3月16日に開業を控えた、北陸新幹線の敦賀延伸。一足先に試乗列車に乗りました。福井の地に降り立った「超特急」はどのなものだったのでしょうか。

一足先に「敦賀〜金沢」乗ってみた

 北陸新幹線の金沢〜敦賀の延伸開業が、2024年3月16日に迫っています。それに先駆けて2月1日、報道向けの試乗会が行われました。
 
 これまで駅の見学や試運転は行われてきたものの、いよいよ「実際に営業速度で走っている新幹線に乗車し、未知の車窓を見る」のは、参加した多くの人が初めての体験となります。敦賀駅から往復で乗車しました。


敦賀駅を出発する北陸新幹線の試乗列車(乗りものニュース編集部撮影)。

 試乗列車は敦賀駅を10時13分に発車。短いトンネルを抜け、長さ19.8kmにもおよぶ長い長い「新北陸トンネル」に入っていきます。日本の鉄道トンネルの長さでは6番手となります。

 もともと敦賀と武生方面には、在来線でも13.9kmの「北陸トンネル」があり、携帯電話の電波も届かず、車窓も暗闇が永遠に続くかのような印象的な区間です。新幹線のほうは長さがその1.5倍もあるため、入る前からウンザリする気分になるかとも思いました。

 しかし想像とは違い、「長いトンネルに入ったな」と感じる間もなく、新幹線はトンネルを抜けてしまいました。敦賀からの旅行客であれば、スーツケースや手荷物を整理し終えて、やっと一息ついて座席でリラックスし始めるかどうかのタイミングです。敦賀駅を出て12分で越前たけふ駅に到着。在来線とは独立した完全な新駅で、速達便はこの駅を通過してしまいます。

 余韻に浸っているうちに、あれよあれよと新幹線は福井駅に着いてしまいました。ここまでまだ20分です。中央線快速でいえば、新宿を出て、まだ三鷹を出たあたりの乗車時間です。

 車内表示器や車掌アナウンス、車窓など、初めての体験が色々あるなか、処理しきれないうちに次々と停車駅がやってきます。

何もかも速い新幹線

 特急「サンダーバード」「しらさぎ」で見慣れた越前特有の風景。滋賀県湖北地方に似て、雪が積もり、山間の谷筋ごとに人の生活が広がる、どこか箱庭のような里山が続くと思えば、福井平野が顔を出してきます。そこを新幹線は260km/hで疾風のごとく通過していきます。駅発車時のものすごい加速、あっという間に流れていく車窓風、それと見慣れた風景とのギャップで、しばし脳が追い付きません。

 西九州新幹線に乗った時も同じでした。生まれて初めて新幹線に乗った時の体感のような、「何かものすごい速さで移動している」という感覚を再び味わうことになります。特急列車とは明らかに時間感覚が異質で、「新幹線は移動革命」というのを、まざまざと見せつけられています。

 福井駅を出るとすぐ、もはや土木建築物として名を馳せている「新九頭竜橋」を通過していきます。「新幹線と道路の橋が同じ橋脚で架かっている」唯一の例で、道路部分はすでに開通済みです。車窓のイメージでは新幹線と自動車がランデブー走行するという想像が膨らみますが、試乗客は口々に「……なんか一瞬だったね」「ちょっと道路っぽいのが下からせり上がってきたような気がした、けど一瞬だった」と、やや肩透かしの感想。並走している感覚は、自動車から見たほうが実感が大きいかもしれません。


福井駅は日本の新幹線駅で「最もコンパクト」とされる1面2線構造(乗りものニュース編集部撮影)。

 芦原温泉の手前で、車窓の在来線では大阪方面からの特急「サンダーバード」が並走しはじめました。新幹線の開業後は、特急は敦賀までになってしまいます。試乗会でしか見られない幻の風景でしたが、北陸の速達列車の「世代交代」を象徴するかのようで、特急に乗った思い出が走馬灯のように蘇り、思わず胸が熱くなりました。

新幹線の速さが旅行感覚を変える?

 そうこうしているうちに、試乗列車は石川県に入り、広大な金沢平野のなか、加賀温泉駅と小松駅を通過。あっという間に金沢駅へ到着してしまいました。乗車時間は57分。なお富山に行きたい人は、そのまま乗り続けていれば25分で到着します。やっと座席でくつろいで「旅行しているなあ」と感じる頃合いです。

 敦賀への帰路も、メモや画像の整理、SNS投稿をしているうちに、あっという間に終わってしまいました。今まで在来線特急で感じた「ガタンゴトン」が無く、「ビュンビュン」という滑らかな音と振動なので、乗車感覚以外のことへ意識が向きやすくなるのも理由でしょう。

 福井の距離感を知っている人であれば、「本当に福井に着いたのかピンと来ない」という感覚になるかもしれません。福井に始めて来る人であれば、「こんなに近いならもっと早く訪れればよかった」と錯覚するかもしれません。

 これは長崎に新幹線が到達したときも同じでした。今までの在来線特急での移動は、最初こそ「思えば遠くへ来たもんだ」という旅情に浸ったものの、2回目以降は「えっちらおっちら走る」という存在に思えたものです。旅行者から「新幹線に乗るともう在来線に乗れない」という声も聞こえるのは、新幹線によって「目的地での滞在時間がぐんと増えた」という嬉しさが何よりも強いことを示しています。


金沢駅の駅名標。開業に向けて「小松駅」の存在が隠されている(乗りものニュース編集部撮影)。

 首都圏からすれば、新幹線一本で福井へ到達できること自体が大きなことでもあります。それも含め、今後の福井へ人の流入がどうなっていくのか、期待させてくれるような試乗列車の「疾走っぷり」でした。

【感動】今しか見られない奇跡の光景!北陸新幹線の車窓で並走する特急「サンダーバード」