ドイツの守護神ノイヤー　　（撮影：フォート・キシモト）

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　ノックアウトステージの戦いは、グループステージと明らかにレベルが違う。ベスト8を巡る争いは、実に５試合が延長戦へもつれた。

　ドイツ対アルジェリアは、互いの攻撃性能が正面からぶつかり合う名勝負だった。延長突入後に２点を喫したアメリカが、ベルギーに最後まで食らいついたサバイバルも、見ごたえ十分の攻防だった。

　準々決勝になると、各国のギアはさらに上がっていく。開催国ブラジルに挑むコロンビアは、グループステージとまるで違う表情を見せた。球際の激しさは、日本戦の非ではない。余裕たっぷりのコロンビアに、我々の代表チームはひねられたことが分かる。

　その一方で、期待外れのゲームもある。たとえば、ラウンド16のアルゼンチン対スイスは、延長後半のラスト5分強にすべてが凝縮さされた。それまでの１１５分は、長すぎる前置きだった。

　7月４日に行われたフランス対ドイツ戦も、熱戦とは呼べない内容だった。前半12分にフンメルスが先制点を挙げ、ドイツがリードを奪う。ゲームが動くきっかけが生まれたものの、フランスの反撃は散発なのである。ドイツの攻撃も、精度と迫力が物足りない。

　ドイツの守護神ノイヤーの攻守がゲームを引き締めたが、準々決勝にふさわしい盛り上がりに欠けた一戦である。4年後の大会で両チームが再び合いまみえることになっても、この試合が引き合いに出されることはないだろう。記憶には残らないゲームだ。

　そういう試合を落とさないのが、実はドイツの強みである。優勝するためには、１か月で７試合を戦わなければならない。観衆の記憶に刻まれる試合を、７つ揃えるのはほとんど不可能だ。現実的でもない。調子の波を受け入れつつ、勝ち上がっていくのが強豪国の姿である。

　4年前の覇者スペインは、ノックアウトステージの４試合すべてを１対０で乗り切った。06年大会を制したイタリアは、7試合のうち５試合が無失点ゲームである。チーム全体のバイオリズムがピークでなくとも、勝利は逃さない。そのためには、ゴールを奪うと同時に、失点をしないことが大切だ。最少得点の１対０で勝利できるチームは強い。

　そして、低調なゲームを繰り返さないチームも。数日間のインターバルで、それも疲労の蓄積するノックアウトステージで調子を取り戻せるチームが、タイトルを引き寄せるのである。