石井杏奈(撮影=大野代樹)

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 俳優として切れ目なく映画、ドラマに出演し続けている石井杏奈の1stスタイルブック『AN (エーエヌ)』(宝島社)が、10月22日に発売される。天真爛漫な笑顔から大人っぽく魅力的な表情まで、さまざまなカットが見られるのはもちろん、貴重な私服や愛用品、さらに兄弟との座談会や9000字を超えるロングインタビューも収録され、石井杏奈をまるごと感じられる一冊になっている。

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 俳優として12年という長いキャリアをもつ石井が「すべてを出し切った」という『AN』。そこに込められた思いと、俳優としての今後について聞いてみた。(本橋隆司)

■最初で最後なので、この1冊にすべて込めて作りました

ーーすでに長いキャリアをお持ちですが、今回、あらためてスタイルブック『AN』を作ろうと考えた理由をお聞かせください。

石井:ずっと20代のうちにこういう一冊を作りたいなって、思っていたんです。自分の思いを記した、自分の生きた証として、これからの自分の活力にもなると考えました。なので、今の自分をたくさん詰め込みました。自分のワードローブや、犬と一緒にいる表情、兄弟と一緒にいる表情だったりを、こんなに出していいのかっていうぐらい。役者は秘めてこそ役者だろうっていうところもあるんですけど、もう最初で最後なので、この1冊にすべて込めて作りました。

ーー最後と言い切ってしまうのはもったいない気もしますが、次はもうないのでしょうか?

石井:人生を語る機会って、そうはありませんし、10年後にまたこれやりますかって言われても、たぶんやらないです。これで全部を語ったからって言いたくなるぐらい、気持ちを込めたので。手に取ってくれた方の人生が、豊かになる1冊になればいいなと思っています。

ーー兄、弟、妹と石井さん、石井家の兄弟4人が集まった座談会が収録されています。とても仲が良いと伺いました。

石井:家族のLINEで、座談会をやっていいか聞いたときも、「ぜひぜひ」という感じでした。それぐらい仲は良いです。

ーーそれぞれ、どのような関係性なんですか?

石井:兄はけっこう無口でみんなを見守っているタイプ。妹はツッコミで、私と弟が永遠にボケ続けています。チーム感はけっこうありますね。座談会も4人それぞれというか。妹はちゃんと喋るんですけど、弟は俺、俺、みたいに、私のスタイルブックなのに、やたら自分を主張してきて。兄は私より妹のほうが好きだから、私に対してすごくドライですし、この座談会は、家族の感じがすごく伝わると思います。

ーースタイルブック『AN』は石井さんのワードローブや愛用品などが紹介され、プライベートが感じられる内容になっています。オフの日は、どのように過ごしているのですか?

石井:ジムに行ったり、体のメンテナンスをしています。オンオフ問わずに犬の散歩は行っていて、趣味の時間としてはサウナに行っています。『AN』で紹介していますが、外苑前の「Sway」が行きつけです。

ーーサウナ歴は長いんですか?

石井:2年ぐらいです。最初は「整う」ことを知らなくて汗を流すだけだったんです。「整う」意味がわからなくて、まわりの人に聞いても「限界を超えたところ」とか「サウナの向こう側」とか抽象的な言葉しか返ってこないから、本当にわからなかったんです。1年ぐらい通って、やっと「整う」がわかって、絶賛ハマり中です。でも、今「整う」ってなに? って聞かれたら、やっぱり「サウナの向こう側」としか答えられないです。「整う」ってうまく言葉にできない、形容し難いんです。

ーーふだんはあまり外食せず自炊が多いと、以前のインタビューで読みましたが、それは今も変わりませんか?

石井:自炊が多いのは、映画やドラマなど作品の撮影中です。時間が読めないぶん、人と約束しにくいので。今は作品と作品の間なので、友達とよく外食に行っています。

ーー好きな食事はありますか?

石井:今は麻辣湯にハマっているので、友達とランチによく行っています。

※編集部注=麻辣湯は中国で親しまれている春雨や野菜などの具材を煮込んだスープ。四川省発祥で、中国はもとより世界中に広まっている。

ーーお気に入りの具材の組み合わせはありますか?

石井:私は青梗菜と白きくらげとえのき、豆もやしに豚肉で板春雨、水餃子です。これにハマって、家でも作って食べています。スープの素が売っていて、あとは好きな具材を入れるだけなので簡単ですよ。発汗作用もあるので、食べてから半身浴して代謝を良くしています。

ーー過去に共演された方と食事に行ったりはしますか?

石井:先日、ドラマ『ブラックガールズトーク』(テレビ東京系)で共演した朝日奈央ちゃん関水渚ちゃんと行きました。めちゃくちゃ大好きなメンバーで、ブラックじゃないガールズトークを延々、3時間ぐらいしていました。けっこう役割分担ができていて、なぎちゃん(関水渚)がボケる感じで、私となおぽん(朝日奈央)がツッコむ感じで。なおぽんはすごい大人で、見守ってくれたりとか芯を食ったアドバイスをくれたりするんです。充実した会でした。

 あとはドラマ『チア☆ダン』(TBS系)で共演した、佐久間由衣ちゃんと朝比奈彩ちゃんと土屋太鳳ちゃん。2018年のドラマなので、あと3年でもう10年になるんですけど、定期的に会っています。「台本はどうやって覚えている?」とか仕事の話もしているんですけど、みんな家庭をもっているので家族の話をするようになってきました。

■ダンスよりお芝居のほうが孤独さを感じます

ーー『チア☆ダン』をはじめ、これまでさまざまな役を演じてきました。デビュー当時と現在、演じることについての気持ちや考え方は変わりましたか?

石井:最初は緊張や不安ばかりで、自分がみなさんの足を引っ張ることにならないかなど、ネガティブな要素が強かったんです。泣き芝居でちゃんと泣けるかな、この役を自分よりうまくできる人がいるかもしれないなど。ただ、10年以上やっていると少し自信がついてきて、自分だからできるお芝居をしたいなと考えるようになりました。泣き芝居でも涙を流すのはもちろん、そのときに抱えている感情を届けることを意識してやろうといった少し余裕が生まれた感覚があります。

 たとえば役作りにしても、なにかに特化した役なら、その特化した人に自分からアプローチして会って、いろいろ聞いたり、自分ができることを見つける選択肢が増えたと思います。

ーーそれはたくさんの仕事を続ける中で変化していったものだと思いますが、中でも石井さんにとって転機になった作品はありますか?

石井:『ソロモンの偽証』という映画は、自分が俳優としてのありかたを見つめ直すことになった作品なので、一番の転機でした。

ーー具体的になにがあったのでしょう?

石井:半年がかりのオーディションを経ての参加だったので、まず気の持ちようが全然、違いました。そこからさらに1ヶ月の稽古をして撮影に臨んだので、お芝居へのアプローチが変わりました。

 あと、撮影とE-girlsのファーストライブが重なったときに、成島出監督からどっちかに集中しないとこのキャストの中で負けてしまうぞと言われて、ライブに参加しないことを決めたんです。その撮影の中で、成島監督から芝居の仕方をいちから教えていただいたので、今につながる自分の基盤ができた感じです。

ーー当時はE-girlsの活動と俳優を並行して行っていました。石井さんの中でダンスと演技、表現としての違いはありますか?

石井:表現という意味ではどちらも同じなんですが……。当時はE-girlsのみんながいたから、ダンスをしていたというところがありました。1人で踊ろうとは思っていませんでしたし、みんなで作り上げることがすごく楽しかったんです。それにプラス、ステージからお客様の笑顔を見るのが、すごくうれしかったんです。

 お芝居に関しては、舞台でない限りお客様の反応は生で見られないので、だからこそ監督、自分を信じてぶつかり合うという。ダンスよりお芝居のほうが孤独さを感じます。

ーー俳優の仕事をしてきた中で、感銘を受けた、影響を受けた方はいますか?

石井:近いところでは『ブラックガールズトーク』で共演した朝日奈央ちゃん。お芝居は初めてって言っていましたけど、タレントさんとしてバラエティの第一線で活躍しているので、勘がすごくいいんです。ドラマなので撮影するシーンもパンパン切り替わるんですけど、監督から言われたことをすぐ理解して、一回で正解を出すんです。才能が開花したというか、その瞬間に立ち会えたのがすごい嬉しかったです。

ーー今もさまざまな経験を重ねていますが、今後、こういう俳優になりたいというイメージはありますか?

石井:やっぱり自分らしく生涯現役で、作品を一生、作っていけたらいいなと思っています。プライベートに関しては、母になりたいなと思っています。

 母になりたい思いは、妹や弟がいるのもあって、小学生のときから強かったんです。私の母が子どもを産んで、その子どもたちが20代になっても自分磨きを怠らないし、人生を楽しんでいる感じがすごくするんです。私もそういうふうになれたらって思います。

ーー生涯現役、ライフステージが変わると演じる役も変わっていきそうです。Amazon PrimeVideo実写版『推しの子』でも、ミュージックビデオの監督役です。

石井:年下の俳優さんたちが頑張っている姿を見て、すごく応援したくなりました。泣き芝居などうまくいかないときに、みんながハグして励ましていたりする姿を見て、こうやって人間は強くなっていくんだなって思って。もうお姉さんとして見ているのかもしれません。

ーーこれからキャリアを重ねていくのも、楽しいかもしれません。

石井:楽しみです。もう楽しみしかないですね。

(本橋隆司)