インターネットの集合知がオークションに出品された「Apple社員証」の偽造を暴く
社員番号10番のAppleの社員証がeBayに出品されました。しかし、これは偽造されたものだったとして、発覚の経緯をソフトウェア開発者でブロガーのカベル・マックスフィールド・サッサー氏がまとめました。
The Forged Apple Employee Badge - cabel.com
https://cabel.com/2024/05/16/the-forged-apple-employee-badge/
社員証の持ち主であるシェリー・リビングストン氏は確かに社員番号10番で、ラミネートフィルムや添付されている社内の人員配置図も本物のように経年劣化しています。
しかし、サッサー氏がよく見ると違和感もありました。例えば、社員証の表面の擦れはサンドペーパーでこすったようで、配置図の染みはやりすぎのように見えます。
しかし、最もサッサー氏の目を引いたのは文字の部分です。時代を考えると、この社員証はDTPが普及する前に作られたもののはずですが、社員の名前や日付の部分はタイプライターで印字されたにしてはくっきりしすぎているとのこと。
そして、そうこうしている間に社員番号8番のApple社員で同社の最古参として知られているクリス・エスピノサ氏が降臨して、「社員証も配置図も、両方とも偽物です」と断言しました。
エスピノサ氏によると、問題の社員証の女性は本物のリビングストン氏ではないとのこと。エスピノサ氏はまた、ラミネートの寸法が違うことや、写真がポラロイドカメラでフラッシュ撮影されたものではないこと、文字がIBM製タイプライターのタイピングエレメント(印字部)のものではないこと、配置図がエスピノサ氏のオリジナルのスケッチではないことなどを指摘しています。
以下が、本物の社員証です。
そこで、サッサー氏が出品者に連絡をして本物だと証明できるかどうか尋ねたところ、出品者からはドイツ赤十字社から買ったものだという、意外な答えが返ってきました。
そして、接触から数時間後に、ドイツ赤十字社から買った証拠として領収書の写真が送られてきました。出品者が言うには、問題の社員証は2001年にドイツに旅行した際にチャリティーオークションで買ったものだとのこと。
しかし、この証拠にもわざとらしい印象を受けたサッサー氏は、写真をSNSに投稿して集合知に頼ることにしました。その結果、ドイツで普通使われないような言い回しがあることや、ドイツの領収書にあるはずの付加価値税の記載がないことなどが次々と明らかになりました。
証拠品も偽物であるとサッサー氏が指摘すると、出品者からの連絡は途絶えてしまったとのこと。しかし、後味の悪いことに、サッサー氏がこの経緯をブログ記事で公開する前に、偽造社員証は946ドル(約15万円)で落札されてしまいました。
サッサー氏はブログ記事の結びで「面白いが架空の社員証に946ドルも払ってしまった人には、心からお悔やみ申し上げます。今回のことで、Appleの歴史に関する詐欺に注意すること、特にこの出品者からはもう何も買わないこと、疑わしい場合はインターネットを頼ること、という教訓が得られました」と述べました。