1人のアーティストとして、また役者として、声優として活動してきた七海ひろきが、2020年リリースの『KINGDOM』以来3年ぶりとなるフルアルバム『DAYLIGHT』を完成させた。ここまでミニアルバムに配信シングル、念願のアニメ主題歌として書き下ろされた1stシングル「It’s My Soul」とコンスタントに音楽制作を重ねてきた七海が、このアルバムで辿り着いた「役者アーティスト」という自身の表現方法。しかも発売に先駆けてライブツアーを慣行し、バンドと共に楽曲を育ててきた七海が「役者アーティスト」という答えに出会えた2ndアルバム『DAYLIGHT』について語る!

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

夢を叶えた2023年



――2023年も残り3ヵ月を切りますが、ご自身の音楽活動を振り返ると2023年はどんな時間でしたか?

七海ひろき 新曲をたくさん聴いてもらえる時間だったなと思います。初めての配信リリースもありましたし、初めてシングル(「It’s My Soul」)も作りましたし、2ndアルバムも出すということで充実していました。2023年の3月くらいまでは舞台をやっていたので、3月下旬から4月にかけて音楽活動へとシフトしていったこともあり、2023年は音楽活動に邁進した期間だったなと感じています。色んな楽曲を出させていただけたので、アーティスト・七海ひろきの様々な表情を見てもらうことができたのではないかなと思っています。

――そんな2023年のアーティスト・七海ひろきが放ったシングル「It’s My Soul」は初めてのアニメタイアップ曲でした。この経験によって音楽制作に対して影響や刺激はありましたか?

七海 自分にとってもアニメタイアップで、主題歌を歌わせてもらうことは夢の1つでもありましたし、アーティストのみならず声優活動としても色々な挑戦をさせてもらっています。アニメが大好きですから、そういった夢が叶ったことは単純に嬉しかったのですが、だからこそアニメはもちろん楽曲も届けるためには自分が表に立つ立場にはいるものの、色んな人の力が集結して出来ているものなのだな、と感じることが出来た機会でもあったんです。どういう曲にするのか、誰に作ってもらうのか、作詞はどうするか……と色んなことを決めて、色んな人の力に支えられて作品は出来ていくのですが、自分はその先頭で表現をしているのだなと改めて実感したことは、大きな刺激になりました。私の見えないところで多くの人が1つのものに対して力を注いでいる。見えている部分だけではなく、見えない部分でも多くの人が力を出しているんだなと考えると、楽曲1つを自分の精一杯の力でより広く届けなければいけないな、とこれまで以上に責任を感じましたし、プレッシャーもありました。

――実際に「It’s My Soul」への反響はいかがでしたか?

七海 すごく良かったです。手紙やSNSのメッセージでも嬉しい言葉をもらいました。ほかにも同級生や知人、友人から「アニメの主題歌をやるんだね!」と祝福の連絡もあり、私の歌が届く範囲が今までよりも広がったし、色んな人に聴いてもらえるんだな、と実感しました。

「銀河鉄道の夜」からインスピレーションを受けて生まれたリード曲

「銀河鉄道の夜」からインスピレーションを受けて生まれたリード曲



――そんな七海さんが2ndアルバム『DAYLIGHT』を完成させました。アルバムを作ろうと思った時点で既存の曲もありました。まずどんなイメージから制作が始まったのでしょうか。

七海 フルアルバムを作るのは1stアルバム『KINGDOM』以来3年ぶりになるんです。この数年、本当に色んなことがありましたし、ライブツアー“DAYLIGHT”のこともあったので、とにかく気持ちが前向きになるアルバムを作ってみんながノリノリで聴けたり、心が躍るようなアルバムになったらいいなと考えていました。そんななか、コロナも落ち着いてきたので、「これは夜明けだ!」と思って。暗いところにいたけれど、どんなときにも陽は昇る、という作品にしたくてタイトルを『DAYLIGHT』と決めました。これまでの楽曲制作で色々なチャレンジもしてきて、そのなかでアーティストとしての表現方法としてロック調が合っているなと思っていたので、そういった曲をたくさん収録することで力強さやみんなの心を奮い立たせることができるのではないかと思いました。

――そんな新録曲について伺いたいと思います。まずはリード曲「Giovanni」です。これは最初から「リード曲を作ろう」と制作していかれたのでしょうか。

七海 楽曲を制作していく段階で、どれをリード曲にするか悩んでいたんです。作詞もして、歌入れをして、結果「これがリード曲だな」と思って。歌詞を書く前の、楽曲を聴いたときからなんとなくこのアルバムの中心にくるかなとは感じてはいたのですが、リード曲は『DAYLIGHT』の顔でもあるので悩みました。

――作詞はどういったテーマを持って臨んだのでしょうか。

七海 歌詞を書くときは、自分の想いをそのまま載せるときと、物語や映画、何かの出来事や時には事件からインスピレーションを得て言葉を紡いで作詞をしていく方法とがあって、「Giovanni」は曲をもらってメロディを聴きながら、自分のことを歌うのではなく起承転結を持った物語になっている曲がいいのではと思ったんです。以前作った「花に嵐」は「ロミオとジュリエット」をモチーフに作ったので、何かいい話はないだろうかと考えながら楽曲を聴いていたら、宮沢賢治さんの「銀河鉄道の夜」が浮かんできたんです。辿り着くまでには「幸福の王子」や「ヘンゼルとグレーテル」などもモチーフにどうだろうかと思い浮かべたのですが、ぴたっとはまったのが「銀河鉄道の夜」。夜空を列車が走っていくバックに流れていたらかっこいいかもしれない、という絵が浮かんだので、そこから「銀河鉄道の夜」の原作やマンガ、アニメの映画などを見て、湧き上がる言葉を書き留めていって曲に合わせて組み合わせていきました。

――どういった視点で描こうと思われたのでしょうか。

七海 私としてはジョバンニの視点で描いたのですが、現在進行形で子供のジョバンニが銀河鉄道に乗っているといういわゆる原作と同じ視点ではなく、ジョバンニがあの頃のことを思い出しながらカンパネルラに想いを馳せているような切ない気持ちを綴りたいなと思いました。

――歌い方も作詞の手法によって変化するのでしょうか。

七海 この数年、アーティスト活動をしながら見えてきたのが「歌い方」なんです。前回の「COLORS」というライブは七海ひろきの色々な色を皆さんにお見せしたくて、色々な曲を選んでみたところ、今の自分にはどんな曲があっているかなどがわかってきました。歌い方も、テクニックだけでなく「役者」としての面を生かしつつ、芝居心を混ぜて歌う表現方法に挑戦をしました。役者アーティスト、という表現が自分にはしっくりくる気がしていて。例えば「Giovanni」だったら、自分のことをジョバンニだと思って歌う。1つ1つの曲に対して、この曲はこんな見た目でこんな背景を持った人が歌っている、というようにキャラ設定として定めていくと自分が歌いやすく、とても楽しく気持ちよく歌えることを感じたんです。今後もそういうふうに1曲1曲を、まるで1つの曲で1つの話が作れるように歌っていけたらいいなぁ、と思いました。これまでは歌うときに、メロディを必死に追いかけなきゃという想いに囚われていた気がしていたのですが、そうではなく自分に没頭して、役として歌うことですごく幅も広がるのではないかなと思いましたし、その表現方法が自分には向いているのではないかと今回の制作を通して感じました。

――そんな「Giovanni」はMVも制作されています。こちらはいかがでしたか?

七海 制作の段階で、最初はモノクロの映像から始まってだんだんと色づいて、感情が多く乗ってくるからこそ色が出てくるみたいなMVにしたいと思っていたので、曲の作詞過程やイメージを細かく伝えて作っていきました。2番の“幸いを願いながら降り立ったその駅で”の辺りからカラフルになっていくのですが、そこは自分としてもとても気に入っています。セットも本格的で感動しました。駅から見える景色や電車のボックスシートなど、ノルタルジックな雰囲気を作り込んであって、本当に私のイメージ通りのMVが完成したので、皆さんにも楽しんでいただきたいです。

――とても物語的ですよね。

七海 駅の雑踏のなか、カンパネルラへと想いを馳せるジョバンニ。切なさが滲んで、すごくいいなぁ、と思いました。ただ、撮影当日がすごく暑くて大変でした(笑)。

ライブでみんなと夜明けを感じるための楽曲たち



――続いて新曲「Starting Over」はいかがでしたか?

七海 ライブでもやってきた曲です。最初に聴いたときは歌詞もなく、楽曲だけのデモでしたが、その状態でもメロディや音がかっこ良くて「ぜひ歌いたい」と思った曲でした。歌詞をもらって、レコーディングに向けて歌い込んでいったのですが、難しい曲でした。自分に歌いきれるかなと不安はあったのですが、案の定難しくて、収録が難航しました。音に対しての歌詞のはめどころも難しくて、良く響かせるためにはどうしたらいいかと試行錯誤しながら臨んだことが思い出深いです。今までの曲の中でも特に時間を要した曲でした。歌詞の言葉の意外性を楽しみながら歌っているのですが、この曲は落ちサビでの曲の盛り上がりからの叫びの部分では頑張りました。

――では「Micro Universe」はどうでしょうか。

七海 ライブでも歌ってきましたが、お客さんの反応も良かった曲です。最初の印象はタイトルの「Micro Universe」がかっこいいなと思ったことを憶えています。私の気持ちともリンクしていたので、そこを歌いたくて収録しました。

――アルバムのテーマでもある、前向きの姿勢が詰まっていますよね。

七海 曲調も「Starting Over」よりも明るい曲調で、悩んでいたとしても自分の世界を広げていこうというメッセージも素敵だなと思いましたし、このメッセージを歌で届けていきたいなと思いました。特に気に入っているのは落ちサビです。どの曲でもそうなのですが、落ちサビって好きなんです。この曲の歌詞も自分の気持ちとはまるなと思っていたのですが、“覚悟を決めたら さあ解き放つ〜”の流れが好きです。つい言い訳をしてしまう自分がいるけれど、そのかっこ悪さではない、言い訳をせずに真っ向勝負をする姿勢や、ダメなときにはすぐに認められるような、言い訳をしない自分で勝負していきたいというメッセージを感じながら、自分の心とリンクする繋がりを意識して歌っています。

――次は七海さんの作詞による「RUN」です。

七海 曲を聴いていて、自分のこれまでのストーリーを綴ろうと思った曲です。ライブでみんなと「Yeah-!」とノれる曲。作詞をしている間に、今までの人生の中でも辛い部分や悔しかったり悲しかったりした経験も入れていきたいと思って作詞をしていたら、こんなに明るい曲なのに歌詞が暗すぎる、というものが出来てしまって、「これではダメだ」と再考しました。曲調的に暗くせず、かといって明るくしすぎない塩梅に悩みながら作詞を進めました。この曲の落ちサビまではこれまでの七海ひろきの人生を感じてもらいたいと思っています。

――最後にアルバムのタイトルを冠にした「DAYLIGHT」についてお聞かせください。

七海 今までアルバムを作っていくなかで、アルバムと同じタイトルの曲を「作ろう」と思って制作してきたわけではないんです。特に意識せずに作詞をしていて、最後に「『DAYLIGHT』だな」と浮かんで銘打った感じです。青春の歌にしたいと思って。青春時代を追いかけるけど追いつかないはがゆさや目標に向かって進みたいけど上手くいかないもどかしさも入れていきたいと考えました。これはある映画の主人公を素にして作詞をして。

――ある映画の登場人物?

七海 「THE FIRST SLAM DUNK」です。映画を観て感銘を受けて、4回くらい劇場に足を運んだんです。あんなに心迫る感覚を覚えた映画は久しぶりでした。展開をわかっているのに息を飲むし、全場面で自分の青春時代も重ねましたし、色んな場面で感銘を受けた結果、改めて宮城リョータのかっこ良さを想い、考えていったのが「DAYLIGHT」の歌詞です。映画にも海の場面がありますが、今回のジャケットも海で撮影をしましたし、曲には夜明けを見つめている姿がイメージできたこともあって、タイトルを「DAYLIGHT」にした、という経緯がありました。

――ライブで歌われていかがでしたか?

七海 ライブの最後に歌うので、みんなで夜明けを見るような感覚です。みんなに言葉を届けたいと思ったので、自筆で書いた歌詞がスクリーンに映るようにしました。暗いところからだんだん明るくなっていく感じが、落ち込んでいた日々に光が見えてきた感覚に近いと思いますし、私自身のストレートな想いを、お客さんに届けれたのではないかと思います。このアルバムで改めて歌詞を見て、歌を聴いて、夜明けを感じてもらいたいです。

――このアルバムからどんな七海さんが感じられるでしょうか。

七海 ライブも含めて、私が今後目指していくアーティスト像が、役者だからこそのアーティストです。今回ライブとアルバムを作りながら、それを極めていきたいと感じて、徐々に自分の中に浸透してきたような感覚でいます。

――そんな『DAYLIGHT』を中心に置いていたツアーはいかがでしたか?

七海 茨城2公演、大阪2公演、東京1公演の3都市5公演だったので、日数としては凝縮されていましたが、この期間に楽曲は育ちました。茨城でやったときは今回のアルバム『DAYLIGHT』の新曲を初めて歌いましたし、配信シングルの「FATE」も皆さんの前で歌うのは初めてでしたから、みんながどんな反応をしてくれるのかなとドキドキ緊張もしていて、大阪でちょっと歌うことにも慣れてきて、表現に対しても考えられるようになっていって、最後の公演では成長した楽曲が皆さんにどんなふうに届くのかな、と思っていました。全公演通して、最高に楽しかったです。

――では最後にこのアルバムをファンの皆さんにどのように楽しんでもらいたいですか?

七海 ライブで聴いた曲とアルバムに入っている曲とでは少しアレンジも変えていますし、ライブとは違う感覚で聴いてもらえると思います。ライブで聴いた曲がどんなふうになっているかも楽しんでもらえる1枚になっていますので、ぜひその違いも堪能していただきたいです。アルバムジャケットも夜明けを迎えたところなのですが、私は毎年お正月にご来光を見ているのですが、本当は海のご来光を見たい気持ちがあるんです。でもなかなか正月の海でのご来光を見ることができていなくて、『DAYLIGHT』ではぜひジャケットを海のご来光で撮りたいという想いがあって撮影をしました。前日まで曇っていたのでご来光が危ぶまれていたのですが、ご来光の瞬間に晴れたんです。「私、運を持っているな」と思えた瞬間でした。そんな部分も含めて『DAYLIGHT』には夜明けを迎える強い気持ちが詰まっていると思っていますので、共に明るい未来を見ましょう!

●リリース情報

2nd Album

『DAYLIGHT』

10月18日発売

■mora

通常/配信リンクはこちら

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】



品番:KICS-94123

価格:¥6,050(税込)

【通常盤(CD)】



品番:KICS-4123

定価:¥3,190(税込)

【7seas+ファンクラブ限定盤】

・「DAYLIGHT」《初回限定盤》

・FCグッズ:ブロマイドフォルダ&ブロマイド4枚セット

価格:¥8,250(税込)

※CDは市販商品と同一内容となります。

※グッズの絵柄については後日発表となります。

※7seas+ファンクラブ限定盤の詳細・ご注文は、7seas+へログイン後「GOODS」よりご確認ください。

<CD>

1. Giovanni

作詞:七海ひろき 作曲:3rd Productions 編曲:REO

2. It’s My Soul

作詞・作曲・編曲:本田正樹 (Dream Monster)

3. Starting Over

作詞:空谷泉身 作曲:kani 編曲:高橋浩一郎

4. 林檎の花

作詞:早川博隆, Shogo (Rebrast) 作曲:早川博隆, Shogo, Tsubasa (Rebrast) 編曲:Tsubasa (Rebrast)

5. Micro Universe

作詞:青輝波美賀 作曲:平間光 編曲:shirosagi

6. HEART BEAT (七海ひろき Solo ver.)

作詞:MORISHIN, 3rd Productions 作曲:3rd Productions 編曲:REO

7. FATE

作詞・作曲・編曲:藤田卓也(ZAZA inc)

8. アルデンテ

作詞:七海ひろき 作曲・編曲:ENPITU (Rebrast)

9. RUN

作詞:七海ひろき 作曲・編曲:Wiggy (Vanir)

10. DAYLIGHT

作詞:七海ひろき 作曲・編曲:高橋浩一郎

<Blu-ray>

・「Giovanni」 Music Video

・「Giovanni」 Behind The Scenes

・「It’s My Soul」 Music Video

・「林檎の花」 Special Promotion Movie

・「FATE」 Special Promotion Movie

・七海ひろき お化け屋敷スタイリッシュ突破?!

関連リンク



七海ひろき 公式サイト

https://hiroki773.com/

七海ひろき 公式X(旧Twitter)

https://twitter.com/hirokinanami773

七海ひろき 公式YouTube

https://www.youtube.com/c/nanamihiroki