マーリンズへの移籍が決まり、イチローは41歳として迎える2015年シーズン、その見どころや現状はいかに?

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2001年、日本から来た一人の男がメジャーリーグに"衝撃"を与えた。当時パワーヒッター全盛の中、類まれな打撃技術、異次元のスピード、後に"レーザービーム"と称された強肩などで大男たちを圧倒した彼こそ、イチローだ。

その後もシーズン最多安打記録更新や、オールスターMVP、10年連続200本安打など数々の記録を残したイチローも今年、41歳でシーズンを迎える。メジャー移籍当初のライバルたちは1人、また1人と引退し、気づけば、メジャー野手最年長となったイチロー。そんな彼は、つい先日マーリンズへの移籍が決まった。41歳として迎える2015年シーズンの見どころや現状はどうか。

まずは、注目すべき点についてだ。

■51番の復活
イチローはやはりこの番号が似合う。オリックスのルーキー時代から2012年のマリナーズ時代に至るまで、ずっと背番号は51であった。しかし、ヤンキースに移籍後は31に変更となった。
だが、今回のマーリンズ移籍で約2年半ぶりに51が復活することになる。イチローもマーリンズ移籍発表の会見では、「31になった時、最初に書いたサインは51と書いてしまったくらい、僕の手は51を覚えている。無意識に51と書けることはすごくうれしい」と独特の"イチロー節"でその喜びを言い表している。

■"初"のマーリンズ
それまでマリナーズ、ヤンキースとア・リーグでプレーしてきたイチローにとって、今回のマーリンズ移籍は初のナ・リーグでプレーすることを意味する。他のリーグでプレーすることで、過去に対戦したことがないような投手とも多く対戦することとなる。
また、マーリンズにとっても、今回のイチローがチームとして初の日本人選手となる。イチロー効果で日本での注目度がかなり高まるだろう。

■白木バットへの変更
イチローは日本時代、白木色のバットを使用していたが、メジャー移籍後は漆黒色に変更した。その理由を「日本では規定があり、自分の好きな黒色に出来なかった。メジャーでは希望通りの色に出来るので、漆黒色にした。見た目的にも黒いと強そうでしょ」と小松成美氏とのインタビューで語っている。(イチロー・オン・イチローより)
しかし、今シーズンは白木バットに戻した。イチローの真意のほどは不明であるが、彼独特の考えを持っての変更であることは間違いない。

では、次に今シーズンでメジャー15年目を迎えるイチローの現状について見ていこう。

■足と守備はまだまだ通用するイチロー
走塁面と守備面では、全盛期と比べるとさすがに力が衰えているものの、未だに第一線で通用する力を持っている。

まずは、走塁面について。イチローは昨年、15盗塁をヤンキースでマークした。(40歳での2桁盗塁はヤンキース史上初の快挙)また、盗塁死も3と少なく、盗塁成功率は依然8割以上と高い率を残した。
さらに昨年の時点で、1塁までの到達スピードはメジャー2位を誇っている(Slugger No.192より)。その影響か、昨シーズンも14.9%となお高い内野安打率を誇った。

では、守備はどうだろう。ここ3年のUZR(メジャーで使用される選手の守備力を測る代表的な指標)を見ると、イチローの本職であるライトでは上位5位に入る能力をまだ持っている。また、"レーザービーム"と称された時代と比べると、衰えた印象が拭えない肩力に関しても、昨年に3位の評価を受けている(Slugger No.192より)。この強肩はメジャー有数の広さを誇る本拠地を持つマーリンズにとって、大きな武器となるだろう。守備、走塁面で40歳を過ぎてもこのレベルを保てるのは"異常"ともいえる。

■衰えが目立つ打撃
その一方、打撃面では衰えが深刻だと度々指摘されている。というもの、OPS(メジャーでよく用いられる代表的打撃指標)が4年連続で6割台に留まっているからだ。OPSは7割以上で平均以上といわれているため、ここ4年は平均以下に甘んじていることになる。特に2013年シーズンは規定打席に達した77人中74番目という低いOPSであった。このOPS低下の一因としては、長打(本塁打、三塁打、二塁打)の顕著な減少が考えられる。
また、高めの速い球に差し込まれる場面が目立つのも気がかりだ。ここ2年の内角高めの速球が来たときの打率を見ると.148とかなり低調な数値である。

とはいえ、明るい要素もある。左投手への打率、代打や途中出場での打率が高い点だ。
ヤンキースの監督であったジラルディが典型的な"左右病"(簡単に説明すれば左投手には右打者を起用するという考え方)であったため、左投手が先発の際、イチローはスタメンを外れることが多かった。しかし、実際のイチローは、2013年の対右投手.235 対左投手.321、2014年の対右投手.274 対左投手.333と、左投手からよく打っている。今回移籍したマーリンズの監督は43歳と若く、監督経験も浅いため、ヤンキース時代と違って左右関係なく柔軟に起用されることが期待される。
そして、イチローは代打や途中出場での打率が高い。昨シーズンは代打で.440、途中出場からでは.400という高打率を残した。これはひとえに、彼のどんな場面や状況でも決して準備を怠らない姿勢がこの好成績に繋がっているのだろう。

■チームで想定される役割
では、そんなイチローは今季、チームでどんな役割を期待されているのか。
イチローは「4番目の外野手」としての起用が濃厚だ。この理由は、マーリンズのレギュラー外野陣(イエリッチ、オズーナ、スタントン)がメジャー1と評価されるほど磐石であるためだ。
そのため、イチローの役割として主に考えられるのは、投手等への代打、途中からの守備要員、レギュラー外野手の休養時やケガ時でのスタメンなどである。

この事実がファンにとって心配なのは、どのくらいの打席数をイチローが与えられるかということである。メジャー通算3000本安打まであと156本に迫っているイチローにとっては、より多く打席数を与えられた方が良いからだ。
この答えをMLB公式サイトや有名データサイトの予想から考えると、300〜400打席ほどは与えられるのではないかと推測される。この打席数を踏まえ、近年のイチローの打率と照らし合わせると今シーズンは、80〜100本ほどのヒット数を残すのではないだろうか。このペースだと、来年か再来年には3000本安打を達成できるのではという期待が膨らむ。

■イチローの考え方
さて、控えに甘んじるという状況をイチロー自身はどう捉えているのだろう。
イチローは先日の会見では、「アメリカでは40歳を超えた野手にポジションを与えるということは、その時点でカットされる。年を見ただけで。そういう傾向があるので、4番手ということは何の問題もない。3番目(のレギュラー外野手)を望むのというのは、そんな自分はどうかなと思いますけどね」と語った。

イチロー自身は、4番手という立場に理解を示しているようだが、やはりファンはレギュラーで活躍する姿を期待してしまう。なぜなら彼は、出来ないと言われてきたことをいつも可能にしてきたからだ。メジャーに移籍してきた2001年、当初は酷評されながらも最終的にはMVPを取る大活躍をしたように。
かつて50歳まで現役を続けたいと語ったイチロー。老け込むのはまだ早い。
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(さのゆう)