社会性育む“サード・プレイス”とは?

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 今、住んでいる街に自分の居場所はあるだろうか。それも家や学校や職場とはまた別の居場所。その場にいるのが楽しい、楽な気持ちになる場所だ。そんな居場所をもっているだろうか。

 『若者のためのまちづくり』(服部圭郎/著、岩波書店/刊)は、自転車に安心して乗れたり、創造性や活動性が存分に発揮できるような、若者のためのまちづくりについて考える一冊だ。

 家でもなく、学校や会社でもなく、誰にも強要されずに自分の自発的な意思で、そこに行く、そこにいるような場所を「サード・プレイス」と呼ぶ。ちなみにファースト・プレイスは「家」、セカンド・プレイスは「職場」や「学校」にあたる。
 なぜ、この「サード・プレイス」が重要なのだろうか。
 家族であれば親として、仕事であれば労働者もしくは経営者として、大人はそれなりに責任をもって行動しなくてはならない束縛がある。そのような責任から解放されて、自分自身を取り戻す機会を提供してくれる場所が「サード・プレイス」となる。サラリーマンのおじさんが居酒屋に行ったり、草野球に行ったりするのには、それなりの意味があるのだ。世のお父さん達は、家や会社から解放された自分の居場所として、気が合う仲間と会話を楽しむために、「サード・プレイス」としての居酒屋に行っているのだ。
 もちろん大人だけでなく、子どもたちにとっても「サード・プレイス」は重要な場所だ。例えば、高校生なら、高校のクラブ、塾、アルバイトがそれにあたるだろう。高校時代から、家と学校以外の自分の場所を確保することで、自らの社会性を育てていくことができるはずだ。

 「サード・プレイス」は、気楽なものであり、その場に行くのに明確な目的がないことが望ましい。つまり、その場にいる目的は、その場所に行くことが目的というようなところなのだ。
 大人も子どもも何かしらの責任を負い、ストレスが溜まったり、疲れてしまうことがあるものだ。今、住んでいる街での生活をより豊かにするためにも、「サード・プレイス」があるというのは、大切なことなのだろう。
(新刊JP編集部)