■第32節vs.浦和レッズ 2012年11月17日(土)14:00〜@埼玉スタジアム2002

 もはや「宿敵」と目して差し支えない相手であり、先方がどう思おうが関係なく燃え上がるチームであり、もちろんミシャ・柏木陽介・槙野智章といった広島関係者が多く在籍し、来季にも誰ぞピックアップしていこうという話も聞こえてくるチーム、それが浦和。

 昨年ペトロビッチ別人を解任し、堀暫定監督の下でリーグ残留を何とか決め、チーム崩壊寸前の状態からここまで3位という成績を残したのはペトロビッチ本物の就任に寄るところ大であり。広島サポにとって「サッカー大国ドイツの空気を吸うだけで、僕は高く跳べると思ってたのかなあ…」の横断幕でおなじみ・ユダこと槙野智章の活躍もあり、前節までリーグ優勝の可能性を残していたチーム。
 
 ミシャが6シーズン掛けて育ててきた広島と、1シーズン目ながら3位につけた浦和。選手個々のクオリティはやはり高いものがありますし、かといって彼が本当に浦和の内部で評価されているのか、評価されているならなぜ1年契約しか提示されないのか、そもそも岡田武史・西野朗といった監督の3番手だという話であり、そんな状況で若手を伸ばせといっても無理な話だよな、その辺もいろいろ大変そうだなと思ったり。これは蛇足。
 
 ちょうどアニメも見ているところなので、ジョナサン・ジョースターの身体を乗っ取ってザ・ワールドを手に入れたDIOみたいな相手だと思っています(※個人の感想)。なので、スタープラチナたる広島がきっちり叩き潰してやりたい。が、なんせ相手はDIOなので強いわけです。こちらのやることはバレているし、相手はリーグ優勝がほぼなくなりACLにモチベーションを切り替えたとはいってもショックはあろうし、リーグ優勝を意識して硬くなっている広島に一泡吹かせてやろうという気持ちは大いにあるでしょう。
 
 とはいえ、ザ・ワールドと違って浦和は時間を止めることはできませんし、ナイフを四方八方にぶっ放したりロードローラーをぶん投げてきたりもしません。同様に広島も「5秒の時点でオレが時間を止めた」ってわけにもいきません。地道に、これまでやってきたことを90分繰り返すほかないでしょう。
 
 相手が広島のことをわかっているのと同様、広島も浦和のことは十分に承知しています。どこを潰せば相手が困るのか、個人能力が高いとはいってもミドルレンジからどれほど狙えるのか、スペースを消した状態でどれほどドリブルで仕掛けられるのか、5枚に対して5枚でそろえられたときにどれほど振りきれるのか、そのあたりは広島が抱えている課題と同質のものがあるかなと。

 広島に関しては、優位に立てるのはサイドアタッカーの質だと思います。ミキッチvs.梅崎、清水航平vs.平川だと、いずれも広島側に分があると見ます。特にミキッチのサイドは重要で、ここの差し合いで梅崎を上回り続ければ同サイドの槙野はそうそう攻撃参加に出て来られず、片肺飛行に追い込むことは可能と思いますし、森脇良太が上がるスペースもできてくると思います。

 逆に、先に仕掛けられて押し込まれるなら、同様の事情で差し込まれるでしょう。なので、広島はいかにしてサイドアタッカーに良い形でボールを回せるか、そのためにどういうストーリーを作っていくか、今シーズンやってきたことの集大成が問われるかなと。

 やり方が似ている両チームではありますが、ミシャ時代と比べて現在の広島に大きな違いがあるのは選手の質です。リベロに千葉和彦という若く知性的な選手が入ったこと(昨年のレギュラー中島浩司をサブに追いやった)、DFの選手層が厚くなったこと(ファン・ソッコ、塩谷司の加入)、ミシャがほとんどチャンスを与えなかった清水航平が大ブレイクしたこと(≒山岸智の復帰で選手層アップ)、李忠成の存在で窮屈な思いをしていた佐藤寿人が点を取ることに集中できていること。もちろん、最も大きなポイントはフィジカルコーチの加入により、負傷欠場する選手が著しく減ったというところでありましょう。
 
 個人として浦和が優っている部分もありますが、前述のようにサイドに関しては広島に優位性がありますし、ボランチから長短のボールが出るというところも広島のほうが優位でしょう。個人の総合力が高い浦和に対し、広島はウィークポイントをカバーし、ストロングポイントのみで勝負するやり方でチーム力を積み上げてきた。
 
 むろん、セットプレー一発でやられることもあるでしょうし、マルシオ・リシャルデスのように個人で何かをしてくる選手もいます。浦和の攻撃は人数がそろってしまうとかなり危険なので、先手を取るほうがいいと思いますが、それができない場合は広島の守備が振り回されることも考えられます。
 
 J1どのチーム相手でもそうではありますが、こと浦和戦に関しては本当にわからない。驚くような大勝ができるかもしれないし、信じがたい大敗を喫する可能性もあり得る。双方の実力は拮抗していて、やり方も熟知しており、千日戦争の様相を呈するのか、ピンと張った糸が切れた瞬間にドドっと膠着が崩れるのか、フタを開けてみないとわからない。エンターテインメントとして最高の試合になるかはともかく、サッカー的に最も興味深いカードになるのは必定でしょう。
 
 こうした試合を迎えられることを、純粋に幸せに思います。どちらが勝とうとフェアに終えたいものです。