スタジオぴえろ創業者が明かすアニメ業界の人材育成方法
『うる星やつら』『幽☆遊☆白書』『NARUTO―ナルト―』…子どもの頃、楽しみに見ていたという人は多いだろう。これらのヒット作品をアニメ化したのが、アニメ制作会社「ぴえろ」だ。
創業者である布川郁司氏が見てきたアニメ制作の現場、業界とはどのようなものなのだろうか。
『クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか? 愛されるコンテンツを生むスタジオの秘密』(布川郁司/著、高田明美/イラスト、日経BP社/刊)では、30年経っても愛される『魔法の天使クリィミーマミ』はいかにして誕生したか? 制作のひみつからアニメビジネスの舞台裏とは? 注目を集めるアニメ業界についてスタジオぴえろの創業者・布川氏が語り尽くす。ここでは、その業界の裏側を少しだけ紹介しよう。
今、日本で劇場公開されるアニメ作品は年間20本以上にもなる。
テレビよりもクオリティが求められる劇場アニメを絵の面から支えているのが「スーパーアニメーター」といわれる人たちだ。一つの作品を作るために集められるチームには、プロダクションの社員もいればフリーランサーもいる。スタッフワークというのは、この作品だったらこの人を入れよう、この作品には外部のこの会社と組もう、とフレキシブルにやっていかなければならない。こうしてできた横のつながりが、全体として効率よく質の高い作品を作っていくという。
多くのプロダクションが「うちこそがヒットを飛ばすぞ!」という気持ちで競い合っているが、実際に絵を描いて、動画を描いている現場は、横のつながりでお互い協力しながらやりくりしている。なので、アニメーターはプロダクションをあちこち渡り歩いたり、他社の仕事を受けたり、という人が多い。そう渡り歩く理由の一つとして、自分のモチベーションを上げたいと思うからでもある。例えば、映画『風の谷のナウシカ』でオームの大群を描いたアニメーターの吉田忠勝さんは今、スタジオぴえろにいる。75歳の今も現役アニメーターとして活躍中だ。
若い人たちもベテランアニメーターから良い影響を受け、同じ作品に加わることによって、意識も変わり、力もついてくる。力のあるアニメーターが後進に良い影響を与え、人が育つ。アニメ業界はそうやって発展してきたのだ。
プロダクションは基本的に、自分で仕事を作るのではなく外部からもらう。もし、自分のお金で何もかもできれば、誰にも文句は言われない。ベストは、そのような作品作りだろう。自分がスポンサーになり、自分のテレビ局で放映する。映画も自分が作りたいものを作って、自分の映画会社で公開する。このようなことができたら、クリエーターの天国になる。
そんなことができているアニメ制作は世界でたった一社しかない。ディズニーだ。ディズニーには、世界一のスタジオがあり、テレビの「ディズニーチャンネル」があり、映画の配給会社もある。自前のインフラか全てあって、自分たちの作ったものをそれに乗せられるのだ。
しかし、ディズニーと同じことをしようと思っても、日本では難しい。まず、映画会社が国内にしかインフラを持っていない。なので、日本のアニメのプロダクションがディズニーと同じことをしようとしても無理なのだ。しかし、インターネットやスマートフォンなどが、アニメ作品の流通のインフラとして活躍する可能性も十分ある。コンテンツをどうやってメディア展開するかという意味では、まだまだ工夫の余地はあるということだ。
良いものを作るにはお金がかかる。布川氏が初めて手掛けた『ニルスのふしぎな旅』は4000万円もの赤字を出し、それからも何度も会社を潰しかけたという。良いものを作り、会社も存続させる。そのために、地道なやりくりによって、ジレンマを乗り越えてきた。アニメ業界と制作会社の裏側を垣間見ることのできる一冊だ。
(新刊JP編集部)
創業者である布川郁司氏が見てきたアニメ制作の現場、業界とはどのようなものなのだろうか。
『クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか? 愛されるコンテンツを生むスタジオの秘密』(布川郁司/著、高田明美/イラスト、日経BP社/刊)では、30年経っても愛される『魔法の天使クリィミーマミ』はいかにして誕生したか? 制作のひみつからアニメビジネスの舞台裏とは? 注目を集めるアニメ業界についてスタジオぴえろの創業者・布川氏が語り尽くす。ここでは、その業界の裏側を少しだけ紹介しよう。
テレビよりもクオリティが求められる劇場アニメを絵の面から支えているのが「スーパーアニメーター」といわれる人たちだ。一つの作品を作るために集められるチームには、プロダクションの社員もいればフリーランサーもいる。スタッフワークというのは、この作品だったらこの人を入れよう、この作品には外部のこの会社と組もう、とフレキシブルにやっていかなければならない。こうしてできた横のつながりが、全体として効率よく質の高い作品を作っていくという。
多くのプロダクションが「うちこそがヒットを飛ばすぞ!」という気持ちで競い合っているが、実際に絵を描いて、動画を描いている現場は、横のつながりでお互い協力しながらやりくりしている。なので、アニメーターはプロダクションをあちこち渡り歩いたり、他社の仕事を受けたり、という人が多い。そう渡り歩く理由の一つとして、自分のモチベーションを上げたいと思うからでもある。例えば、映画『風の谷のナウシカ』でオームの大群を描いたアニメーターの吉田忠勝さんは今、スタジオぴえろにいる。75歳の今も現役アニメーターとして活躍中だ。
若い人たちもベテランアニメーターから良い影響を受け、同じ作品に加わることによって、意識も変わり、力もついてくる。力のあるアニメーターが後進に良い影響を与え、人が育つ。アニメ業界はそうやって発展してきたのだ。
プロダクションは基本的に、自分で仕事を作るのではなく外部からもらう。もし、自分のお金で何もかもできれば、誰にも文句は言われない。ベストは、そのような作品作りだろう。自分がスポンサーになり、自分のテレビ局で放映する。映画も自分が作りたいものを作って、自分の映画会社で公開する。このようなことができたら、クリエーターの天国になる。
そんなことができているアニメ制作は世界でたった一社しかない。ディズニーだ。ディズニーには、世界一のスタジオがあり、テレビの「ディズニーチャンネル」があり、映画の配給会社もある。自前のインフラか全てあって、自分たちの作ったものをそれに乗せられるのだ。
しかし、ディズニーと同じことをしようと思っても、日本では難しい。まず、映画会社が国内にしかインフラを持っていない。なので、日本のアニメのプロダクションがディズニーと同じことをしようとしても無理なのだ。しかし、インターネットやスマートフォンなどが、アニメ作品の流通のインフラとして活躍する可能性も十分ある。コンテンツをどうやってメディア展開するかという意味では、まだまだ工夫の余地はあるということだ。
良いものを作るにはお金がかかる。布川氏が初めて手掛けた『ニルスのふしぎな旅』は4000万円もの赤字を出し、それからも何度も会社を潰しかけたという。良いものを作り、会社も存続させる。そのために、地道なやりくりによって、ジレンマを乗り越えてきた。アニメ業界と制作会社の裏側を垣間見ることのできる一冊だ。
(新刊JP編集部)