勇退する岡田彰布監督も問い続けた 寂しい終戦を迎えた阪神はFAイヤーを迎える「捕手問題」にメスを入れるか

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昨季の日本一を支えた梅野。(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 今季限りの勇退が決まっている岡田彰布監督の“ラストゲーム”は無情の結末を迎えた。

 10月13日に本拠地・甲子園で行われたセ・リーグのクライマックスシリーズファーストステージ第2戦で、阪神はDeNAに3-10で大敗。昨季に日本一となった王者の“アレンパ”を目指した1年はあっけなく幕を閉じた。

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 最後は頼みの綱だった守備が崩壊した。初回二死走者なしから3番の森下翔太がレフトスタンドに先制ソロ本塁打を放って先制した阪神だったが、先発左腕の高橋遥人が2回に無死満塁のピンチを招き、戸柱恭孝の逆転適時打、さらに二死三塁から好調な牧秀悟から適時打を浴びて一挙4失点。あっけなく逆転された。

 その後、両軍無得点のまま進んだが、DeNAが7回にマイク・フォードのソロ本塁打と佐野恵太の3ランで6得点。継投策を講じていた阪神は、本拠地で相手打線の強打を食い止めきれず……。最終的に10点を奪われて終戦となった。

 岡田体制の最終戦とあって寂しい結果に甲子園にはため息が漏れた。一部の虎党には悔しさから涙する者もいた。そんな一戦で小さくない話題となったのは、勇退する名将のシビアな采配だ。

 4失点を喫した直後の3回。ナインが守備に就く中で、岡田監督はスタメンマスクだった梅野隆太郎に代わって、坂本誠志郎を起用した。矢継ぎ早に打ち込まれ、流れが大きく傾いたとはいえ、試合序盤での異例の交代だった。

 レギュラーシーズン中も「同じことばっかり」と相手打者への攻め方を口酸っぱく忠告してきた。それでも負けたら終わりの勝負所で連打を浴びた“正捕手”を、百戦錬磨の指揮官は迷いなく変えた。

 無論、一方的に打ち込まれての10失点は投手陣にも一定の責任はある。しかし、岡田監督のシビアな采配を見る限りベテラン捕手たちの配球が狙われ、今後の課題となったのは言うまでもない。

 そんな阪神は今オフに主力選手の多くがFAイヤーを迎える。岡田体制下で二頭体制を組んできた梅野隆太郎、坂本誠志郎も揃ってFAイヤーとなる。強肩も売りにする二人が仮に宣言をすれば、他球団を含めた争奪戦は必至だ。

 ともにチームへ小さくない貢献してきた功労者だけに球団は全力で引き留めるだろう。だが、二人とも来季に31歳を超える(梅野は35歳、坂本は31歳)。そうした事実をふまえても新体制が発足する来季は思い切った抜擢もありえるかもしれない。

 興味深いタレントは控えている。今季の2軍では高卒3年目で打率.321、OPS.920のハイアベレージも残した中川勇斗や、1軍での出場経験もある榮枝裕貴がアピール。さらに今秋のドラフトで若手捕手の拡充を図る可能性もある。1軍級の捕手を育てるのは容易ではない。だが、将来を見据え、オプションを増やす意味でも競争を加速させてもいいのではないか。

 来季、阪神は球団OBの藤川球児氏の就任が決定的となっている。常勝軍団への道をいかに切り開く上でも、課題となった「扇の要」にメスを入れるかどうかは注目する価値がありそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]