゴジラが大好きだったから......


土沢まつりで練り歩いた山車(画像提供:多田勇太さん)

「土沢まつり実行委員会」をとおして、電話で答えてくれたのは、実際に山車を製作した中下(なかしも)組の多田勇太さんだ。

「山車の構想をゴジラに決めたのは、8月中旬でした。私は小さい頃からゴジラが大好きだったから、ぜひやりたかったのです」と多田さん。結局、表側の風流を鞍馬山の天狗と牛若丸とし、裏側の見返しをゴジラで行くことになった。


骨格制作中(画像提供:多田勇太さん)

多田さんの構想を具体化したのは、菅原裕紀さん。「1寸角の木材や銅板で骨格部分を作って、段ボールや新聞紙を貼り合わせていきました」と、多田さんは語る。「ゴジラの体内から発する赤い光は、LEDを使用しました」、菅原さんの苦心作だ。

「ゴジラの口から出る蒸気は、スモークマシーンを購入して使用しました」。エアコンプレッサーも追加して、効果を高めたとのこと。


完成間近(画像提供:多田勇太さん)

作業に携わったのは、風流(表)・見返し(裏)合わせて、約20人。菅原さんは豆腐店、多田さんはゴミ収集業、その他のメンバーも地元の商店街で働いている。仕事を続けながら作業を行ったため、結局、祭りの前日までかかったそうだ。


山車・見返し(画像提供:多田勇太さん)

土沢まつりは、江戸時代中期から始まり、約300年の歴史を誇る伝統行事だ。主役とも言える山車は、明治中期からつくられており、「土沢囃子」にあわせて土沢商店街を練り歩くのが恒例となっている。

「長年培ってきたノウハウがありますからね」と多田さんも語る。受け継がれた伝統が、高いクオリティを支えていると言えるのだろう。

しかし、牛若丸とシン・ゴジラをなんなく両立させるのは、並大抵な能力ではない。やはりある種の異才ではないか。この山車は現在、土沢の商店街に展示中だ。一度見たい人は花巻市土沢へどうぞ。


山車・風流(画像提供:多田勇太さん)