社内外から疑問の声…ダイキン・89歳会長に「特別功績金43億円」は真っ当か?

写真拡大 (全3枚)

空調メーカー大手、ダイキン工業の井上礼之(のりゆき)取締役会長(89)が6月27日に開かれる株主総会で退任する。同時に、43億円もの巨額の「特別功績金」が支払われることが波紋を呼んでいる。

井上会長は、’94年の社長就任から30年でダイキンを大きく飛躍させた「中興の祖」。確かに売上高だけを見ても、’94年度の約3800億円が、’23年度には約4兆4000億円にまで躍進。売上高世界一の空調メーカーに押し上げた。その経営手腕と功績は称賛に値する。

同社が株主に向けて公表している「定時株主総会招集ご通知」には、特別功績金の支給と金額を決めた理由として、〈改革に次ぐ改革の実行〉〈卓越した経営戦略〉などと記されている。’19年7月に社外取締役で構成される特別功績金検討委員会が設置され、これまで9回の審議を経て決定したという。

だが――。ある社員はこう声を潜める。

「30年間の業績向上は、井上会長一人の働きによるものではなく、退任した多くの役員や幹部社員たちの尽力も大きい。井上会長は、社内で″天皇″″カリスマ″と崇(あが)められていただけに、周囲の忖度(そんたく)があったのではないか」

オリックスで33年間経営トップを務めた宮内義彦氏(88)も退任時に44億円の功労金を受け取って話題になったが、宮内氏は創業メンバーの一人だ。

「そもそもダイキンは、役員に対して業績連動型報酬制度を導入し、’03年には役員退職慰労金制度を廃止しています。つまり業績は年度ごとに報酬へ反映されており、今回の巨額な特別功績金が真っ当かといえば大いに疑問です。ちなみに、井上会長は’23年3月期に4億5600万円の報酬を得ています」(元社員)

さる経済ジャーナリストはこう話す。

「井上氏の経営手腕を褒めたたえる報道が目立ちますが、良い面ばかりではない。例えば、同社の淀川製作所周辺でPFOA(有機フッ素化合物の一種)が検出された問題は未だ解決していません。

また、’11年には側近で秘書室長の十河(とがわ)政則氏を社長に昇格させ、’16年には自身の長男を最年少の専任役員として大抜擢。この人事は『井上氏による会社の私物化』だと批判されました」

43億円という金額の根拠は何なのか。同社へ質(ただ)すと、以下のように答えた。

「詳細は控えますが、企業価値の著しい向上を果たした功績に鑑みて、特別功績金を贈呈することが相当と、『特別功績金検討委員会』が判断しました」

井上氏は株主総会以降、名誉会長として同社に残るという――。

『FRIDAY』2024年7月5・12日号より

取材・文:甚野博則(ノンフィクションライター)