「次のパンデミックはインフルエンザの可能性が高い」と専門家が警鐘を鳴らす
実業家のビル・ゲイツ氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生する前から「感染性の高いウイルスで世界大戦を超える数の人命が失われる」と予見していましたが、この警告は生かされることなく世界中で数百万人がCOVID-19の犠牲となり、パンデミックは記事作成時点でも収束していません。新しく実施された国際的な調査により、最前線で活躍している専門家の過半数が、次の大規模なパンデミックはインフルエンザだと考えていることがわかりました
https://www.theguardian.com/world/2024/apr/20/next-pandemic-likely-to-be-caused-by-flu-virus-scientists-warn
欧州臨床微生物・感染症学会議(ECCMID)が実施した調査によると、調査に参加した総勢187人の疾病専門家の57%が、「次の致命的な感染症の世界的流行はインフルエンザウイルスの一種によって引き起こされる」と予想しているとのこと。
インフルエンザが史上最大級のパンデミックの脅威であるとされる理由は、インフルエンザウイルスが常に進化し、変異を続けているという長期的な経験則に基づいていると、調査を行ったドイツ・ケルン大学のジョン・サルマントン=ガルシア氏は指摘します。
サルマントン=ガルシア氏は「冬が訪れると毎年のようにインフルエンザが発生しますが、その流行は小さなパンデミックと言ってもいいでしょう。しかし、いつまでも小規模なままだとは限りません」と話しました。
調査に参加した専門家の21%によると、インフルエンザの次にパンデミックの脅威となるのは「疾病X」、つまり科学的に未知のウイルスによって引き起こされる感染症とのこと。一部の専門家は、2019年に現れた新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のように、次のパンデミックも突如として出現した病原体が発端となるだろうと予想しています。
事実として、SARS-CoV-2は引き続き重大な脅威とみなされており、調査対象となった専門家の15%は、SARS-CoV-2が近い将来再び猛威を振るうだろうと回答しました。
忘れてはならないのが、ラッサ熱、ニパウイルス感染症、エボラ出血熱、ジカウイルス感染症などの致命的な感染症ですが、これらを深刻な世界的脅威に挙げたのは回答者の1〜2%にとどまっており、この点からもインフルエンザがいかに専門家から危険視されているかがわかるとサルマントン=ガルシア氏は指摘します。
脅威となるインフルエンザは、人間のインフルエンザに限りません。WHOは2024年5月に、H5N1型鳥インフルエンザの感染拡大への懸念を表明しました。この鳥インフルエンザの流行は2020年に始まり、飼育下の鳥類や野鳥に甚大な被害を与えたほか、2024年に入ってから牛や羊にも感染したことが報告され、4月には感染した乳牛のミルクを飲んだ猫の死亡も確認されました。
H5N1はまた、2021年以降人への感染例も28件報告されています。これまでのところ、人から人への感染は確認されておらず、WHOは「公衆衛生上のリスクは低い」としていますが、イギリス・グラスゴー大学のウイルス学者であるエド・ハッチソン氏は「豚が鳥インフルエンザに感染する可能性があることは知られていましたが、これまで牛には感染しなかったので、牛でH5N1への感染例が発生したのは衝撃的でした。ウイルスがより多くの家畜に感染するということは、そこで変異したウイルスが人間に感染するリスクもますます高くなるということです」と話しました。
多くの専門家が懸念を深めているインフルエンザですが、H5N1を含む多くの種類のインフルエンザのワクチンが既に完成していることも指摘されています。これは、ゼロからワクチンを開発しなければならなかったCOVID-19に比べてはるかに有利です。
その一方で、COVID-19のパンデミックが収束していないにもかかわらず、防疫対策やワクチンの重要性といった教訓の風化が始まっているのも事実であり、サルマントン=ガルシア氏は「人々は手で口を押さえてせきをして、その手で握手をする習慣に戻っており、マスクを着用する人もいなくなりました。私たちは昔の悪習に戻りつつあり、いずれそのことを後悔する羽目になるかもしれません」と話しました。