個性的なスマホを世に送り出しているNothingから、初の廉価版「Nothing Phone (2a)」が登場しました。日本ではオープンマーケットモデル(SIMフリー版)として販売中。価格は4万9800円(税込)からとなっています。このスマホは、同社初のおサイフケータイ対応モデルでもあります。

 

ユニークさが目立つ製品ですが、スマホの実用面ではどのような魅力があるのか、ここでは改めて探っていきます。

↑Nothing Phone (2a)

 

コストダウンを感じるものの、ワクワク感のあるデザイン

Nothing Phone (2a)は、スタイリッシュでありながらガジェット感もあり、手にすると単なるツールを超えた満足感があります。モノとして手に取って楽しいという製品です。

 

スタイリッシュさを体現する、個性的なデザインも目を引きます。スケルトンのバックパネル越しに、リボンケーブルが敷かれた見せ回路が透けて見えます。この回路はロンドンの地下鉄路線図にインスパイアされているそうです。印象としては昔のゲームボーイのようにワクワク感がありながら、目立ちすぎず、引き締まったデザインになっています。

 

またカメラカバーの部分は有機的な曲線で形づくられていて、ほかのスマホのように出っ張りが目立って煩わしいということもありません。

 

一方で、バックパネルには若干のコストダウンが見られます。上位機種のガラス素材と比べると、Nothing Phone (2a)のプラスチック製バックパネルは、やや安っぽい手触り。指紋や汚れが付きやすく、拭き取りにくいのは気になるところです。

 

演出的でありながら実用性もある「Glyphインターフェイス」

ユニークな機能として、Nothing Phone (2a)には「Glyphインターフェイス」というハードウェアの仕掛けがあります。カメラの周りを半周するようにリング状のLEDライトが仕込まれ、通知や音楽再生に合わせて光で演出してくれるのです。

 

電話の着信時には、スマホを伏せておくだけで背面のライトがゆっくり点滅し、着信を上品に知らせてくれます。メッセージを受信すると、ライトが特定のパターンで光ることで、通知を視覚的に確認できます。

↑スマホが光る「Glyphインターフェイス」の設定画面

 

また、「ミュージックの視覚化」機能を使えば、音楽の再生に合わせてライトがリズミカルに点滅し、まるでDJブースのようにピカピカ光る演出を楽しめます。「Glyph Composer」機能を使って、ユーザー自身がライトの光り方をカスタマイズすることもできます。

 

さらに、「Glyphタイマー」機能を使えば、リングライトで時間経過を示すタイマーとして活用できます。

 

「スマホを主体的に使う」意識ができあがるモノクロなホーム画面

もうひとつユニークな部分であり、筆者が気に入ったのは、モノクロームなホーム画面へのこだわりです。

 

Nothingはホーム画面に置けるウィジェットを、20種類以上も用意しています。すべてのウィジェットがモノクロームで作られていて、アイコンを並べるだけですっきりとしたホーム画面を作成できます。

↑統一感のあるホーム画面を手軽に作成できる

 

睡眠をサポートするAndroidの標準機能「おやすみ時間モード」では、スマホの全体をグレースケールで表示できますが、Nothingのホームアプリではアプリの色合いはそのままで、ホーム画面をモノクロにできます。

 

また、アプリのアイコンも含めてすべてモノクロに設定も可能。アプリのアイコンから色をなくして、グレースケールで統一したホーム画面を作れるのです。

↑Google Playアプリのアイコンもモノクロで表示できる

 

単にアプリのアイコンを単色にしただけですが、使ってみるとホーム画面を見るときの誘惑が減って、目的のアプリを探しやすくなります。使いたいアプリにたどり着くまでの操作で、ほかのアプリも目に入ってつい開いてしまうのはよくあることですが、モノクロになることで必要なアプリだけ開いて、用が済んだらスマホの操作は終わりという気持ちになるのです。

 

漫然とスマホを触るのではなく、主体的にスマホを使おうという意識になります。

↑生成AIで壁紙を作成する機能も搭載。モノトーンデザインの壁紙は特に作りやすい

 

Glyphインターフェイスはポモドーロ・タイマーとして使える

先に紹介した、Glyphインターフェイスのリングライトも、スマホから意識を切り離すのに役立ちます。Glyphタイマー機能を使えば、ポモドーロ・テクニックのタイマーとして活用できるのです。

 

ポモドーロ・テクニックは、25分の作業と5分の休憩を繰り返すことで、集中力を維持しながら効率的に作業を進める時間管理法です。一般的にはキッチンタイマーがよく使われますが、Glyphタイマーはそれとよく似た特徴を持っています。

 

キッチンタイマーは文字盤の目盛りが減っていくのに対し、Glyphタイマーはリングライトが徐々に消灯していき、さながら蚊取り線香のようです。どちらもアナログ的に時間の経過を可視化するので、直感的に残り時間を把握でき、作業に集中しやすくなります。

↑Glyphライトをポモドーロ・タイマーのように使える。スマホを伏せて置けるので気をそらす心配が減らせる

 

また、スマホ画面を見なくても時間がわかるため、ほかのアプリを開いてしまう誘惑を避けられます。時間を設定してスマホを裏返しておけば、リングライトが時間を知らせてくれるので、スマホに触れずに済むのです。

 

惜しむらくは標準の時計アプリとの連携がないことです。Nothing PhoneはGoogle製の時計アプリを採用していますが、Glyphタイマーの設定はこのアプリとは連動しません。

 

Glyphタイマーの設定は設定パネルの奥深くに位置しており、少々わかりづらいのですが、通知パネルにショートカットを設置することができます。ただ、ホーム画面の時計ウィジェットを開くと標準の時計アプリが起動するため、Glyphタイマーの設定場所を探し回ってしまった経験が何度かありました。

 

もしGlyphタイマーが標準の時計アプリに対応していれば、Googleアシスタントの音声入力でもタイマー設定ができるようになるでしょう。ぜひ今後のアップデートで改善されることを期待します。

 

スマホとしての基礎は十分

目新しい機能で選ぶとしても、スマホとしての使い勝手が十分に保証されていなければ検討要素にはなりません。

 

その点、Nothing Phone (2a)は性能面で物足りなさを感じることはないでしょう。ユニークな機能を利用する以前に検討課題となる、スマホとしての性能のベースラインはきっちり抑えている印象です。

 

CPUは8コアチップの「Dimensity 7200 Pro」、メモリーは8GB/12GB搭載で、4年前のフラッグシップスマホ並みの性能があります。WebサイトやYouTube再生は余裕でこなせますし、軽いゲームも快適に動かせるでしょう。

 

OSはAndroid 14を搭載しています。また3年間のOSアップデートと4年間のセキュリティアップデートを提供。十分に使い続けられるでしょう。

 

背面カメラは5000万画素の標準+5000万画素の広角カメラの2眼仕様です。暗所撮影に強く、価格帯を考慮すれば実用的と言えます。

 

Nothing Phone (2a)はスマホと人の関係性を見直すきっかけになる

Nothing Phone (2a)は、カメラやディスプレイの性能において、他社の同価格帯のスマートフォンと比べて突出しているわけではありません。

↑スマホとのあり方を見直すきっかけを与えてくれる1台

 

一方で、モノトーンに統一されたホーム画面は、使いたいアプリ集中しやすくなるように設計されており、スマホを意識的に使うという本質的なところを促しています。

 

Glyphインターフェイスも現状では発展途上な部分もありますが、ディスプレイに依存せずにスマホの状態を知らせるツールとして興味深い存在です。

 

スマホと人との関係性を見直すきっかけを与えてくれる一貫した設計思想があり、思想が機能として反映されていることが、Nothing Phone (2a)の妙味と言えるでしょう。

 

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