行ってから気づくパリの真実 「美食の街」は正しくない?

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「日本で知られているパリは本当のパリじゃない」とか、「パリのイメージに憧れて暮らし始めてみたものの、現実との差がすごかった!」というのは、よくある話だ。そんな、短い旅行では見落としがちな、愛らしいフランスのギャップを、フランスと日本で発行されているフリーペーパー「ノアゼット・プレス」に聞いてみた。

■自由を愛するフランス人は排泄のタイミングも自由!? 
パリはよく犬のフンが落ちていて……という話は、正確にパリを語っていないかも。というのも犬に限らず、パリは人間用を含めて街全体がトイレなんです! 夜になってお酒が入れば、(時々女性も)至る所で用を足していますよ。さすがに大きい方はまれですが、アンモニア臭は基本パリの街とセットになっちゃってますね。

でもね、換気される屋外ならまだいいんです。地下鉄の駅構内でされると確実に鼻が曲がっちゃう。最悪なのが列車の中やエレベーターの中でのマーキングかな。以前、電車の中で立ちションしている人がいて、慣性の法則で車両に川ができていました。他の乗客は走って隣の車両に逃げたりして……ある意味平和です! 

■自分に甘く他人に厳しい!?
フランス人は人生を謳歌している……という話は、ちょっとフランス人をポジティブに捉え過ぎかも。彼らは常に自分中心なので、しばしば己と己がぶつかっちゃう。明らかに自分に非があっても言い逃れしたり、正しい指摘をして反論すると逆ギレされたり。高級靴屋のセールで列ができていた時に、「私は昨日も来て入れなかったから今日は1番で入れて」と主張していたおばさんもいましたね……。空気を読み過ぎてしまう日本も息がつまるけど、全員が自分の気持ちを貫くフランスも大変。利害関係がないと、すごく優しい人たちなんですけど(笑)。

■主食は冷凍食品!?
パリは美食の街だ……という話も少し言葉足らずかも。「パリは美食もある街だ」とするのが正しいですね。もちろん素晴らしいプレゼンテーションと味を提供してくれるレストランは多いですが、選ばないで入ると大抵はまずくて高い店にぶち当たってしまうことも多いです。

家庭料理について言えば、パリっ子は冷凍食品が大好き! 最近、ピカールというフランスの冷凍食品専門店が、大手小売イオンと提携して日本に進出しましたけど、それら冷凍食品をストックしなければいけないので、日本と比べて大きな冷凍庫を持つ家は多いです。フランス人は結婚しても、夫婦はそれぞれ自立した意識を持ち、共働き家庭が多いです。そのため食事を簡単に済ませられる冷凍食品は必需品なんです。パリっ子は雑誌のように、オシャレに食事するというより、基本的に電子レンジでチンですね。

ただし、その“電子レンジでチン”が一筋縄じゃないんです! ピカールでは、すしも売られているんですが、当然ネタもシャリも冷凍されています。調理法を見たら「1分30秒温めて、その後冷蔵庫で15分冷やす」と書かれていて……そう来るか! って思いましたよ。

■フランス人はワインを飲まない!?
フランス人は常にワインを傾けている……という話もちょっとズレてるかも。カフェやバーに入ったらフランス人「とりあえずビール」です。店員さん大助かり! 若者ほど「とりあえずビール」率は高いです。ワインも「詳しくないけど、どこかで聞いた有名銘柄だから、とりあえず頼もう」という感じかな。ボルドーがとか、ブルゴーニュがとか、この村が、畑が……というのは気にしていません。というか知らない人が多数です。じつはフランス北部や北東部はビール製造が盛んで、そこで生産されたビールが、それなりに飲まれています。

■パリっ子は親切!?
パリっ子は冷たい……という話は誤解です。もちろん田舎の親切さと比較したら、パリの人の行動は冷たく映るかもしれません。それでもパリっ子は、東京など日本の都会と比べて、人情味にあふれていますよ。基本、挨拶やお礼はちゃんと言いますし、弱者には優しいです。階段で大きな荷物やベビーカーを抱えて困っていると、見ず知らずの人が一緒に上まで上げてくれます。電車で年配者が乗ったら、積極的に席を譲ってくれます。知らない相手でも目が合うとニコリと笑ったり、気楽に話して冗談を言い合います。電車でフランス語の参考書を読んでいたら、隣の人が発音を直してくれたこともありました。人と人の距離が近いんです。

フランスは良くも悪くも周囲を気にせず、自分らしく生きられる国。意外なパリはまだまだあるので、ノアゼット・プレスで、さらに発見してみてください! 
(加藤亨延)