やまむら・たけひこ 新潟地震(1964年)での災害ボランティア活動をきっかけに、防災・危機管理の調査研究機関「防災システム研究所」(東京)を設立。以来、国内外の被災地を訪れ、調査や提言を続けている。

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 能登半島地震の被災地を襲った記録的大雨による災害は、21日で発生から1か月となった。

 近年は地球温暖化により、災害を起こしうる強雨が増え、地震と大雨による複合災害のリスクは高まっている。複合災害への備えについて、防災システム研究所(東京)の山村武彦所長に聞いた。(聞き手 社会部大原圭二)

――能登半島の大雨では、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域に建てられた仮設住宅が浸水した。

 能登半島には、仮設住宅の建設に適した平地が少ない。リスクの高い場所に建てられたのは、致し方ない面はあると思う。また、一般住宅でも大地震でリスクが高まったことが、住民に十分伝わっていなかったのではないかと感じている

――自治体などはどのような対策を講じておくべきだったか。

 地震で地盤が緩んだところに大雨が降り、斜面が崩れると、土石流や洪水の危険性が高まる。このことを、大雨が降る前にきめ細かく住民に知らせておくことが必要だった

――気象庁は地震後、地震による地盤の緩みを考慮して、輪島市などを対象に「土砂災害警戒情報」や「大雨警報」について、発表基準の値を7割に引き下げて運用していた。地震前よりも住民に強く警戒を呼びかけてきた。

 ただ、一方的な発表だけでは住民に理解してもらえない。谷などに土砂がたまって川の氾濫が懸念されるほか、斜面が不安定で土砂災害リスクがあることを丁寧に伝えることが重要だ。しかし、被災自治体は震災対応に追われ余裕がない。国や県などが注意喚起する仕組みを作る必要がある

――大雨が激甚化、頻発化していると言われる。

 これまでと違うのは、地球温暖化で雨の降り方が変わったということ。「息苦しくなるような圧迫感、恐怖を感じる」と表現される1時間降水量で80ミリ以上の雨が降る頻度は、この半世紀で2倍近くに増えている。今までと全く違う大雨が起きるという認識を、我々は持たなければならない

――今後、複合災害にどのように備えるべきか。

 大きな地震に見舞われた被災地は、緊急事態のさなかにある。さらに大雨が降れば、複合災害は必ず起きる。この前提に立って、国はリーダーシップを発揮して対策を作っていかなければならない。防災関係機関も、それぞれ何ができるかを検討し、準備しておく必要がある