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大阪地検検事正の在任中に、酒に酔った部下に対し性的暴行を加えたとして、準強制性交等の罪に問われている北川健太郎被告人(65)の初公判が10月25日、大阪地裁(渡部市郎裁判長)で行われた。

被告人は「被害者に深刻な被害を与えたこと深く反省しています。検察庁をはじめ、関係組織に多大な迷惑をかけたこと、世間を騒がせたことを申し訳なく思っております」と、事実を認めたが、事件の最中には「これでお前も俺の女だ」と発言していたなど、卑劣な犯行状況も明らかになった。(裁判ライター・普通)

●注目を浴びた裁判

事件報道が大々的にされたこともあり、約60席の一般傍聴席を求める列は、2倍近くに及んだ。注目事件で開かれる大きな法廷が使用され、報道関係者席も20席を超えており、関心の高さがうかがわれた。

スーツを身にまとい、通常より多い4人の職員に連れられた被告人は、目にクマのようなものが見える様子で入廷した。

起訴状によると、被告人は2018年に、大阪市北区内の当時の被告人宅である合同宿舎内で、被害者の飲酒酩酊による抗拒不能状態に乗じて、性交及び口腔性交を行った。

●被告人から「時効がくるまで食事をご馳走する」

検察側の冒頭陳述、取調証拠によると、被告人は1985年に検察官に任官され、2018年に大阪地検検事正となった。その後、2019年に退官し、2020年より大阪弁護士会所属の弁護士として活動していた。

被告人と被害者(以後、A)は、かつての上司部下の立場であった。事件日は、検事正就任を祝う懇親会をAが企画し行われた。Aは従来、酒に強くないものの、被告人の意向により普段飲まない焼酎などを飲み、酩酊状態となった。

その後、帰宅するためにAが乗ったタクシーに被告人が半ば強引に乗り込み、そのまま被告人宅に連れて行かれた。Aは懇親会後、断片的な記憶しか残っておらず、意識が戻ったころには性的暴行が行われている最中だったという。

Aは捜査機関に対し、抵抗したら被告人の地位、保身のため殺されるかと思ったなど、当時の心境を供述。また、帰宅を懇願するAに耳を傾けることなく「これでお前も俺の女だ」と告げるなどしながら、犯行は長時間に及んだ。

事件後、Aは懇親会に同席した人物に事件を打ち明けるなどしたものの、上司として尊敬し、立場ある被告人を告発することに深い苦悩を覚える。その心境を被告人当人に伝えると、「警察に突き出して構わない」と謝罪を述べる一方で、「時効がくるまで食事をごちそうする」などとも言われ、事件を軽く考えていると怒りを覚えるようになる。

●「誰かに気付いて欲しかった」

Aは仕事に没頭するが、被告人と業務上接することは避けられず、フラッシュバックに苦しめられるようになる。

2019年、被告人は職場に事件を告げずに退職をすることとなった。退職時、対面を希望されたため、Aは性的暴行の理由を書面で求めた。

被告人直筆の文面の中には「公になれば私は生きていけない、自死を考えている」「検察庁に大きな非難の目が向けられ、業務が立ち行かなくなる。総長の辞職もありえる」「私のためでなく、あなたの愛する検察庁のため告発はやめてください」などと書かれており、検察庁が誹謗中傷にあうと考えると、被害申告はできなかった。

その後、Aは「誰かに気付いて欲しかった」という思いを持ちながら仕事に没頭したが、被告人がAの思いも知らず検察庁の人間といまだに食事など関係を継続していることを耳にした。

それを聞き、心身に大きな不調をきたしたが、性被害を受けたのに自身が辞めるのは嫌だと、仕事を続け、上司に自分の身にあったことを伝え事件が発覚した。

次回公判期日は未定で、検察官の追加の証拠調べ、弁護側立証が行われる予定だ。