自動車販売大手ケーユーHD向けの取引で損保ジャパンと東京海上日動、三井住友海上の3社によるカルテルの疑いが浮上(記者撮影)

大手損害保険会社による「保険料カルテル問題」が、「ビッグモーター不正」などで炎上している中古車販売業界にも飛び火してきた。

今回、新たにカルテルの疑義が浮上しているのは、ケーユーホールディングス(HD)向けの共同保険取引だ。ケーユーHDは、輸入車や中古車の販売大手で東証スタンダードに上場している。

共同保険をめぐっては、6月19日に「大手損保4社が企業向け保険でカルテルの疑い」で既報した通り、私鉄大手・東急グループとの取引をめぐって保険料の水準を決める際にカルテル行為に及んだことが発覚。東京海上日動火災保険などの大手4社がカルテル行為について公式に認めている。

その後、大手私鉄・京成電鉄グループや成田国際空港などとの取引においても、大手損保によるカルテル行為の疑義が次々に表面化している。

幹事会社は損害保険ジャパン

複数の関係者によると、ケーユーHDとの共同保険取引では次のようなことが行われていたようだ。

ケーユーHD役員向けの損害賠償責任保険など、複数の保険で契約更改があったのは昨夏のこと。その際に、幹事会社の損害保険ジャパンと東京海上日動、三井住友海上火災保険の3社の営業担当者は、連絡を取り合いながらケーユー側に提示する保険料の調整をしていた疑いがあるという。

ケーユーHDは、カルテルによって割高な保険料で契約を結ぶことになったとみられる。そのため大手損保3社は、独占禁止法違反で公正取引委員会から課徴金処分などを受ける可能性がある。

折しも中古車販売業界は、ビッグモーターやネクステージ、グッドスピードなど大手事業者の間で、車両修理費(保険金)の水増し請求や契約の捏造といった不正行為が相次いで発覚し、社会問題化している。

中でもビッグモーターと損保ジャパンは、保険金の不正請求をめぐり「癒着」していたことが判明しており、両社とも社長が引責辞任を迫られる事態に発展した。


ケーユーHDの有価証券報告書に記載されている「大株主の状況」をみると、株式の保有比率が8.57%(2023年3月末時点)の損保ジャパンが第2位株主。保険会社の中でいちばんの大株主だ(記者撮影)

不正行為の実態調査に影響も

損保ジャパンは、親会社のSOMPOホールディングスと連携しながら、弁護士による外部の調査委員会を設置。ビッグモーターだけでなく、そのほかの自動車販売業者における不正な取引の有無や、その真因について調べを進めている。

疑義が浮上した保険料カルテル問題で、ケーユーHDはいわば被害者だ。だが、ビッグモーターに端を発した不正行為の問題では、今後調査の対象に入る見通しのケーユーHDは、損保側からともすると問いただされる側の立場になる。

カルテル行為によってケーユーHDの不興を買うという混乱状態の中で、損保ジャパンは厳正かつ公平な姿勢で、調査に臨むことが果たしてできるか。損保ジャパンと同様に実態調査を進めている、東京海上、三井住友海上も今後難易度の高い対応を迫られることになりそうだ。

(中村 正毅 : 東洋経済 記者)