右のキャラクターの名は「とじてん君」だそうである

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大阪市北区・中津駅にほど近い「レトロ印刷JAM」で開催される「とじてん」という展示が面白い。

コンセプトは「架空の雑誌の架空の頁の展覧会」というもの。公募で選ばれた約100人の出展者が、実際には存在しない架空の雑誌をイメージし、好きなページを作る。作るページは「目次」でも良いし、「占いコーナー」でも「クロスワードパズル」でも良い。自由な発想で「こんな雑誌のこんなページがあったら……」と妄想を膨らませた成果が展示されるという。

この展示の面白いところはそれだけではなく、展示された架空のページの中から、来場者が自分の好きなページ・表紙を選んで、その場で自分だけの架空の雑誌を作ることができるという点だ。

展示会場でもある「レトロ印刷JAM」の協力により、会場内の製本機で製本を行う。製本については、文庫本やムックのように背を糊で固めた「無線綴じ製本」によるものなので、仕上がりも本格的なものとなる。「ズレ・色落ち・混色・ムラ」などの風合いを活かした美しい一冊ができるのだという。

本展を主催するのは「kof booksellers union」。大阪に店舗を構える「駒鳥文庫」「ON THE BOOKS」「FOLK old book store」という3店の書店の店主によるユニットで、これまでにも「約100人の本棚展」「約100人のブックカバー展」というオリジナリティあふれる展示イベントを企画しており、特に「ブックカバー展」については、評判が評判を呼び、東京・大阪・名古屋の3都市・6会場で開催される大イベントへと発展した。「架空の本屋さんの、架空のブックカバーの展覧会」というコンセプトは今回の「とじてん」にも通ずるところを感じる。

そもそもどうして「とじてん」という企画を思いついたのか、主催者の「kof book sellers union」の皆さんにお話を伺ったところ、こんな回答をいただいた。

「これまで『本棚』『ブックカバー』をテーマにしてきたので、次はいよいよ『本』そのものかな、と。で、目をつけたのが『雑誌』でした。zineとかリトルプレスって、ひとりで作ろうと思うと意外と大変です。でもひとり2ページ程度なら、がんばったらできます。そんな時にちょうど『レトロ印刷JAM』さんに1冊からできる無線綴じの機械があるという話を聞いて……という経緯で今回の企画が誕生しました」

なるほど、来場者にとってはこの「とじてん」全体が、オリジナルzine作りの手軽な体験コースとしても機能するのか。自分の好きなページをチョイスして一冊にまとめるという流れは雑誌編集者の視点そのものだし。「とじてん」でリトルプレスの楽しみに目覚め、それをきっかけに自分でzineを作るまでになりました、という人も現れるかもしれない。

来場者の方に「自由で楽しい原稿がずらっと並びます。“架空の雑誌の架空の頁を「綴じる」展覧会”、みなさんどうぞおたのしみに!」 とのメッセージをいただいた。会期は2015年3月21日(土)から3月29日(日)まで。会期中にはゲストを迎えたトークイベントも開催される予定。雑誌やリトルプレスに興味がある方なら絶対にチェックしておきたい展覧会になりそうだ。
(スズキナオ)

・とじてん―架空の雑誌の架空の頁を「綴じる」展覧会(日時:2015年3月21〜29日 午前10時〜午後7時/場所:レトロ印刷JAMのお店/主催:kof bookselleres union)