――そうなんですか。日本叩きだと思っていました。なるほど。ただ、スピード社の水着のように一人で着ることができない、着るのに30分かかると聞くと、「お前、宇宙服かい?」って。

「ハハハハ。そうなんですけど、きっと実際に選手の意見などを取り入れて開発されたものだと思うんです。」

――最終的に競技用水着は、その競技特性、競技時間に合わせた作りになり、スタート台の後ろに補助の人がいて、そこで着衣するようになるかもしれないですね。

「凄くきついのに、動けるそうですよ。今までの水着は、きついと動くのが大変になるからフルスーツにしない人もいたんです。水着って、スパッツタイプだとか、くるぶしまであるものだとか好みでもあるんですよね。」

――昔は競技水着は、ビキニみたいに小さかった頃もあるのに。凄く変化していますね。

「それだけ性能が良くなっているという事だと思います。ただ、その違いはトップ選手にしか分からないんじゃないでしょうか。私が今、着ても分からないと思います。

だから、もう水着問題は決定まで待つしかなくて、その間、選手が不安になることが一番心配です。水着を着ることに関して、疑心暗鬼になったり、そんな選手の心情を察すると、心が痛くなります。とにかく、今、出来ることに専念する――、それぐらいの気持ちでいてほしいです」

――今日は色々とありがとうございました。最後に二つだけ質問させていただいてもいいですか。

「はい」

――オリンピックとは、岩崎さんの人生でどのような意味を持っていますか。

「成長させてくれた場所だと思います。自分を大きくしてくれました」

――成長した場所がオリンピックというは、本当に素晴らしいですね。塾とよか予備校でなくて。

「いえ、そんな。私もしっかり勉強しておけばって、本当によく思うんです。米国の大学なんて、学業と両立でないと、練習してはならないということもあるくらいですから」

――では、最後の質問です。大変、不躾な質問で申し訳ないと思うのですが、尋ねさせてください。私は25歳のときに、バルセロナ・オリンピックで優勝した岩崎さんの姿をTVで拝見させていただきました。そして、岩崎さんの「今まで生きてきたなかで、一番幸せです」という言葉を聞きました。その時、『この子、中学2年生でこんなこと言ったら、その後の人生どうするんだろう』と感じたんです。バルセロナ以降を振り返って、幸せだって感じたことはありますよね?

「アトランタに出たことは、バルセロナの金と同じくらい嬉しいことでしたし。水泳を引退してからも、普段の生活のなかで一番とか、順位なんてつけることはできないのですが、そんな時間のなかで、普通にご飯を食べて美味しいと嬉しいですし。人との出会い、新しい物事の発見も嬉しいです。私は周りの方に恵まれていて、それも本当に嬉しい。これは取材だから言っていることでなくて、いつもそういう気持ちで過ごしています」

――質問をしておきながら何なのですが、この質問をして良いものなのか、私自身がもっと躊躇するかと思っていたのですが、お話を伺っている限り、そのような答が返ってくると確信して、尋ねさせていただきました。

「やっぱり、アトランタぐらいまでは凄く嫌だったし。あの言葉が出てくるのも本当に嫌だったんです。でも、今会う方々があの言葉を覚えてくださっていて、すごく幸せだと思います」