パラグアイのスローインで再開されたゲームは、クロスボールを川島がキャッチすることでひとまず途切れる。川島は内田へフィードし、内田から細貝へボールがわたる。

パラグアイはパスカットを狙っていた。中村からボールを奪ったシーンと同じように、細貝に3人の選手が食いつく。細貝は中澤へボールを下げるが、ここにもサンタクルスのチェイシングが及んでいた。中澤はダイレクトで長友へつなごうとするが、精度を失ったボールはタッチラインを割ってしまう。

パラグアイが圧力を仕掛けてきたのは、日本の選手も感じていたはずである。ただ、自陣ゴール前付近での攻防が続いているために、なかなかゲームを落ち着かせることができなかった。

流れを変えるチャンスはあった。19分である。右サイドのロングスローからゴール前へ迫られたが、こぼれ球を松井が拾う。森本、本田、内田の3人が反応し、前線へランニングしていく。

残念だったのは松井の判断だ。ドリブルで相手選手を抜き去り、二人目も交わそうとして自陣左サイドでボールを失ってしまうのである。

松井にはパスコースがあった。しかも、ゲームはパラグアイのペースで進んでいる。ここはもう、確実なつなぎを心がけるべきだったはずだ。自陣でドリブルをしてボールを失うのは、シナリオとして最悪である。

技術的なミスと判断のミスは、さらに折り重なっていく。21分、川島がゴールキックを栗原につなぐ。栗原は左サイドへ持ち出し、長友へショートパスを送るが、タイミングがまったく合わずに相手のスローインとなってしまう。ここから日本は一度もボールを奪うことができず、22分のサンタクロスの右足ボレーへつながっていくのである。

原監督代行が攻撃を意識した4−2−3−1の布陣を敷いたことで、パラグアイ戦はそれなりの満足感を得ることのできたゲームとなっている。試合後の選手の表情も硬くはなかったし、スタンドからも拍手が沸き上がっていた。しかしながら、ゲームのディティールにこだわっていくと、物足りなさは増大するばかりである。

攻撃的か、守備的かといった議論だけでなく、細部にこだわる視点を持っていきたい。拮抗したゲームを分けるのは、間違いなくディティールなのである。(了)

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