大島花子『柿の木坂』¥2,800(AQUA RECORDS)

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「うえをむぅういて〜あ〜るぅこぉおおう〜♪」、いい感じに酔っぱらって、駅から家に向かって歩いていると、筆者がなぜか口ずさんでしまう曲、坂本九さんの「上を向いて歩こう」。この曲が誕生したのは1963年。歌っていた坂本九さんは筆者の世代ではなくむしろ親世代なのだが、その時代を生きていなくとも、筆者と同じようにこの曲に愛着がある方は多いだろう。

実際、これまでにさまざまなアーティストがこの曲をカヴァーしている。たとえば、桑田佳祐、坂本龍一、トータス松本、徳永英明、宇多田ヒカル、平井堅……と挙げればキリがないほど。また当時、全米ビルボード第1位という快挙を成し遂げた事もあり、海外ではダイアナ・キング、ボビー・コールドウェル、タック&パティ他、アジア以外の各国でも、これまた数え切れないほどカヴァーされている(マイケル・ジャクソンも来日の際に児童施設にて歌ったとか)。

また2011年に映画「コクリコ坂から」では、坂本九さんが歌う「上を向いて歩こう」が挿入歌として使われ、この年には、九さん生誕70年を記念して復刻版CDもリリースされた。
そんな坂本九さんの血を受け継いだ女性シンガーが今、注目を集めている。

【大島花子さんとは】



彼女の名前は、大島花子。坂本九さんと妻で女優の柏木由紀子さんの長女である。彼女は東洋英和女学院大学入学と同時に、1992年ミュージカル「大草原の小さな家」で初舞台。その後、舞台を中心に活動するも「自分の言葉」で歌いたいと歌手を志す。

みずから曲を作り、ライブ活動をつづけながら、途中社会人経験なども経て、父・坂本九さんの「見上げてごらん夜の星を」で2003年メジャーデビュー。アコースティックにこだわるライブを続けてきた。
また2004年には、母で女優の柏木由紀子さんと、妹で元タカラジェンヌであり女優の舞坂ゆき子さんと家族ユニット「ママ・エ・セフィーユ(母と娘たち)」を立ち上げ、坂本九さんの往年のヒット曲を中心に、工夫を凝らしオリジナリティあふれるライブを展開。会場は毎回多くの人であふれかえるという。

【ママとしての大島花子さん】


また、担当したラジオ番組をきっかけに食についての知識を深め、IPA植物療法士 ジュニアベジタブルフルーツマイスター 食育インストラクターの資格を取得。2009年には長男を出産、その後は親子ライブを精力的に開催。東日本大震災が起こった時には被災した生後6カ月の子供を持つ友人のために「Lumiere」という楽曲をつくって贈り、売上は被災地の女性・妊産婦支援活動を支援するジョイセフに寄付された。他にもピンクリボン、たまひとファミリーパークなど女性の視点にたったイベントに出演。

父・坂本九の意志をつぎ、障がい者イベントの出演や講演活動、手話での歌唱なども行っている。こうした彼女の生き方に共感する女性も多く、またテレビや雑誌等のメディアでは楽曲だけではないその魅力を取り上げる特集が組まれることも。

【満を持してのファーストアルバム】



そして、昨年12月10日にファン待望のファーストアルバム「柿の木坂」がリリースされた。これまでアコースティックにこだわって音楽活動を行ってきた彼女ならではの想いから、完全アナログ録音。自身の作詞作曲の「柿の木坂」の他に、父・坂本九さん作詞作曲の「親父」、忌野清志郎さん日本語詞による「イマジン」、「一本の鉛筆」「岸壁の母」等が収録され、参加メンバーは高田漣、柏木広樹、笹子重治ら豪華なアーティストが集結、幅広い層の方々が楽しめる仕上がりになっている。

【「癒される!」の声が】


坂本九さんの声、そしてスピリットを受け継ぎ、一児の母でもある彼女の声に癒されるファンは多い。ライブを訪れた客は「透き通るような声に驚きました。目頭が熱くなるほどきれいな声でした」「優しい声に癒されて、ライブの合間のお話も楽しくて元気が出ます」とコメント。筆者が参加したライブでは、隣の男性が目をつむって感慨深げに聞き入っている様子が印象的だった。

先月リリースされたアルバムのイラストを手がけたヤマザキマリさん(『テルマエロマエ』)は、彼女の声についてブログでこのように紹介している。

花子さんの声には九ちゃんが醸し出していたあの暖かみや深さがそのまま感じられるだけでなく、優しい聖母の子守唄のような、「いつも見ていてあげるから、安心して」的な安堵を醸してくれる威力があります。私はライブで彼女の歌を間近から聞き、自分の中で毛羽だってささくれてたものが、魔法の柔軟剤でふわーっと溶かされたような感覚を覚えて泣き出しそうになってしまいました(ヤマザキマリさんブログより抜粋)。
1月24日には東京、恵比寿のアート・フレンズ・カフェにてCDリリース記念ライブが行われる予定だ。
今月から年度末にかけて、何かと忙しい方も多いこの時期、1日の終わりに彼女の声でほっこり癒されてみてはいかがだろうか?
(mic)

・大島花子:公式ウェブサイト