温水プールの廃止でどう生まれ変わる? 掛川市「たまり~な」の再整備計画を紹介
東海の名城と呼ばれる掛川城を持ち、歴史と文化そして豊かな緑に彩られた街・掛川市。市内中心部から東へ車で15分ほど行ったところに総合公園「22世紀の丘公園」があります。「100年かけて美しい樹林をつくり、つくりながら楽しみたい」との意味が込められたこの公園は、小さな子どもから大人まで楽しめる場所として市民から親しまれています。今回は、その公園内にある屋内施設「たまりーな」の再整備計画について紹介します。
開館15年で温水プールと温浴施設の老朽化が進む
22世紀公園は、大型遊具のある公園として中東遠志田榛原地域(中東遠は磐田市~御前崎市、志田榛原地域は島田市、焼津市、藤枝市、牧之原市、吉田町、川根本町から成る)でも屈指の規模を誇ります。大きな複合遊具や多目的に使える芝生広場などがあり、自然いっぱいの空間でのびのび過ごせる公園です。
その敷地に隣接する建物が「たまりーな」です。こちらは“健康づくり”や“学習のため”に、市民が幅広く使える施設として2007年に開館しました。現在も老人クラブ活動や市民活動、健康増進などを目的に多様な世代に利用されています。館内は和室も含めた大小5つの研修室、多目的ホール、工作室、休憩スペースなどがあり、目的に応じて利用できます。
水泳コースとウォーキングコース(各2レーン)を備えた温水プールや温浴施設もありましたが、こちらは開館15年が経過し、老朽化が進んできたとして2022年11月に営業が停止されました。この温水プールと温浴施設をどのように活用するかが、再整備を計画するにあったての大きなポイントでした。
ワークショップを実施して廃止を考える
温水プール、温浴施設は年間約2万人の利用がある一方、設備更新や維持管理費用に多額の費用がかかるとして改修に慎重な検討が必要としていた掛川市。そこで、廃止について考えようと「たまり~なに「あったらい~な♪」を考えるワークショップ」が開催されました。
ワークショップは2021年7月から11月にかけて3回に渡って実施。そこでは「たまリ~な」の今の状況から今後の在り方までのさまざまな意見交換がなされました。第1回目のワークショップでは、「たまり~な」のいいところ、改善したいところをテーマに意見交換があり、いいところでは「大型遊具が大人気」「温水プールの料金が安い」「プール後そのまま入浴できる」などの声が上がりました。一方、改善したいところでは「温水プールは子どもが利用しにくい」「プールの認知度が低い」などの意見がありました。
また、同時期に留置式で行われたアンケート(実施期間:2021年6月30日~10月4日/回答者数303)でも温水プール、温浴施設の廃止について市民の意向を調査。
このアンケートでは温水プール、温浴施設に「廃止でも問題ない」が41.1%という結果に。そして「代わりに入ってほしい施設」の質問には「幼児のための屋内遊具」が55.6%と半数以上を占めました。
リニューアルに向けて3つのプランを策定
これらの内容を受けて掛川市は、2023年1月に「たまり~な」の再整備の方向性を示した「たまり~な再整備基本計画」を策定。温水プールと温浴施設の廃止が決定し、「たまり~な」改修に向けて進み始めました。改修コンセプトは「22世紀の丘公園の「中と外」「人と人」をゆるやかにつなぐ場の創造」。子育て世代が楽しめる屋内での休憩・遊び場を備え、世代間交流ができる施設を目指しています。
策定計画では、3つの施設構成プランが示されています。一つ目は、温水プールと温浴施設を屋内遊び場へとリニューアルするプランです。こちらは屋内遊び場の面積を最大限に確保することをポイントとし、建物の有効活用を図る内容となっています。屋内遊び場には大人も利用できるエクササイズスペースなどの設置も検討されています。
たまり~なのリニューアルプラン2
2つ目のプランは、温水プールの空間を屋内遊び場に、温浴施設の空間はレッスンルームにリニューアルする構成です。レッスンルームでは各種エクササイズ講座など、さまざまな世代に向けた教室の運営が検討されています。
そして3つ目は、温水プールを屋内遊び場へ改修し、温浴施設をフリー活用スペースとして飲食施設やエクササイズスペースなどを充実させるプラン。公園で利用できるキャンピング用品のレンタルサービスの実施なども想定されています。
2025年冬のリニューアルオープンを目指して準備が進む
「たまり~な」の再整備については、現在事業者公募の真っ只中。募集要項の配布が2023年10月2日より始まっています。この後、参加表明者による提案書の提出、プレゼンテーション及びヒアリングを経て2024年2月には審査結果が発表される予定です。
今後のスケジュールについては、2024年度から2025年度にかけて工事を進め、2025年冬頃に施設のリニューアルオープンが予定されています。多世代が利用するものの世代間交流する機会が少ないとの課題もあった同施設。屋内遊び場が整備されれば、子育て世代にとっては魅力たっぷりの場所になることは間違いありません。さらなる市民のつながりやにぎわいをつくりだすためにどう生まれ変わるのか、とても楽しみです。