一見カジュアルな赤い靴下ですが、黒い革靴に合わせるとトラッドな雰囲気に(筆者撮影)

ロスジェネ世代で職歴ほぼなし。29歳で交通事故にあい、晩婚した夫はスキルス性胃がん(ステージ4)で闘病中。でも、私の人生はこんなにも楽しい。なぜなら、小さく暮らすコツを知っているから。

先が見えない時代でも、毎日を機嫌よく、好きなものにだけ囲まれたコンパクトライフを送る筆者の徒然日記。大好評の連載第9回です。

少ない荷物で生活の潤いを保つ「取捨選択の極意」

築50年30平米1R。キャラメル箱みたいな1ルームマンションで、夫婦、老猫、そして預かり犬で暮らしています。居住スペースを拡張すべく、作り付けの押入れとパントリーを解体したため、我が家の収納スペースはベッド下とメタルラック3つだけ。

30平米で暮らしているというと「そんなに狭いと、食べて寝るスペースしかないでしょ?」と言われますが、そんなことはありません。12畳程度の小さな空間ですが、2人と猫と犬が問題なく生活できる程度の空間は確保できています。


日当たりの良い12畳1R。収納がないため、荷物は少数精鋭です(筆者撮影)

犬におもちゃを投げて「もってこい」もできるし、夫婦それぞれにテレワークもできるし、床に2枚ヨガマットを敷いて並んでストレッチもできる。狭いなりに壁面を利用してインテリアも楽しんでいます。

今回のエッセイでは、少ない荷物で暮らしつつ、好きなモノやコトは我慢せず生活の潤いを保つための、取捨選択の極意(とか言ってみる)を紹介したいと思います。

【画像】センス抜群…! 「好きな物”だけ”に囲まれた」筆者の部屋を画像で見る(13枚)

我が家では「靴下」「パンツ」「タオル」「お箸」などを統一することで、所有数を減らしました。これは、収納スペースの少ない家での荷物の総量を減らすことにも貢献しますし、興味ないものの選択肢をなくすことで、選ぶストレスもなくなり一石二鳥。


バスタオルを断捨離して、フェイスタオルを使用。10枚あればポイポイ使えて便利(筆者撮影)

根っからのなまけ者で、家事は全然好きじゃないし、ていねいに暮らすよりはスマホを眺めてゴロゴロしていたい。そんな私が編み出したぐうたらかつ、ラクチンな管理方法でもあります。

靴下は全部同じにすれば神経衰弱の手間も一掃

洗濯していて面倒くさいのが靴下です。取り入れる際に、神経衰弱の要領でペアを探してあげないといけません。引き出しのなかには、相棒が行方不明になって片っぽだけになってずっと放置されているやつがある人もいるのではないでしょうか。


洗濯をサボりすぎると、ピンチハンガーにズラリと赤い靴下が並ぶことも(筆者撮影)

履いたときに「あ、親指の部分薄くなっているから履き終わったら捨てよう」「履き口のゴムがビローンとなって落ちてくるから履き終わったら捨てよう」「毛玉がひどいから履き終わったら捨てよう」。

そんなふうに思っていたのに、脱ぐときにはすっかり忘れて、他の洋服と一緒に洗濯機に放り込み、洗って干して片付けて……すっかり忘れて、また履いたときに思うのです。「あ、親指の部分薄くなっているから履き終わったら捨てよう」と。

実はこのモヤモヤ、靴下を統一すると解決します。

我が家では靴下を、赤いハイソックスで統一しています。夫婦とも足のサイズが近いのでメンズのMサイズの赤ハイソックスを8足購入して、ずーっとこれを履いています。同じ靴下で統一することで、洗濯を取り入れるときのペア探しの手間も省略され、「片方だけなくなった」なんてこともなくなります。


大きめサイズの空き缶に放り込んで収納(筆者撮影)

これをローテーションで履くと、同じ時期にへたってくるので、まとめて買って、まとめて捨てるを繰り返すと、「これはいつ買ったっけ? そろそろ買い替えどきかなぁ」みたいな1枚ずつの管理が必要なくなるので、ラクなのです。

同じ靴下に統一すれば、ペア探しの手間がなくなるうえに、「黒だかネイビーだかわからない」「ペアだと思ったら違った」というような靴下トラブルもなくなります。


収納タンスは持たず、メタルラックに同じ缶を並べて引き出しとして利用(筆者撮影)

今の靴下は、たまたまGUで190円セールで売っていたやつを履いていますが、普段はユニクロの「50色ソックス 4点で990円」を2セット購入しています。定番を決めておくと買い替えで迷う必要もないのでさらにラクチン。

プラス予備として、フォーマル用の黒い靴下を2足所有しているので、雨降りやトラブルで「靴下8足全部使い切ってしまった……」というピンチには、黒い靴下で乗り切っています。


缶に靴下、パンツ、タイツ、肌着などをジャンルごとに投げ込み収納。ラベリングすれば迷いません(筆者撮影)

もしあなたがおしゃれ好きで、ファッションと靴下のコーディネートを日々楽しんでいたり、おしゃれ靴下ブランド「アンティパスト」の大ファンとかなら、もちろんたくさん靴下を所有すればいいし、靴下のコレクションもしかるべきだと思うのです。

ただし、靴下にそれほどこだわりがないゆえに、店頭のワゴンセールやネットショッピングの送料無料ラインを調整するために、惰性で増やしてしまっているのなら、一度靴下の種類と所有数を見直すのをおすすめします。

たかが靴下、されど靴下。10足20足となんとなく所有している靴下の、総量と種類を減らすことで、部屋のスペースが増えたり、管理の手間を減らすことができるかもしれません。

赤は差し色として優秀。安くてもおしゃれに見える


私は黒いスニーカー、夫は黄色いスニーカーに、赤い靴下を合わせます(筆者撮影)

「なんでわざわざ赤い靴下?」と突っ込まれそうなので、伝えておきます。もともとは黒い靴下を履いていたんですが、人気ファッションインスタグラマーのbonponご夫妻が、赤い靴下をペアでコーディネートしていて「おしゃれでいいな」と思って、真似したのです。

赤の靴下は洋服にも差し色としてちょうどよく、適当に洗い上がった服を着ているだけでも、なんとなくおしゃれさんに見せてくれるように思います。のちに知ったのですが、内田裕也さんも生前はいつも赤い靴下を履いていたそうです。


体格も服装のテイストも違いますが、いつでも靴下はおそろいです(筆者撮影)

マンションの上の階に20代後半の洒落た青年が引っ越ししてきたのですが、なんと彼も、いつ会っても赤い靴下を履いていて、エレベーターに私たち夫婦と彼が乗り合わせると、全員が赤い靴下でちょっとおもしろい。靴下がきっかけで話すようになったのですが、先日「日本橋 芋屋金次郎」のかりんとうをもらいました。

手間を減らすために選んだ赤い靴下は、いつの間にか私たちのトレードマークのようになっています。赤い靴下がご縁にもつながりましたしネ。

靴下だけでなくお箸も同様です。箸立てに、それぞれのマイお箸、どこかでもらった箸セット、客用箸など、無造作に突っ込まれていませんか? 全部同じデザインの箸を買っておけば、箸立てに易占いの筮竹(ぜいちく)のようにジャラジャラと並んだお箸と対峙し、神経を研ぎ澄ましてお箸を選別する必要がなくなります。


お箸をまとめて入れ替え。特にこだわりはないので、シンプルな5膳で110円の安物を買いました(筆者撮影)

我が家では100均でなるべくシンプルな5膳セットのお箸を購入し、夫婦用、取り箸、客用、調理用、すべてこのお箸でまかなっています。箸先がチビてきたり、箸頭の柄が薄汚れてきたものはどんどん手放して「お箸の本数減ってきたな〜」と思ったらまとめて買い替え。

「このお箸は亡き父が、孫が生まれた祝いに庭木を切り倒し、削り出してくれた思い出の品」だとすれば、大切にすればいいと思うのですが、そうでないなら専用のお箸を用意しなくても不便はないんじゃないかしら?

「こっちのお箸は新しくてまだ綺麗」「こっちのお箸はそろそろ買い替え」と、脳のリソースをお箸に奪われずに済むのは、なかなか快適ですよ。

パンツもタオルも全部1種類をまとめ買い

我が家では靴下やお箸と同じように、パンツもタオルも1種類をまとめ買いしています。さすがにパンツは靴下と違い、夫婦で別々です。


タオルは10枚をまとめ買いして、汚れたものから順次処分。洗濯がまわらないぐらいまで在庫数が減ったので、最近総入れ替えしました(筆者撮影)

パンツはベージュとかピンクだとだんだん色がくすんできて、長く使っているとテンション下がるし、薄い色だと汚れも目立つので、だんぜん黒派。私は楽天市場で送料無料3枚1000円のものを2セット購入し、夫はユニクロでセールで190円だったボクサーブリーフを10枚買いました。

夫のほうがパンツの枚数が多いのは、がんで闘病中のためです。昨年入退院を繰り返した際に、パンツの枚数が少なすぎて洗濯が間に合わなくなり、入院中に自分で自分のパンツを洗い病室に干すというせっぱつまった経験をしたため、在庫を増やすことにしました。

タオルは白いフェイスタオルを10枚。お風呂上がりにフェイスタオルで体と髪を拭く、キッチンの流し台の手拭きにも、ちょっとした掃除にも使います。パンツと違い、タオルは白にしておくと、塩素系漂白剤で除菌・漂白ができるため、衛生的に保てます。

靴下を1種類だけにして、まとめ買いで管理するのがあまりにもラクなため、あれもこれもと試してみたところ、なかには向かないものもありました。


パジャマは同じものを3着買い、夫婦で着回そうとしたら、誰が着ているのか、どれを洗ったのかわからなくなり大失敗(筆者撮影)

ハンカチとパジャマも統一したことがあるのですが、「このハンカチ新しいやつかな? 昨日使った気がするもののはっきり思い出せないぞ」とか「このパジャマ何日着てるっけ?」と、いつ交換したかがわからなくなり、かえって管理がややこしくなったのでした。

洋服も一時期は制服化しようと思い、同じデザインのワンピースばかりを色違いで揃えていた時期もあったのですが、1シーズンで飽きました。毎日同じ下着は、どれを着るか考える手間が省けて快適ですが、洋服を選べないのは楽しくなかった。

私の場合は、どんなに気に入ったデザインでも、同じ服ばかり着るのは無理でしたが、夫は洋服の制服化に成功。黒のVネックTシャツにデニム、長袖の花柄シャツを羽織るというファッションで5年以上暮らしています。

工夫を楽しみながら狭い部屋で暮らす

統一することでかえって不便になるものもありますし、生活の潤いが減ってしまうこともありますが、靴下やお箸、パンツ、タオルなどは統一することで、面倒ごとが減りました。

いろいろなデザイン・色・柄を所有すると、使う前に必ず「どれにしようかな」と、選ぶ必要が出てきます。あらかじめ取捨選択をして統一してみたことで「今まで選ぶ手間が地味にストレスになっていたんだな」と気がつきました。


フリーカップとお皿を組み合わせたアフタヌーンティースタンドで、夫婦でお茶会。少ないもので工夫するのが楽しい(筆者撮影)

小さな家で暮らすと、多くの荷物を持つことができません。限られたスペースのなかで、好きなモノをあきらめずに生活するためには、興味のないアイテムを削ぎ落とすことは必須となってきます。

【画像】センス抜群…! 「好きな物”だけ”に囲まれた」筆者の部屋を画像で見る(13枚)

「靴下はもう少し減らせるかも」「パンツはもう少し増やさないと不便かも」と試行錯誤を繰り返し、工夫を楽しみながら、何がどれだけ必要かということを洗い出していくと、意外と必要なものって少ないようです。


「チェーン店最強のモーニングを探して」の大木奈ハル子さんの短期集中連載です。連載一覧はこちら

(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)