那須川選手(写真:山口フィニート裕朗/アフロ)

写真拡大

プロボクシングの東洋太平洋スーパーバンタム級8位・那須川天心(帝拳、25)が2023年9月18日、メキシコ・バンタム級王者ルイス・グスマン(27)と対戦し3−0の判定勝利を飾った。初回と7回にそれぞれダウンを奪う快勝だったが、4月のボクシングデビュー戦に続いてKOを逃した。「キックの神童」はなぜKOできなかったのか。J-CASTニュースはTMKジムの金平桂一郎会長(57)に分析してもらった。

「正直KO出来なくて悔しいよ」

試合は那須川の一方的な展開だった。メキシコ王者をスピードで圧倒し初回に左でダウンを奪った。2回以降もスピードと手数で攻め込み、パンチを上下に散らしながら揺さぶった。終盤7回にもダウンを奪い、3人のジャッジがフルマークをつける完勝でプロ2戦目を飾った。

キックボクシングでは42戦全勝で28KOを記録するなど攻撃力の高さを誇った。ところがボクシングに転向後、判定勝利が続いている。KOを逃した那須川は試合後にX(旧ツイッター)を更新し、「ひとつ言っときます 俺はボクシングが本気で好きだし ひとつも舐めていない 正直KO出来なくて悔しいよ 新しい課題に向かってまたやりつづけるだけ」などのコメントを投稿した。

金平会長は「那須川選手はタイプ的にKOパンチャーではない」とし、「KOはボクシングの華なのでどうしても見たい。周囲も期待をする。ただノックアウトはコツがいる。井上(尚弥)選手のように元々のKOパンチャーは、コツは関係なく倒してしまう。那須川選手は試合の中で相手を仕留めにいくことをしなければならないが、まだコツをつかみきっていない」と分析した。

金平会長はKOのコツは実戦でつかむものとし、男子の世界王座防衛記録(13度防衛)を保持している元WBA世界ライトフライ級王者・具志堅用高氏(68)を例に挙げた。具志堅氏はアマチュアで高校王者となりプロに転向。デビュー戦と2戦目はいずれも判定勝利だった。

プロ3戦目以降からKOが増え始め、世界王座を獲得し3度目の防衛戦から8度目の防衛戦まで6試合連続でKO防衛を果たした。13度の王座防衛のうち8試合がKOだった。

「そもそも井上選手とはタイプが違う」

金平会長は「具志堅さんもデビュー当時はプロにアジャストしておらず2戦連続で判定勝利でした。相手を仕留めるコツはボクシングをやっていくうえで習得するもので、スパーリングではなく実戦で習得するもの。実戦をどれだけ積んでノックアウトのコツを掴むか。那須川選手のボクシングはうまい。スピードがあって当て勘が良い。動きもスマート。あとはどこまで那須川選手のボクシングスタイルでノックアウトを追及していくかですね」と解説した。

さらに現時点で那須川とWBC・WBO世界スーパーバンタム級王者・井上尚弥(大橋、30)を比較することに意味はないと指摘。金平会長は「那須川選手は今、自身のスタイルを模索している最中」とし、次のような見解を示した。

「周りからノックアウトを期待され、インターネットなどでは一部のファンからパンチがないとか言われている。パンチがないわけではなく腰をためて打ち込んでいくタイプではないだけ。相手をなぎ倒すタイプではない。そもそも井上選手とはタイプが違う。当たり前のことだけれどもファンも関係者もそれを忘れがちになる。どうしても井上選手の姿を追いかけようとするがそれは違う。本人があまりにKOを意識するとボクシングがおかしくなる。流れの中でKOできるように追及すべき。井上選手と比較してもしょうがない」

スポーツ紙などの報道によると、那須川の3戦目は年明けに予定され1月か2月を計画しているという。