ネットに転がるゴミ情報を信じた 「バンキシャ!」誤報事件は氷山の一角か”【岸博幸コラム】
日テレの久保社長が辞任しました。「真相報道バンキシャ!」という番組が、インターネット上の情報提供サイトに寄せられた情報を元に岐阜県の裏金疑惑を取材して放送したところ、情報提供社が虚偽の証言を行っていたことが明らかになり、その責任を取った形ですが、この辞任をどう考えるべきでしょうか。
私は、久保社長は日本のジャーナリズムの自壊を戒め、これ以上の崩壊を防ぐために自らを犠牲にしたと考えています。日テレのみならずすべてのマスメディアの関係者がこの辞任を重く受け止めなくては、久保社長の辞任は犬死にになるし、日本のジャーナリズムの再生もあり得ないと思います。
それと比べて今回の「バンキシャ!」事件は、放送局のコアコンピタンスに関わる次元での深刻な問題ではないでしょうか。インターネットは未だ“情報のゴミ溜め”であって社会の公器たり得ないという認識なしに、そこに転がっていた情報を安直に信用して、裏取りも不十分なままで放送したと言わざるを得ず、放送局のコアコンピタンスである制作力の構成要素である取材/情報収集能力が大きく低下していることを示しているからです。
だからこそ、この問題で日テレのみを非難すべきではないと思います。私はインターネットのヘビーユーザーであるとともに、毎朝各局のワイドショーを見ていますが、インターネット上のポータルサイトに出ていた話題が、翌日のワイドショーで報道されるというのに何度も出くわしています。単純にインターネットで先に報じられた場合も多いのでしょうが、インターネットをネタ元にして報道しているケースもあるのではないでしょうか。
もちろん、インターネットを情報源として活用すべきでないと言う気はありません。私自身、情報収集の道具として最大限活用しています。ただ、ジャーナリズムの観点からは、そこで得た情報を活用するにはしっかりとした精査が必要なはずです。
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