香港はアジアの国際金融センターとしての輝きを失いつつある(写真はイメージ)

アジアを代表する国際金融センターの1つである香港の“地盤沈下”が進んでいる。会計監査・コンサルティング大手のデロイトがまとめた2023年1月から9月までのIPO(新規株式公開)資金調達額ランキングによれば、香港証券取引所は世界の主要市場のなかで第8位と、2022年通年の第4位から順位を4つ落とした。

デロイトによれば、上述の期間に香港証券取引所に新規上場した企業数は44社にとどまり、前年同期比14%減少。資金調達の総額は247億香港ドル(約4671億円)と、同61%も落ち込んだ。

その要因についてデロイトは、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの打ち止めがいまだ見通せないことや、新型コロナウイルスの流行収束後も中国経済の回復が予想より弱いことなどを挙げ、2023年内の大型IPOは延期される可能性が高いとの見方を示した。

アブダビやインドネシアに抜かれる

なお、1月から9月までのIPO資金調達額で世界首位に立ったのは中国の上海証券取引所。2〜5位には、同じく中国の深圳証券取引所、アメリカのナスダック、同ニューヨーク証券取引所、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ証券取引所が続いた。

デロイトの推計によれば、上述の期間に上海市場には89銘柄、深圳市場には115銘柄が上場し、資金調達額は前者が1990億香港ドル(約3兆7630億円)、後者が1484億香港ドル(約2兆8062億円)に上った。ナスダックでの資金調達額は844億香港ドル(約1兆5960億円)、ニューヨークは640億香港ドル(1兆2102億円)、アブダビは294億香港ドル(約5559億円)だった。

注目すべきなのは、ランキング6位に273億香港ドル(約5162億円)の資金調達額を記録したインド国立証券取引所、7位に同256億香港ドル(約4841億円)を調達したインドネシア証券取引所が入り、香港市場を抜き去ったことだ。

香港市場の2023年を通じたIPO資金調達額について、デロイトは1800億香港ドル(約3兆4037億円)としていた従来の予想を、11年ぶりの低水準となる500億香港ドル(約9455億円)へと大幅に下方修正した。


香港市場は上場企業の7〜8割を中国本土企業が占める。写真は2020年12月のアリババの上場式典(香港証券取引所のウェブサイトより)

ただし、デロイト中国法人で華南地区の担当パートナーを務める欧振興氏は、「世界各地の証券市場でもIPOが減少しており、2023年末の段階では、香港のIPO資金調達額は世界のトップ5に返り咲くだろう」との予想を示した。

「中国本土市場との差別化必要」

香港市場は国際化の面でも後退が目立つ。1月から9月までの間に、外国企業によるIPOは1銘柄もなかった。一方、ナスダックでは同じ期間に上場した83銘柄のうち半数超の42銘柄がアメリカ国外の企業であり、資金調達額は463億香港ドル(約8755億円)に上った。


本記事は「財新」の提供記事です

「香港証券取引所では上場企業の7〜8割を中国本土の企業が占めている。香港市場を中国本土の(上海および深圳の)市場と差別化するためにも、外国企業の上場誘致を積極的に進めることが重要だ」。香港市場の活性化を図るための方策について、欧氏はそう述べた。

(財新 駐香港記者:王小清)
※原文の配信は9月22日

(財新 Biz&Tech)