ものの数え方の辞書を読むと普段使い分けていないだけで、いろいろな数え方があることに気付かされる

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みなさんは辞書にどのようなイメージがあるだろうか。学校で使ったりしていた経験から「難しい」、「面白くない」などのようにマイナスイメージを持っているのではないだろうか。
しかし実際のところ、辞書はとても魅力的なものを隠し持っている。ではそんな奥深い辞書の世界を「ケトルVOL.23」(太田出版)からひも解いてみたい。

【退屈ではない! 面白い辞書もある】


「つまらない」というイメージをどうしても持たれてしまう辞書だが、探してみると面白い魅力的な辞書も多いことが分かる。

■ネット用語を掲載
「三省堂国語辞典」には、多くの“新しい”言葉が掲載されている。そのため「キター!」や「w」、「なう」などといったネット用語も多く掲載されている。これらの言葉が言葉のプロにかかるとどのように説明されているのかという観点から見てみるのも面白いだろう。
また、“正しい日本語”ではないとされる「ら抜き言葉」を掲載しているのも特徴的だ。掲載の理由として「言葉は日々変化するもの、その過程を収めるのも辞書の役割」と担当者は語っている。

■冷凍マグロの数え方は
ものの数え方の辞書もある。この辞書を読むと普段使い分けていないだけで、いろいろな数え方があることに気付かされる。たとえばブロッコリー。そのままの状態だと1株であるが、調理されて小分けになると1房になる。
また、生きているマグロは1匹と数えるが、冷凍のものだと1本、さらには解体されて4分の1のサイズになると1丁、サクになれば1冊、お刺身状態では1切れなどと呼び方が変わる。このように自分では意識していなかった数え方の違いについて知ることができるに違いない。

■「かわいい」が100通り以上も?
標準語から方言を調べることができる「方言辞典」がある。それによると、「かわいい」という単語に100通り以上も呼び方があるそうだ。
また、この辞書にはその言語が使用されている地域も書かれており、それを見るのも面白い。
たとえば、「めんこい」という単語の使用地域には、岩手、青森といった東北圏に加えて横浜市も見られる。こんな新たな発見に出会えるのも辞書の魅力の一つだ。

■ナポレオンの辞書は実在した?
「私の辞書に不可能という文字はない」これはかつてナポレオンが言ったとされる名言だ。もちろん実際の辞書には「不可能」という単語は掲載されている。
だが、ナポレオンの言葉よろしく、なんと「不可能」という言葉が掲載されていない辞書がある。名前はその名の通り「ナポレオン辞書」。学研から出されたものだ。しかし、これは非売品のため、現在は入手困難となっている。

【歴史的出来事の影に辞書あり】


さて、歴史的な出来事に辞書が大きく絡んでいるということも珍しくない。知られざる辞書の影響力の凄さについて一例を紹介していこう。

■儒教の普及
孔子が始祖で、現在も東アジアを中心に大きな影響を与えている儒教。この普及には辞書が大きな役割を果たした。というもの、中国最古といわれている辞書は、儒教を後世の人が正しく読むためにとつくられたものなのだ。つまり、辞書がつくられることがなかったら、私たちに儒教の教えが伝わることがなかったといえる。

■女性の“社会進出”
平安時代、日本では女性が“社会進出”し、輝いていた。彼女らが残した文学はいまでも残り続けており、「源氏物語」や「枕草子」などが有名だ。
ここでも辞書が大きな貢献をした。当時、彼女たちの職場にあたる宮中に入るためには、漢文の知識が必須だった。そこで平安時代につくられた「和名類聚抄」という辞書が漢文を学ぶ大きな助けとなったのだ。

■英語が公用語に
現在、世界の公用語は英語となっている。しかし、そもそも英語が公用語になった理由はなんだろう。
実はここにも辞書が絡んでくる。1927年、「オックスフォード英語辞典」が完成した。この辞典の完成によって英語がほかの言語と比べいち早く言語の体系化に成功されたため、世界の公用語になったのだ。

このように、辞書は世界を動かすほど大きな影響力を持っているとともに、私たちが知らない面白くて魅力的なものが数多くあるのだ。意外と奥が深い辞書の世界、ぜひみなさんも書店に足を運び、辞書を手に取ってみてはいかが?
(さのゆう)