ロシア・北朝鮮兵5万人集結…“死を恐れぬ”北朝鮮兵 自ら志願「捨て駒」でも戦う理由 専門家「金正恩にとっては大きな賭け」
ロシア軍が北朝鮮の兵士を含む5万人を集結させ、大規模攻勢に出るとの情報があるロシア西部のクルスク州。ウクライナ軍が越境攻撃を続ける中、アメリカ政府は12日、北朝鮮兵士の戦闘参加を初めて確認したと明らかにしました。
1万人以上がロシアに派兵されたとみられる北朝鮮兵。なぜ、ロシアのために戦うのでしょうか。
北朝鮮問題に詳しい龍谷大学の李相哲教授に解説していただきました。
倉田大誠アナウンサー:
戦闘の状況ですが、負傷した北朝鮮兵士と思われる男性が「我々の部隊には40人いましたが、友達を含めみんな戦死しました」「ロシア軍は攻撃の前に偵察もせず我々に武器を与えてくれませんでした」と語っています。
まさに捨て駒状態の北朝鮮兵士ですが、なぜ志願するのでしょうか?
精鋭部隊「暴風軍団」とは?
北朝鮮兵の中でも特殊な訓練を受け、精鋭部隊と言われている「暴風軍団」。
「暴風軍団」とは飛行場などの軍事施設の爆破を目的としている“北朝鮮の最強部隊”だといいます。
FNNの取材に応じた「暴風軍団」の元兵士イ・ウンギルさんによると…。
「暴風軍団」元兵士 イ・ウンギルさん:
何の文句も言わず命を捧げることができる部隊、それが北朝鮮の暴風軍団なんです。
「暴風軍団」の訓練の様子を映したと思われる写真には背負った岩のような物を金づちでたたく様子が映し出され、よく見ると胸の付近には2本の針のような物が。さらに別の写真には、蹴りで岩を砕く様子も…飛び散る破片からその威力がうかがえます。
「暴風軍団」はこうした過酷な訓練を重ね、強靱な肉体を手にするといいます。
また、入隊するためには「海外に親戚がいてはいけない」「両親どちらかが朝鮮労働党員」「テコンドー・ボクシングなどの経験がある」といった条件があるといいます。
倉田大誠アナウンサー:
この「暴風軍団」は北朝鮮においてどんな位置づけなのでしょうか?
龍谷大学 李相哲教授:
朝鮮人民軍は120万人いると言われているんですね。しかしこの「暴風軍団」の規模はだいたい6万人くらいと言われています。最精鋭部隊で忠誠心が高くて士気も高い。それからいまこの訓練で見たように戦隊能力も高いんですね。金正恩のためなら死をいとわないというような部隊とみていいと思います。エリート集団ということですね。
MC 谷原章介:
それを人海戦術で捨て駒のように使う、ちょっと考えられないですね。
龍谷大学 李相哲教授:
北朝鮮軍というのは基本的に訓練はあまりしないんです。120万人いると言われてますが、7割以上は農業に従事しているんですよ。ただ、特殊部隊だけは訓練を積んでますので、出せるのは特殊部隊なんですよね。特殊部隊の中でもこのように日々訓練を積んでいる最精鋭部隊、こういう人を出すしかなかったということですね。
死をも恐れぬ思想教育
ロシアに派兵されている北朝鮮兵士たち。その根幹にあるのが「死を恐れない思想教育」です。
米・ウォールストリートジャーナルによると、ある元北朝鮮兵士は「若いころから最高指導者のために全てを犠牲にするように教えこまれてきた。また、学校の教科書で砲撃の標的になることを志願し政権への忠誠心を証明するように促される」と語っています。
では、なぜ北朝鮮兵士たちは派兵を志願するのでしょうか?
「暴風軍団」元兵士 イ・ウンギルさん:
こんなに大量に派兵されたのは初めてなので、北朝鮮兵たちはすごく盛り上がると思います。なぜなら、私たちの部隊は食糧の供給などが十分ではないから。ロシアに行ったらパンやバター、チーズなど、食べるものが多くてちょっと浮かれた気分になりそうです。
龍谷大学 李相哲教授:
北朝鮮軍は基本的にはずっとおなかいっぱい食べられない状況なんです。40%以上が栄養失調にかかっていると。特殊部隊といえども、毎日食べられるのはトウモロコシ、ご飯くらいのものなんですね。ロシアに行けば食べ物もいっぱい支給されるだろうし、北朝鮮では12年くらい軍の中で厳しい訓練を積んでますけども、外に出ているということは彼らにとっては、どこかに行きたいという気持ちは十分理解できますけどね。
家族への情報統制は?
李教授によると、北朝鮮の派兵に対する金銭報酬は1人あたり月約30万円。兵士が死亡した場合、保険金が支払われる可能性がありますが、家族はロシアへの派兵を知らないといいます。
「暴風軍団」元兵士のイ・ウンギルさんは「今、北朝鮮と連絡を取っているが、いまだに一般の人々は(派兵を)知らない。秘密事項なので何人かだけが知っている」と話しています。
一方で脱北者によるこんな動きもあります。
北朝鮮軍出身の脱北者らで作る団体が、派遣された北朝鮮兵に対し投降方法などを案内するビラ等を作成。内容の一部には「兵士らが多く死ぬほど金正恩総書記が多く金を受け取る」と書いてあるといいます。
11月11日、在韓ウクライナ大使館に伝達し、今後、ウクライナ軍関係者にも渡す予定です。
龍谷大学 李相哲教授:
北朝鮮出身者がどのような文言で北朝鮮兵士に呼びかけたら心理的に動揺するのかというのがわかるんですよね。「今度ウクライナに行って命を捧げるけれども、その目的は正義でもなく金正恩がお金を稼ぐためなんだ」ということを兵士らに知らせる。
もしこれで投稿するようなことになれば北朝鮮にとってはかなり大きな打撃になると思います。
この派兵は金正恩にとってはお金も入るし、現代戦も学べるし、見返りに技術ももらえる、大きな賭けなんですよね。
(めざまし8 11月13日放送より)