首都圏中古マンション価格の三極化が進行! 下落が始まっているお値ごろエリアはどこ?
中古マンション価格が上がり続けているという印象が強いかもしれません。しかし、実は価格が上がっているのは都心5区などが中心で、周辺や三県では上昇が止まり、下落が始まっているエリアが多いのです。価格の動向は一様ではなく、三極化、四極化しているので、きめ細かな見極めが大切になっています。
都心では二桁台の上昇が続いている
不動産情報ネットワークのアットホームでは、毎月首都圏の中古マンション価格の動向を調査しており、その2024年5月分の結果は図表1にある通りです。
首都圏全体の平均は3,873万円で、前年同月比は0.7%のダウンとなっています。首都圏の中古マンション価格は上昇が続いているというイメージが強いかもしれませんが、実は前年同月比をみると、全体としては下がり始めているのです。しかも、価格の動きはエリアによってかなり異なっているので、きめ細かくチェックしていく必要があります。
まず、首都圏全体が下がるなかで、大きく上がり続けているのが東京都23区です。2024年5月の平均価格は5,257万円で、前年同月比は6.2%の上昇となっています。一時期のように、前年同月比で二桁台の上昇という急上昇ではなくなっているものの、それでも上昇傾向は変わりません。
特に都心5区などの高額エリアでは富裕層や高額所得者などのニーズに支えられて上昇の勢いが止まりません。マンション情報の「マンションレビュー」の調査によると、都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の2024年5月の70平方メートル換算平均価格は1億510万円で、前年同月比18.4%の上昇率となっています。二桁台の高い上昇率が続いているのです。
三県の主要エリアでは下落傾向が強まっている
しかし、そんなに上がっているのは都心やその周辺に限られます。先の図表1にあるように、東京都23区以外の東京都下では、平均価格が3,228万円で、前年同月比では0.2%の下落でした。
首都圏で東京都23区に次いで価格水準が高いのは、東京都下のほか、神奈川県横浜市・川崎市、埼玉県さいたま市、千葉県西部(柏市、松戸市、流山市、我孫子市、市川市、浦安市、習志野市、船橋市)ですが、いずれも価格は下落傾向が鮮明になっています。
横浜市・川崎市の平均価格は3,392万円ですが、前年同月比は0.1%のダウンでした。さいたま市は3,271万円で、前年同月比は5.1%のダウンとなっています。千葉県西部エリアは平均価格2,796万円で、前年同月比は6.5%の大幅な下落でした。
三県のうち二県の主要エリア以外では価格が上昇している
それに対して、三県のうち二県は、主要エリアではない地域で動きが異なります。埼玉県のさいたま市以外のエリアでは上のグラフのとおり前年同月比で4.5%の下落となっています。しかし、神奈川県の横浜市・川崎市以外のエリア、千葉県の西部以外のエリアでは上昇傾向がみられます。
神奈川県の横浜市・川崎市以外のエリアは、平均価格が2,656万円で前年同月比は1.6%の上昇となっています。横浜市や川崎市に比べると割安感が強いこともあり、このエリアで購入を考える人が増加し、それに対応して中古マンション相場が上がっていると考えられます。
千葉県も同様で、千葉県西部以外のエリアの平均価格は2,058万円で、前年同月比では3.2%の上昇でした。図表1でも明らかなように、このエリアは首都圏のなかでもひときわ価格水準が低く、割安感が強くなっています。そのため、このエリアを見直す動きが強まっているのではないでしょうか。
千葉県なら一部屋広いマンションが手に入る
千葉県のマンションが注目される要因のひとつとして、千葉県は首都圏のなかでも価格に割安感がある上に、専有面積の広いマンションが多いというメリットもあるのではないでしょうか。
図表2にあるように、首都圏全体の専有面積の平均は60.0平方メートルで、東京都23区は52.9平方メートルにとどまっています。対して千葉県では、西部エリアでも68.6平方メートル、千葉県のその他のエリアも68.4平方メートルとなっています。千葉県であれば、首都圏平均より8平方メートル以上広く、1畳1.62平方メートルとすれば、約5畳分、一部屋分広くなっています。東京都23区よりは16平方メートル程度広く、10畳分程度に相当しますから、格段にゆとりある住まいを手に入れることができます。
それでいて、平米単価は千葉県西部が40.8万円、千葉県の西部以外のエリアは30.1万円です。千葉県の西部以外なら、首都圏平均の64.6万円の半分以下の水準ですから、千葉県のマンションを見直す人が増えても決して不思議ではありません。
首都圏中古マンション三極化、四極化
首都圏の中古マンション価格動向を整理してみましょう。
都心5区を中心とする東京都23区の価格は、依然として上昇が続いている反面、東京都23区に次いで価格水準の高い三県の主要エリアである神奈川県の横浜市・川崎市、埼玉県さいたま市、千葉県西部エリアでは価格の低下が始まっています。その一方、三県の主要エリア以外では、割安感もあって、埼玉県を除いて価格の上昇が続いています。ただし、その上昇幅は東京都23区ほどではありません。
つまり、首都圏の中古マンション価格は、依然として高騰が続く東京都23区、下落が始まった三県の主要エリア、そして割安感から若干の上昇が続いている三県の主要エリア以外、と三極化しているといえます。
東京都23区でも、都心5区とそれ以外では上昇率に大きな違いがあるため、四極化といってもいいかもしれません。
築年数による価格動向の違いにも注意が必要
中古マンションの価格動向を見極める上では、専有面積帯による違い、築年数帯による違いにも注意しておく必要があるでしょう。
たとえば、図表3にあるように、東京都23区の専有面積50平方メートル~70平方メートルのファミリー向けの物件をみると、築年数が「~10年」の築浅物件は9,066万円ですが、「~30年」は5,662万円に、「40年超」は4,004万円に下がります。同じ東京都23区でも、築年数によって価格水準は半値以下になるのです。
しかも、価格の上昇率をみると、「~10年」は15.7%も上がっているのに対して、「~30年」の上昇率は6.3%と低下、「40年超」は2.0%の下落でした。築年数が経つほど価格が下がると同時に、購入後の資産価値の上昇を期待しにくくなるということです。
築年数が経過した物件を選択するときには、築年数に応じた老朽化などに注意しながら、維持・管理状況がどうかなどを見極め、居住性と同時に資産性についても注意しておく必要があります。