また、本場欧州への移籍に関してもう一つ大事だと思われることは、出来る限り若いうちに挑戦した方が良いということです。少なくとも若いうちに一度は遠征や練習、或いはキャンプへの参加を兼ねて、本場の空気を吸っておくことが肝要と私は考えます。若いうちの方が環境への適応能力が高く、学習能力も旺盛だからという理由の他にも、若いうちに色々な世界があることを肌で知っておくことが、選手のみならず人間としての幅を作るという理由が挙げられます。「可愛い子には旅をさせろ」という諺は、まさにそういう意味で先人達が紡ぎだした金言なのです。

現在本場でプレーをする日本人選手ですが、前述の8人の他にアウグスブルグの細貝選手、ハイデュク・スプリトの伊野波選手、サウサンプトンの李選手、そしてフィテッセのハーフナー選手らが代表のレギュラー争いに加わろうとしていますし、ボルシア・メンヘングラードバッハの大津選手、アーセナルの宮市選手、バイエルンの宇佐美選手、セヴィージャの指宿選手、そしてボーフムの乾選手らが五輪代表ばかりではなくフル代表入りを虎視眈々と狙っています。こうした厳しい環境の中で上を目指す日本人選手達の存在は、国内の多くのJリーガー全ての存在に匹敵するほどのインパクトを持っていると言えますし、その数は多ければ多いほど良いというのが私の理論です。その根拠はワールドカップ優勝5回を誇る王国ブラジルが、本場欧州を始め世界中に何百人という単位で選手を供給しているという現実と、イタリアとイングランドを除くフットボール強国の代表選手の殆どが自国以外の欧州トップリーグでプレーをしているという事実に基いています。日本も現在の2倍から3倍の数の選手が欧州のトップリーグでプレーするようになった時に、自然とワールドカップ優勝に手が届くようになるのではないでしょうか。

本欧州の各国リーグは、いよいよ後半戦に突入しましたが、25人全ての日本人選手が出来る限り多く試合に出場し、香川選手や長友選手に負けないような胸のすく活躍を見せてくれることを願って止みません。そして、そんな彼らに刺激を受けた国内でプレーする日本人選手が、我も我もとばかりに欧州を目指すことを期待致します。