発光する深海の「謎の軟体動物」/Courtesy MBARI

(CNN)水深1000メートルから4000メートルの「ミッドナイトゾーン」と呼ばれる深海で、珍しい光る新種の「謎の軟体動物」が発見された。「Bathydevius caudactylus」という名のリンゴ大の生き物はウミウシに分類されているものの、米カリフォルニア州にあるモントレー湾水族館研究所(MBARI)の科学者がこれまでに目にしたことがないウミウシだった。

この生物は生物発光で光を放ち、パドルのような尾と大きなゼラチンのようなフードを備えており、深海に生息しているのが発見された最初のウミウシでもある。ウミウシは通常、海底や潮だまりなど沿岸に生息しており、海面近くの開水域に生息するウミウシはわずかしか知られていない。

新種についての研究は12日に学術誌に発表された。

MBARIの研究主幹のブルース・ロビンソン氏とスティーブン・ハドック氏が最初にこの奇妙な生き物と遭遇したのは2000年2月、モントレー湾の沖合で、深海調査ロボット「ティブロン」を遠隔操作して深海を探査したときだった。それ以来、MBARIの科学者は「謎の軟体動物」を呼ぶものを150回以上目撃していた。

ミッドナイトゾーンの極端な深さは、そこに生息する独特な生き物を理解しようとする科学者にとっては課題だ。今回見つかったウミウシとその適応について調査すれば、地球上で最大の生息地であり、海全体の約7割を占める深海について、より多くのことが分かるかもしれない。

報告書の共同主筆者のロビンソン氏は「この魅力的なウミウシの自然史を理解するために20年以上の歳月を費やしてきた。我々の発見は地球上で最大の生息地を理解するのに役立つ新しいパズルの一片だ」と述べた。

共同主筆者のハドック氏は、今回の新種について、一見するとウミウシというよりも「羽の生えた尾を持つメガホンのように見える」と表現した。

このウミウシは、片方に巨大なボウル型のフードがついた組織があり、もう一方には指のような突起で縁取られたように見える平らな尾がある。そして、その間にカラフルな内臓が見て取れる。

研究チームは標本を採取することに成功し、研究室で詳しく調査した。その解剖学的な構造と遺伝子から、この生き物がウミウシであることが判明したが、獲物を捕らえて、ミッドナイトゾーンで繁栄するよう適応した珍しい生き物であることもわかった。

ウミウシは通常、獲物を捕らえるために「舌」を使うが、新種のウミウシはそのフードを使ってアミエビなどの甲殻類を捕まえる。

新種のウミウシは、体を動かしたり、流れに乗って漂ったりして水柱を上下に移動する。

また、雌雄同体で、雄と雌の両方の生殖器官を備えている。卵を放流する時期になると下降して、足を使って海底に一時的に付着する。

捕食者から逃れる必要があるときは、その透明な体を頼りに人目につかないところに隠れるが、大きなフードを素早く閉じることで、自身を後方に推進させて素早く逃げるのにも役立つ。

ロビンソン氏は深海でウミウシが見つかるとは思っていなかったと振り返り、エベレストの山頂近くでハチドリを見つけるようなものだと例えた。ロビンソン氏は「ミッドナイトゾーンは寒くて暗く、地上の生き物にとっては非常に近寄りがたい場所だが、それでも我々が直面しているものとは全く異なる一連の課題に適応しているにもかかわらず、生命に満ちている」と述べ、今回の新種のウミウシのほぼすべての側面は、解剖学や生理学、生殖、摂食、行動など生息地への独特な適応を反映していると説明した。