アメ車はドロドロ系の重低音! イタ車はシビレるような高音! 同じV8エンジンでもメーカーによってまったく音が異なるワケ
この記事をまとめると
■同じ排気量や気筒数であってもメーカーや車種によってエンジン音が異なっている
■燃焼室の形状がメーカーによって異なっておりそれがエンジン音の違いになっていると推測される
■クルマの使い方合わせてエンジンの特性も異なっているために排気音にも違いが出る
重低音も高周波音もあるV8のエキゾーストノート
同じV型8気筒エンジンでも、アメリカ車と欧州車ではなぜエンジン音に違いがあるのか。かたやドロドロといった腹に響く低音であり、他方はカァ〜ンと脳に響くような高周波音である例が多い。
同じ欧州車でも、イタリア車とドイツ車では違うかもしれないし、同じイタリア車でも、フェラーリとランボルギーニでは違うかもしれない。そこは、直列6気筒でもV型12気筒でも同じような印象があるのではないか。
かつて、レーシングエンジン開発の技術者に、メーカーごとにエンジン音が違う理由を聞いてみた。ことにレースエンジンは、車両規則によって排気量などの上限が定められており、ボア×ストロークも似たような諸元となっているはずだからだ。
明解な答えは得られていない。なぜなら、自分のメーカーのことは知っているが、他メーカーの事情は知らないからだという。それでも想像すると、燃焼室の形状が違うからではないかとの答えだった。
多気筒の高性能エンジンは4バルブが一般的で、それによってシリンダーヘッドとピストン頭頂部で構成される燃焼室は、ペントルーフと呼ばれ、断面が二等辺三角形をしている。しかし、吸排気バルブの挟み角の違いによる配置や、ピストン頭頂部の形など含め、多少の違いがあるはずだ。
伝承されたエンジン開発の仕方がメーカーごとにあり、コンピュータシミュレーションの時代であっても、製造段階での仕上げに人の手が入ることもあるだろう。
かつて、ホンダのエンジン開発でどうしても狙った燃費が出なかったとき、職人肌の技術者が指で吸気ポートを触り、わずかに内部を削ったら燃費が改善されたという逸話があった。数値によるデジタル化で同一性があっても、人の肌が感じる感性が熟練されたものであればコンピュータを上まわる事例だ。人間の能力は、まだ侮れない。
また、そもそもアメリカのV8は、低回転で大トルクを活かした加速のよさを求める特性が期待され、欧州では高回転でまわしたときの出力の高さが求められる。要求されるエンジン特性の違いが、エンジンの使われる回転の差となって、エンジン音が違うということもあるだろう。
アメリカでは、0-400mの加速を競うドラッグレースが盛んなのも、瞬発力に魅力を感じる消費者が多いからだ。ドイツにアウトバーンがあるのは、連続的に高速で走り続けることを欧州人は求め、アウトバーンのように無制限ではなくても、欧州の道路は速度域が高い。一方のアメリカは、州によって事情は異なるものの、日本と似た速度域での規制がある。つまり、連続的な高速走行ではなく、瞬発力であれば、速度規制の範囲でも醍醐味を味わえる。そして、大陸の移動においてもアメリカは、クルーズコントロールで淡々と走り続けられればよいとする。
クルマの走らせ方や、移動速度の違いによってエンジン開発の目的も変わり、それによってエンジンを使う回転数が変わり、エンジン音も違ってくるのだろう。