準決勝で2位になった桐生祥秀(左)=撮影・吉澤敬太

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 「陸上・日本選手権」(29日、デンカビッグスワンスタジアム)

 パリ五輪切符をかけて男子100メートル準決勝が行われ、元日本記録保持者の桐生祥秀(28)=日本生命=は10秒20で3組2着に入り、30日の決勝進出を決めた。

 レース後は「きょうは子どもの運動会だった。『パパ1番で帰る』と言ったのに、(1番では)帰れなかったけど」と苦笑いしつつも「あした、しっかり集中したい」と前を向いた。

 幼稚園児の息子は運動会でフライングし、最後は転んでしまったという。「嫁から『フライングするなよ』と」と親子で失敗しないよう助言されていたと明かした。

 桐生は今季は1月に室内の60メートルを6秒53で走り、当時の日本記録をマーク。ただ、屋外の今季自己ベストは10秒36で、追い風参考を含めても10秒19(追い風2・8メートル)と苦戦気味だった。6月2日の布勢スプリントでは「4〜5月までタイムも体調面でもうまくいかず、陸上人生で今年が一番しんどい。でもそんな中で今日、今シーズン初めて(予選、決勝の)2本走れたので、日本選手権は3本走れれば」と苦しい胸の内を明かしていた。

 そんな状況で有言実行の決勝進出を決め「ワクワクした感じで走ってる。予選はめちゃくちゃ不安だった」。今大会を故障で欠場し、パリ五輪断念を表明している山縣亮太や多田修平の名前を挙げ「スタートに立てない悔しさは、(大会に)出て(五輪出場権を)取れない悔しさよりあると思う」と仲間を思った。決勝へ向けては「しっかりパリを想像して走りたい。10秒0台か、9秒台を出せないとランキングに入らない」と気を引き締めた。

 桐生は16年リオ五輪は100メートルと400メートルリレー出場し、400メートルリレーでは第3走として銀メダルを獲得。17年に日本人初の9秒台となる9秒98の日本新記録(当時)を樹立した。21年東京五輪は個人での出場を逃し、400メートルリレーに出場したが、決勝では1走と2走でバトンミスがあり、3走の桐生までバトンは回ってこなかった。