インタビュー:辻詩音「“ほしいもの”をもらっても、気持ちが無いと満足できない」
今年8月にサードシングル「M/elody」を発売し、8月から9月に掛けて全国32の都道府県でフリーライブ「夏休みの君へツアー2009」を敢行した辻詩音。10月28日には、ニューシングル「ほしいもの」を発売。同曲は10月31日恵比寿ガーデンシネマ、新宿バルト9ほか全国ロードショー、小雪主演による映画「わたし出すわ」の主題歌に起用されている。
――8月から9月に掛けて「夏休みの君へツアー」で全国各地を回られてましたね。
辻詩音(以降、辻):32都道府県回りました(笑)。――それは、どのような理由から始められたんですか?
辻:最初に、日本を全国制覇したいというのがあったんです。この前出した「M/elody」というシングルが「やりたいことがみつからない」とか「何をすればいいのか分からない」という人達に向けてメッセージを込めた曲なので、この夏休みにライブを観て、何かを始める切っ掛けになればいいなと思ってツアーを始めました。――やり終えてみてどうですか?
辻:かなりの充実感でいっぱいです(笑)。本当に場所ごとに反応が違って。1日に2県も回らなきゃいけない、滞在時間が4時間とかの所もあったりしたんですけど、普段ミュージシャンがツアーに行かないような所にも結構行けたので。みんながすごく喜んでくれたりすると、行って良かったなと思いました。――やる前と、やった後とで、何か新たに発見したり変化を感じるようなことはありましたか?
辻:やる前は、何かが出来るようになったとかで充実したと感じると思っていたんですけど、終わった後に思ったのは、来てくれた人とスタッフの人に本当にありがとうという感謝の気持ちでいっぱいになって。それって今まで分からなかったというか、テレビとかを見ていると、「皆さんに感謝します」とか、みんなよく言ってるけど、「本当かなぁ?」と思っていたんです。だけど、本当にそうなんだなと思ったので、びっくりしました(笑)。――ギター1本で1人でも楽曲の世界を表現できるのは、ある意味ミュージシャンとして理想の姿だと思います。こうして全国各地でライブ経験を重ねると、大抵どんなトラブルにも対応できるような度胸がつきますよね。
辻:そうかもしれない。やっぱり気持ち的な自信は、ちょっとつきました。――ライブ以外に、楽しみはありましたか?
辻:やっぱり地方の感じを一番味わうのは、ご飯なので(笑)。ご飯の時間は楽しかったですね。ご飯を食べた後にお店のおばちゃんが「バナナを持って帰りなさい」って人数分くれたり、地方ならではの優しさ、温かさがありました。横浜育ちで東京に近いから、こんなに普通に歩いているだけで、人って話しかけてくるんだ!というのに結構びっくりして(笑)。今度一人旅をするとしたら、こういう温かい所に行きたいなと思いました。――夏は好きですか?
辻:嫌いです(笑)。――冬の方が好きですか?
辻:嫌いです(笑)。――春と秋が好きですか?
辻:そうですね、暑いのも寒いのもダメなので。本当にやる前はバテる、絶対に倒れると思っていたんですけど、意外と大丈夫でしたね。――4枚目のシングルとなる「ほしいもの」は、映画「わたし出すわ」の主題歌として初めて書き下ろされた曲ですが、映画を観てどんな感想をもたれましたか?
辻:初めて映画を観た時に、小雪さん演じる摩耶がすごく不器用で寂しがり屋だなって感じて。自分もそこに共感して、入り込んでから曲を作っていったんですね。「ほしいもの」って、例えばどんなに「ほしいもの」を人からもらったとしても、そこに気持ちが無いと、人間って100%は満足できないんだなと思って。そういう当たり前なんだけど、なかなか難しい、人との愛を初めて書きました。――白紙状態からではなく、与えられたテーマに対して初めて歌詞を書き下ろしてみて如何でしたか?
辻:デビュー前からずっと「映画の主題歌を歌いたい」と言っていて。デビュー前って、いっぱい曲を書かなきゃいけなかったので、好きな映画の最後にどんな曲が掛かって欲しいとか、勝手に曲を作ってたんですよ(笑)。お話を頂いた時に「そのやり方でやればいいんだ」と思って。準備は出来ていたので、そんなに戸惑わなかったんです。でも、出来上がったものに対して監督が「全然違う」となったらダメだし、と思って2曲書いて、監督に選んでもらった感じです。